新しい医薬品が保険収載されるには、基本的に「既存の薬よりよく効く」という必要性があります。

違う薬ですから作用の機序が違いますし、副作用というか副反応の出方も違うことでしょう。 それを加味しても効果が勝るということから新しいお薬が認可されていくことになります。
効く というのは、悪性腫瘍の場合、小さくなるとか消滅するとかが効果として測れますし、血圧ならどこまで下がるとか、いろんな指標があります。その指標を測りつつ、お薬の量を調整しつつ試してみる段階があります。
 

1相 2相と進んできた治験が 3相に入りますと、どれだけ採ると危険な量かとか、摂取の量や間隔はかなり決まってきます。
 

倍摂取すれば倍効くのか、半分にしても同じ効果なのか? 半分にすれば有害事象は半分になるのか? じゃ、10分の一でも効くかもしれないとかが考えに入ってきます。治験の進行に伴って有害事象によって減薬する必要があったりするかもしれませんが
基本的に標準的な薬の量で試していくことになります。
 

対象の人たちを半分に分けて、片方は従来のお薬。残りの半分は新しいお薬を投与して、腫瘍の大きさがどれだけ小さくなるかとか、血液の数値が改善するかとか、有害事象が多いのか少ないのとかの判断につなげます。
 

従来のお薬が保険収載されている最新のお薬であれば、その段階でのエース級の治療が選択されています。それを上回る効果の大きさか有害事象の少なさなどの有利性が出てこないといけません。
 

どちらが投与されているかを知らせると、心理的に「よく効く気がする」という傾向が出ると困りますので、本人には「新しい薬の投与群か、従来の薬の投与群か」を知らせないということになります。これが一つ目のブラインド。
 

そして、投与する医師や関係者が知っていて、なんとなく伝えてしまうと心理的効果が出てしまうかもわかりませんので、投与する関係者にも「誰がどちらの群」かを知らせないというのが ダブルブラインドです。
 

本人に知らせないのが一つ。投与する関係者に知らせないのがふたつめです。
 

ただ、治験をやる前から「新しい薬の効果が抜群で、もはや従来の薬の投与に意味がない」というような場合があります。この場合、従来の薬を投与された群は、比較的に不利な結果を享受することになってしまいます。
 

そういう場合は、群を50:50に分けずに、新しい薬側を80にして、より多くの利益を全体に与えることも考えられます。
 

それなら100:0にすればいいのですが、それでは、従来のお薬との比較対象が出来ませんので治験の意味がありません。いくらかは従来の薬の効果を測ることが必要になってきます。
人道的にどうかという側面もあります。画期的に効果が見込める薬であるなら治験を飛ばして承認すればいいのですが、そう簡単にはいかないのが現実です。
 

従来のお薬と称して、生理食塩水を投与する場面もあるかと思います。そんな治験が長く続けば、その方にとっては無治療で放置されているのと同じですから治験に入ることのリスクは大きいかもしれません。
 

希望して、新しいお薬の投与群に入れればいいですが、そうでない群に割り振られることもあり、それが、本人と医療関係者にも明かされない。そういう状況で試されて効果があるお薬が今の世に使われているというのとです。新しいお薬がその方にとって全然効かない場合もあるでしょうし、そうなれば、従来の治療の方がよかったことになってしまいます。
 

従来の薬は、どこかの昔に誰かが治験に協力していただいたおかげで世の中に出回っているのでしょうから、現代の治験に協力していただける人は将来の同じ病気の方々に貢献しているといえるかもしれません。
 

治験の結果、効果がそれほど見込めないので保険収載されないということもあるでしょう。莫大に高くつくとか、有害事象が多くなるというマイナス面が出ることもあるでしょう。
 

百発百中の治験はなかなかないと思います。
千のうち三つとか、そういう感覚なのかなと思います。
 

(勝手な解釈があればご指摘ください。医療的に間違っていることがあるかもしれません、専門家ではありませんので、間違いはぜひご指摘ください)