「翔雅くん、まりん、おはよ」
「おはよ」
「おはよう、ひろちゃん」
学校の最寄り駅の改札で、いつも私たちを待ってるひろちゃん。
美人で、頭も良くて、優しくて……私の大事な親友で、しょっちゅうカノジョが変わって、チャラチャラしてたお兄ちゃんが、3ヶ月以上付き合った初めてのカノジョさん。
3ヶ月どころかもう、2年近くになるのかな……たぶん、この先もずっとお兄ちゃんの隣にはひろちゃんがいるんだろうなって、そんなふうに思う人。
「まりん、雑誌見たよ!今回もまりんが一番可愛かった!」
ひろちゃんが、ぎゅーってハグをしてくれながら言う。
「ふふ、ありがと」
「4月からまりん、専属モデルって書いてあったね!」
有名になる前にサインもらっておかなくちゃーって言うひろちゃんを、お兄ちゃんがぺちって叩いた。
「ひろ、あんまり調子に乗せんなよ」
「なんで?ホントのことじゃん」
いつも2人の真ん中に、私。
なんか今日は……特に居心地が悪い。
「あー!私、今日、日直だったかも!」
「え?」
「ごめん!先に行くね!」
嘘だってみえみえの嘘をついて、2人から走って逃げ出して、少し離れたところで、振り返って手を振る。
私に手を振り返したあと、見つめ合って笑うふたり。
ほんとにお似合いで、ふたりとも大好きなんだけど……
ちくちく、胸が痛いのはどうしようもなくて……
「あれ?まりん、今日はひとりなの?」
「あ、かなちゃん、おはよー。今日、私、日直じゃなかったっけ?」
「え?まりんは、明日じゃなかったっけ?」
「えー!さっき、日直だったかもって、思い出してちょーダッシュしてきたのにー!」
「まりん、意外と天然だよね~」
あははははーって、笑うかなちゃんにつられて、私もあははははって笑って。
「相葉、おはよ」
「あ、おはよ」
「ちょっと、原田!私もいるんだけど!」
「あー、小寺かなえさんもおはようございます」
なんかムカつくんだけど!って、原田くんにパンチして笑ってるかなちゃんと、なんだかんだそれが嬉しそうな原田くんと一緒に、後ろを見ないようにして教室に向かった。