検査の結果、「異常ありませんでした」と言われたとき、
一流の患者は、「安心」します。
二流の患者は、「油断」します。
安心することはとてもいいことです。
検査結果が悪くなくて、よかったですね。
ただ、安心と油断は違います。
完全に安心しきってしまうのは禁物なのです。
『地の糧』を書いたアンドレ・ジッドは、
「私は、私の心の内で待ち望んでいたものをことごとくこの世で表現した上で、満足してー、あるいは絶望しきって死にたい」と言いました。
なるほど、と思います。
ただ、長いこと医師をして患者さんを診ていると、満足しきった状態がいいかというと疑問です。
「満足しきって死ぬ」それはすばらしい。
でもそれは最期の最期です。
自分は資産を築き、子どもや孫も立派に成人して、「もう満足した、もう望みはない」と思ったら、たしかに安心できます。
ただ、
二流の患者は、「もうおれはこれでいい」とまったく努力を放棄して、認知症になってしまいます。あるいは、足腰が弱って寝たきりになります。変にこころがゆるんだら、あっという間です。
一流の患者は、「ここで慢心したら、終わりだ。油断して、足腰が弱くならないようにしよう」とスクワットをはじめるのです。
健康の場合、満足しきったら、危ないのです。
襲い来る加齢の波から、絶えず、自己努力であらがっていかないと、波にのまれてしまいます。
決断は早いことが重要です。
パーティ会場で、「油断しない!」と決断したら、パーティ会場のその場で腕立て伏せを始められるのが一流の人なのです。
人は不安があるからこそ、運動したり、本を読んだり、習い事をしたりと努力するのです。
不安を味方につけて、健康になろう。
医療法人社団信証会 江田クリニック 院長 江田証