なぞの転校生 | 監督ブログ  wecker

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「時空警察ヴェッカー」シリーズの原作・監督 畑澤和也の個人ブログです。
現在中国広東省で活動中

生存確認のため、何もなくてもブログ更新しなさい!といろんな人に言われたので(という訳でもないのですが)周囲も落ち着いてきたのでまた再開したいと思います。


けっこう前に高野ひろゆきさんから「なぞの転校生に出演します!」という一斉メール?が来てて、気になって調べてみたら岩井俊二監督が脚本・プロデュース?


もうとっくにオンエアも終わっているのですが、最近ようやく全話イッキ観しました。


「なぞの転校生」は僕が生まれた頃「少年ドラマシリーズ」の1シリーズとしてテレビドラマ化(当然これは観てない)、1998年に円谷映像により映画化されていて、その頃「仮面天使ロゼッタ」をやりながら横目で観つつ「俺ならこうするのに」的な不遜なご意見を出したりしていたと思います。若さゆえの過ち。


今回の岩井俊二版(というべきか)…

その、「俺ならこうするのに」がたくさん実現されていてびっくり!


なぞの転校生山沢典夫をアンドロイドにしたり、「アイデンティカ」なる時空同位体設定があったり、多次元ループもの(これは円谷版もそうだった)になっていたり…


「スワロウテイル」以外(「スワロウテイル」も違う?)SFテイストの作品のイメージがなく、「少女を美しく撮る監督」という独断的偏見で岩井監督の事を見ていましたが…

こんなにSFマインド溢れる作品を作られるとは!

「モノリス」にあんなに具体的なアプローチをしたテレビドラマなんて日本では…世界でも珍しいんじゃ?


前半、とんちんかんな行動をする転校生を中心としたゆるめの学園生活がまったり描かれていたんですが、中盤以降、王女アスカ(岩井版オリジナル)登場から物語は急加速し、「ノエルサンドレ」ならぬプロメテウスによる破滅の未来、避けられぬ運命、余命のない妹と時空同位体(!)の少女。涙を流せないアンドロイド…と僕が好きな(笑)要素がこれでもか!と登場。


最後は劇中劇を撮影しているシーンにアドリブとして本作のテーマを語らせるという反則の演出。

「美しい空と花も失われる時が来よう…その時まで大切にするんだ。この美しい世界を」

杉崎花ちゃんの演技の中の演技に本気が見える演技に?感動。

しかもずっとこの世界がこの世界(僕らがいる世界)だと思っていたら実は違うらしい。

この世界にショパンはいない(ショパンの音楽がない)!!



自主制作映像ぽいように見えて実は計算し尽された映像、選び抜かれた美しい言葉で構成された緻密な(破綻もある)脚本…すべてが好みでした。


初代「なぞの転校生」主人公岩田広一役高野ひろゆきさんも重要な(重要すぎる)役で登場。単なるカメオ出演じゃなかった。(なぜか最後に登場した時、僕は爆笑スレスレでしたが)


物語全体に漂う「青春感」とでも言えば良いのか。あえて言うなら「ジュヴナイル感」。


僕もいちばん大切にしたいと思ってきた空気感がとても気持ちよかったです。


こんなドラマを作れる(そして地上波テレビでオンエアできる)ようになったんですね!(これも「ドラマ24枠」か)

岩井俊二脚本・プロデュースだからこそ出来たんだとも思いますが。


「俺も状況が許せばこんな作品を作れる!」

…なんて思ってても(爆)言いません。

また怒られるから(笑)


「泣いてみたいです」と語るアンドロイド。

その彼に恋してしまうヒロインみどり。

「プログラムどおりの反応しか出来ない」と語る彼に

「私だってそんな事言われたらこうなるようにしか出来てませんよ!」と泣き崩れるみどり。


真っ赤に頬を紅潮させながらぎこちなく演ずる桜井美南さんの演技と共に、このシーンだけで

「俺の完全な負け」(最初から勝手に勝負すんな!)と思いました。


以上台詞などの引用はうろ覚えで違っているかもしれません。


未見の方で、ヴェッカーシリーズ(特に近年の舞台版)をご覧になり、気に入ってくださった方はぜひご覧ください。



少女がひとり居て(少年でもいい)その姿をファインダーで覗けば、それだけでジュヴナイルは撮れる。

そんな事から、もう一度はじめてみたいとも思いました。