「地球のギフト」
小さな頃、海の水はどうしてしょっぱいの?と不思議に思ったことがある人はきっと少数ではないはず。
地球は絶妙な「偶然」によっていのちを生み育んでいる。
どうして木の周りから先に雪が溶けるのか、どうして秋が来ると葉っぱは赤くなるのか、そんな風に地球が見せてくれる景色に疑問を持つ子どもだった。
畑にお邪魔することが多く、川上で農薬や肥料を使うと魚が減るという話を聞いたことがあった。海水が蒸発してやがて雨になり陸地に戻ってくるのなら、農薬はなるべくなら使わないほうがいいのでは。
素人の私は単純にそう考えて、オーガニックを拡めたいと始めたのが飲食店だ。
海を豊かにするために森を育てている牡蠣の漁師に出会い、海と森が循環していることを教えてもらった。どちらが欠けても、いのちを豊かに育ててくれる条件が揃わない。
海水がしょっぱい理由にはいくつか説があるけれど、地球に陸ができてから何億年もかけてしょっぱくなったという説がある。溶岩や土のミネラルなどが徐々に溶け出して川や風がそれを運び、絶妙なバランスがそうしたんだ思うと、誰の意図がそうしたのかと不思議で仕方がない。
食べることが好きな私は、気候変動で産地が徐々に北上していることに対して、美味しい日本の環境を次の世代に残していけるのかと不安に思うことがある。海から揚がる魚の種類も変化している話も耳にする。海の生き物たちを間接的に支えているのが陸なのだと考えると100年先も美味しい未来をつくるために食からできることは、たくさんありそうだ。
2021年の夏号に寄稿 食べ物と情報が届く「北海道食べる通信」