★10月20日★




技術競技鑑定全国大会に男子Mの出場が決定。


今日の便で開催地区へ向かうという事で


教室は朝から賑わっていた。




その隅には、浮かない顔の友達F。


彼女もまた、安永先生と交わした約束 を果たせないでいた───






SHRが終わると男子Mは荷物を抱え、教室を出た。


それと入れ替わるかの様に


「K」


聞きなれた声が前方から聞こえた。




「明日の課題研究の事なんだけども─…」


私は、男子Kの横に立っている人を少しづつ見上げた。


黒っぽいスーツの…


斉藤先生Σ(・ω・ノ)ノ!




斉藤先生「木下先生に頼んであるから─…」


先生がスーツを着るのは、大抵大切な用事がある時だけ。


それに明日の課題研究の話を、男子Kに前もって話すという事は…




その瞬間に分かってしまった。


胸がぎゅっと苦しくなる。


先生…


全国大会引率するんだ───




話が終わると、男子Kの背中を軽く叩いた先生は


後ろドアから出ると、笑顔で振り返った。


斉藤先生「行ってきます」


先生、本当に行っちゃうんだね…




男子「∑ちょ、今の聞いた!?」


男子「「行ってきます」って( ̄□ ̄;)」


先生が放った言葉に、クラス一同若干引いていた←






3時間目の休み時間。


次の体育に備え、ジャージ姿で体育館に向かい


階段を下りて、曲がるとすぐそこに


斉藤先生率いる全国大会出場者と他の先生方が歩いていた。




私は先生の背中に向かって


行かないでっ……


と、強く心の中で叫んだが先生には届かない。




本当は直接言いたかったけど


その言葉は、先生を困らせるだけ


これは、先生と男子Mとの約束 でもあったし


私も陰ながら応援していた。




でも、先生は先生だけは私の側にいて欲しかった。


先生に会える。


それが唯一


私が毎日学校に通いたいと思わせる理由だから───










ザザザザザザ…


激しく雨が降り始めた。




先生に言いたかった言葉を胸の奥に仕舞い込んだ私は


まるで私の心情を映し出しているかの様な


黒い雲から流れる雨を、体育館の窓から見上げていた───






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