「胆道閉鎖症は灰白色便」
これまで医学教科書や医師国家試験では、胆道閉鎖症の症状について記述はこの一文がありました。
しかし、私たちの経験からすると「薄い黄色(淡黄色)・クリーム色・レモンイエロー・薄いうぐいす餅の色・プリンの色・メロンパンの色」など、どれを読んでも色がついています。では、医学教科書が間違っているのでしょうか?
昔、便色カードがなかった頃は、生後3ヶ月~4ヶ月ぐらいで病気に気づくお子さんが多かったです。その頃には「灰白色便」という色のうんちを排泄している赤ちゃんも多いのですが、胆道閉鎖症というのは「ある日突然に発症する」病気ではないのです。何らかの原因(現在の医学では、この病気の原因はわかっておりません。)で、生後間もなく少しずつ「胆汁が流れる道=胆道(胆管)」が閉鎖してしまう病気なのです。病気は生後(一部には妊娠中に胎内の時点で見つかるケースもあります。)間もなく「進行」するのです。
上の図に示すように、胆道閉鎖症は胆汁の通り道である胆道が閉鎖する「形態」と「時期」が人それぞれです。
(1)閉鎖の形態が人それぞれ
胆道閉鎖症には、開腹の結果、胆道の閉鎖具合によって色んなパターンに分類されます。肝臓の内部にある胆管(肝内胆管)が閉鎖している赤ちゃんもいれば、胆のうなどが萎縮はしているが、僅かながらも胆管が通っている赤ちゃんもいます。完全に閉鎖していれば胆汁が流れませんが、閉鎖しかかっている(通り道が細いくなっている)状態であれば、僅かながらも胆汁は流れていますので、便には「薄っすら」と色が付きます。そのため、胆道閉鎖症=真っ白な便というのではなく、胆道閉鎖症=淡黄色便・クリーム色・レモンイエロー・グレー・灰白色と、薄っすらと色が付いている赤ちゃんの方が多いのです。
(2)閉鎖の時期が人それぞれ
生まれてすぐ閉鎖する赤ちゃんもいますが、少しずつ病気が進行して、徐々に胆道が閉じていく赤ちゃんもいます。徐々に閉じていく赤ちゃんは、僅かながらも胆汁が流れていることも有り、うんちの色が「徐々に薄くなっていきます。」その為、うんちの色が「ある日突然に」真っ白になるのではなく、少しずつ色が薄くなる赤ちゃんもいます。
また、以上のような閉鎖の「形態」と「時期」が違う他にも、ビリルビンが腸壁から滲み出すことによって、僅かながらも便に色がつくのではないかとも考えられております。ですので、最新の知識では、「胆道閉鎖症は灰白色便のほかにも、淡黄色便など薄っすらと色が付いている」こととなっております。
人の身体はデジタルのように「1」「0」ではありません。身体というものは変化があります。胆道閉鎖症はその変化に保護者の「目」が慣れてしまい、なかなか気づけなかった過去があります。それを参考基準としての便色カードを母子手帳内に収載することによって、親が「便の色の変化=異常」に気づくように促すツールなのです。親が気づき、小児科を受診した時に、医師や助産師の方で「胆道閉鎖症は胆汁が流れないから真っ白」、だから「色が付いているのは大丈夫」という古い知識で見逃されてしまうのは避けたいのです。
胆道閉鎖症は「灰白色便のほかにも、淡黄色便は要注意」
胆道閉鎖症は「色が薄っすらと付く便」もある
胆道閉鎖症は「胆汁が全く流れない」わけではなく、じょじょに閉鎖する進行形の病気である。
「真っ白じゃないから大丈夫」、「色がついてるから大丈夫」というのは、胆道閉鎖症の赤ちゃんを見逃してしまう可能性があります。
胆道閉鎖症について、意識を改めていただけますよう、お願いいたします。