「メシ、ありがと。ごちそうさま」
「こちらこそ、泊めてくれてありがとう……と、ごめんね?」
「お前が謝る必要は無いだろ」
「うん……お仕事、頑張ってね」
「お前も追い込み頑張れよ?」
「くふふ。うん!しょーちゃんチャージ満タンだから、大丈夫!」
今日はずっと家で作業するって、明後日までに超追い込みだよ!って、笑う雅紀と駅で別れて会社に向かう。
「翔やん、大丈夫?」
「うわ、どしたの?」
会社に着くなり、二宮と松本が俺の顔を見て驚いた声を上げた。
「……はよ……」
結局、ほとんど眠れずに朝を迎えた。
ひどい顔をしてるって分かってる……
朝、雅紀が俺の顔を見てものすごく申し訳なさそうな顔をしたけど、お前のこと踏んづけるんじゃないかと思ってよく寝れなかったって嘘をついた。
「昨日は相葉くんとデートじゃなかったの?」
「……うるせぇ」
二宮を睨みつけて、自販機でブラックコーヒーを買って席に着いた。
パソコンの電源ボタンを押してから、ディスプレイをぼーっと眺める。
雅紀にあそこまで言わせて、それでも動かない俺って、どうなんだ。
でもまだ……雅紀にはなにか……ある。
それを確認しないうちは、動かない方がいい。
「あー、もう!」
突然叫んだ俺に、隣の席の増田がびくって飛び跳ねた。
「あ、わりぃ」
「い、いえ……大丈夫っすか?」
斜め前の席で二宮が不思議そうな顔をして俺を見てる。
『二文字』の意味はわかった。
……分かったけどな?
そうそう簡単にはいかねぇんだよ。
大事にしたいんだ。
守らなきゃいけないんだ。
雅紀が何を抱えているのかは分からないけど、それごとまるっと、抱えてやらなきゃダメなんだ。
「明後日、だな」
「え?明後日って、何かありましたっけ?」
呟いた俺に、隣で増田が焦った声をあげた。
「あ、ごめん。独り言……」
俺、なんか大事な仕事忘れてんのかと思いましたよ!っていう増田に苦笑して、コーヒーを一気に流し込んだ。