すっかり「つかこうへい劇団」の魅力に取り付かれてしまったのか。
今月も友人の森部氏の誘いで男二人でまた「北区つかこうへい劇団」の
公演を観にいった。
先日の飛龍伝で主役を演じていた逸見輝羊さんが演出ということと、
この「往きて還らず 」は原作が団鬼六先生。
「これは純文学だ。逸見、お前が演出をやり舞台化しろ」とつか先生より
指示を受けていました。
という、つかこうへいが弟子の逸見さんに送った作品のようだ。
またしても、人間の極限状態での「潔さ」を考えさせられる作品だった。
太平洋に散った特攻隊の死に際の性・情・思いとそれを必死に受け止める
ことを決意した八重子の美しさ・潔さに焦点が当てられている。
タブーのように語られる慰安婦の問題は、「その瞬間の自分にできうる限りの
ベストは何かを考え抜き腹を括った人の壮絶な愛の形」であると肯定的にも捉
えうるのだと、初めて認識した。
男と女は最後までお互いに愛されていたい。
わずか数十年前のわが国日本の戦時下では、今の平和の価値観では異常
と捉えられる世界も、異常時の中の暗黙の了解とされていた事なのだろう。
小説中の主人公である、黒岩主計兵長の話はここではクローズアップされて
いない。
とても、後味の苦い、すばらしい作品だった。
会場には団鬼六先生がいらっしゃっていました。
先生、ありがとうございました!