【おすすめ41】Arcade / John Abercrombie | Jazz@Saku

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会社員でジャズベーシストのJazz Man BSakuの日常を暴く!(笑)

前職を退職にする時にもらった「心を落ち着かせるお香」を焚きながら

この数日の疲れをしばしの静寂の中でどうしようかな・・・なんて考えな

がらレコード棚を物色し。この傑作が目に入った・・・。


Arcade / John Abercrombie Quartet

Jazz@Saku

John Abercrombie(g,electric mandolin)

Richie Beirach(p)

George Mraz(b)

Peter Donald(ds)


sideA

1.Arcade

2.Nightlake

3.Paramour


sideB

1.Neptune

2.Alchemy


Rec. Dec. 1978 @ Talent Studio, Oslo

<ECM 1133>


B面1曲目のNeptuneのGeorge Mrazのアルコを何度聴いたことか。


このアルバムは最初ドラムの西岡先輩からカセットテープでもらい

聴いたのがはじめてだった。ただただ、なんだか格好よいと思った。

それまで、ハーブエリス&ピーターソン&レイブラウンのシェイクスピ

アホールのトリオばっかり聴いていた少年には、なんだかたまらない

美しい音だった。


演奏がすばらしいと思っていたが、日本版に同封されている悠雅彦

さんのライナーノーツにも本当に感銘を受けた。


この時をきっかけに、このECMレーベルのプロデューサーである、

Manfred Eicher(マンフレートアイヒャー)により興味関心を持つよう

になった。


プロデューサがこの名曲を作ったということに驚いたのだ。

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以下、Trio Records PAP9148 のライナーノーツの引用です。


<前略>

それにしても、このレコーディング・セッション(スイングジャーナル3月

号に録音風景が掲載されている)を見て、プロデューサーとミュージシ

ャンとの緊密な祖間関係をつくづく痛感させられた。


1テイクを終えるごとに全員がコントロール・ブースに集まってプレイ

バックを聴き、細部にわたって意見を出し合う。この議論と意見交換は

きわめて徹底したもので、全員が納得するまで論を尽くしあうのである。


これらを調整し、ひとつにまとめていくのがアイヒャーであったが、大

抵の場合はアイヒャーの説得力の前に、ミュージシャンの方で彼らの

主張を撤回せねばならなかった。


彼らはアイヒャーの無理押しに屈服したというわけではない。アイヒャ

ーはまず問題点を抜き出し、それを筋道を立てて根気良く説明し、論

理的に解明していく。そして最もふさわしいと思われる解決へと導いて

いくのである。そこには短絡もなければ、辻褄が合わないという点もな

い。常に明快なロジックが貫かれている。

アイヒャーは自己の主張が正しいと思えば、どんなに時間をかけても、

不得手なはずの英語ながら相手が解かってくれるまで根気良く説得す

る。やがてアイヒャーの意見が正しいということが解かってくるので、ミュ

ージシャンの方でも文句を言えないのである。アイヒャーに対していか

に絶大な信頼をおいているかを示している、ということになるだろう。


例えば、このアルバムにおける「ネプチューン」は、そういう意味で僕を

最も驚かせた最良の例であった。

<中略>

結果的には、この曲は(作曲者の)バイラークが当初に意図したもの

とは多分、月とすっぽんぐらいに違ってしまったといっていいに違いな

い。というのは、初日に音録りしたとき、ベースのピチカートも、シンバル

による定型リズムもあったし、テーマがあってソロがリレーされるという

極く普通のフォームにて終始していたからである。あのままだったら、

たしかに、何の変哲もない演奏と作品で終わってしまったのではないだ

ろうか。

ところが、アイヒャーはリズムをとって、全編がフリーに流れるような演奏

にすることを提案したのであった。バイラークもアバークロンビーも最初、

アイヒャーのこの提案に激しく抵抗した。しかし、アイヒャーの粘り強い

説得の前に、とにかく1度リズムをとって演奏してみようということになった。

結果はアイヒャーの勝ちだった。星屑が遊び戯れるような夢幻的なムード

の流れが全体を支配し、この作品のよさと演奏の緊密なインタープレイと

を際立たせることになったからである。

<中略>

プレイバックを聴きながら、僕の前でアイヒャーは踊って見せた。足をすり

両手を無限の空間にトリップさせるように、ちょうど雁が羽ばたいていく恰好

をとって。

<後略>

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Keith JarrettとPat Metheny達を産出したこの人の偉大さへの気づきの

始まりだった。


レコーディングエンジニアのJan Eric Kongshaugとのチーム最高です!


ECM万歳!