『きんとうか』

--------------簡単なあらすじ--------------

 

瀬戸内海にある神聖な島“那珂ノ島”へ

祖母の葬儀のために、帰省した主人公の颯太。

 

十数年前には、

自分より少し年上の宗定、愁

なき虫の愁の弟・恭

そして、成人したばがりの若者・司

の5人で遊んだ記憶があった。

 

しかし、久々に会う彼らはどこかよそよそしく……

 

ひと夏の奇跡が「きんとうか」とともに咲き乱れる――

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私はこの手の記事でネタバレを含む感想って書かなかったんですけど、ちょっと『きんとうか』については語りたくて、すこしネタバレを含んで語ろうかなと思います。

 

大丈夫。初見プレイには影響しません(笑)。

 

発売日に購入し、コンプを今日まで寝かせておきました。

久々に、コンプまで50時間以上プレイするゲームでした。『PigeonBlood』以来かな、こんなに長くてやりごたえのあるゲームをしたのは。

 

結論から申し上げますと、号泣でした! 

都志見文太先生の、久々のBLゲームということで期待たっぷりでしたが、ものすごいボリュームに驚いています。

 

『アイナナ』もあった最中で、これを書いたのか……すごい。

 

私の感性がおかしいのかもしれないんですけど、後半のほうを先に作ったのかな? って思いました。個別ルートや濡れ場、エンディングの方へ向かうにつれて脚本の密度が増して、畳みかけてくる感じで……。

 

繊細なんですよね。気持ちの描き方が。そして、伏線を余すところなく回収していく……。

 

じつは以前、先生ご本人と直接お話しさせていただける機会がありまして……その時先生は、非常に勉強家なのだと知ったんです。そして、ていねいに伏線を回収していく方だと。

 

全部が詰め込まれていました。とっても難しいお話だったのに、ていねいでわかりやすかったです。

 

少々世界に入るための共通ルートが細かく、さらには長いことでテンポが悪いかなと思いましたが、あの一文一文を噛み砕くことが、ラストへ向かうために必要だったんだなと思いました。

 

ああ、BLゲームが減っている昨今に嘆くより、このような名作を反芻して未来へ繋げたいなって、そう思えるような作品でした。

 

スチルのクオリティが所々気になりましたが、コンプ絵は素晴らしかった。きっと線画は沢田先生オリジナルなのかな? スペシャルな感じがした一枚でした。

 

それを受けて……なのか、今回は声優さんの演技がすごかったです。古河さんは、少し寺島拓篤さんに声色が似ているように感じておりましたが……とにかく素晴らしかった。

 

濡れ場があれだけあれば、単調になってしまったりするものですし、わざとらしくもなります。でも、古河さんは普通のモノローグも喘ぎ声もていねいに演じてらっしゃいました。演技の幅が広がっていくのを感じた……というか……凄かったです。

 

あれだけのワード数……収録には相当お時間と労力がかかったのではないでしょうか。スタッフさんも同じく大変だったと思います。

 

やじまさんは、本当に祝詞(でいいのでしょうか……)や枕詞がキレイでした。聴いていると心地よくなる……そんな感じです。

 

須賀さんは、何度もシャウトされたりして、普段のクールなお声のイメージからは想像できないくらい熱かったです! 

 

波夏至さんは、フレッシュな演技だなと思いました。とくに囁きが良かったです。高すぎず、低すぎず、とってもセクシーでした。

 

ワッショイさんは、古河さんとシンクロしなければならないところが多々あって、最初はなかなか馴染めなかったんですけど、最後に「あれは計算だったんですね!」なんて、思ってしまいました。何度も何度も泣かされてしまいました。

 

声の力ってすごいです。お話に緩急がついて、熱が伝わっていくんです。そして、耳の鼓膜と脳内で消化されて、具現化されていくみたいな感覚がしました。

 

なんか終始上から目線みたいな文章になってしまって、申し訳ありません! 良い表現が見つからなくて……

 

ラストに、私が『きんとうか』で気に入ったセリフを少し紹介して締めたいと思います。

本当は、ダメなんでしょうけど……素晴らしすぎたので、どうしても宣伝させてほしかった……。申し訳ございません……ご指摘されれば、削除させて頂きます。

都志見先生の言葉の選び方はいつも感動してしまって……。

 

 

 

人を愛することは狂気のよう。だけど、本当は洗いざらしたように正気なの。とても真面目に、おかしくなるのよ

 

ありがとうと言われることは、ありがとうと言うことは、なんて、嬉しいことだったんでしょう……

 

俺たちは友達で、俺はあんたが好きだ。嫌なことがあるなら言えばいい、わざと嫌がることはしないと約束できるよ。だけど、心まで支配したり、支配されようとはしないでくれ。俺のことも、あんたのことも、ちゃんと大切にして欲しいんだ。

 

心無い人間に軽んじられたからといって、おまえの存在が軽くなることはない

 

 

ゲーム1本の値段は高いとお思いの方が多い現代ですが、この1本は、それだけの価値が十分ありますし、お金に変えられない価値があるゲームでした。ぜひ、プレイしていただきたいなと思います。GRISEDGE製作陣のみなさん、素敵なゲームをありがとうございました!