従来の産業社会は、ピラミッド型の指揮系統野本で、報酬と罰により動機づけされて成り立つのが当たり前でした。そして、歴史的に長らく、それは最も生産性の高い方法でした。
ところが、その秩序は崩れ始めています。
それを指摘し異なる視点から大きな問題提起を行ったのが2冊の著書です。
一つは、ダニエル・ピンクの邦訳名「モチベーション3.0」です。
一言で言えば、報酬と罰という外発的な動機づけよりも内発的な動機づけの方が、人間は遥かに能力を発揮できるという傾向が時代と主に強まっているという内容です。
もう一つは、フレデリック・ラルーの邦訳名「ティール組織」です。
これは、上下関係も管理部門も存在せず、働き手の横の連携だけで効率よく成り立つ企業、組織が世界の至る所に出現しているという内容です。
私は、かねてより、次の3つの前提を置いていました。
1・人間の脳、精神は大人になって以降も発達する。
2・人類全体の精神的発達レベルも進化する。
さらに次の仮説がリバティ心理学の前提にあります。
マズローの欲求階層説は、個人に当てはまるだけではなくて、社会全体にも当てはまり、現代社会は承認欲求が大きな動機づけとなる社会であるのに対して、自己実現欲求が大きな動機づけになる社会への移行が起こる。その結果、創造性をはじめ人間的能力の解放が起きる。
これは、アブラハム・マズロー自身がそう考えていたようで、1960年代には、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントという社会運動も起きて、一時期、ヒッピーやニューエイジ運動とも接近していた時期もありました。
しかし、その当時は、意識や脳の詳しい仕組みがわかっておらず、具体的な方法論を生み出せなかったことと、営利主義的な傾向に巻き込まれたり、退廃的な方向に流れるなどして、やがて廃れてしまいました。
しかし、今日においては、心理学や脳科学の知識は膨大に蓄積されており、ただし、それらを統合することができていませんでした。それらを統合した理論と方法論を体系化することが私が目指したことでした。
最近、ネットで英語で論文を検索すると、「モチベーション3.0」の内容を裏付けるような心理学、脳科学の論文が急速に増えていました。
そして、リバティ精神科学・心理学にさらに新しい情報は付加され続けています。
しかし、日本において心理学といえば、いわゆる心を病んだ人、生きづらい人の問題をサポートするためのサービスに応用されるのが中心でしたが、たとえばアメリカでは全く異なる応用が見られます。
それがよくわかる優れた著書が2つあります。
一つは、ロバート・キーガンの邦訳名「なぜ人と組織は変われないのか」です。
この中では、例えばある大企業のCEOが抱える問題とその根本にある心理的問題を解剖し、自己変革の方向性が示されています。そして、企業ぐるみの変革のビジョンも示されます。
もう一つは、カレン・ライビッチらの邦訳名「レジリエンスの教科書」です。
これは、レジリエンス(回復力)を高めることをもとにしたPRPというプログラムの内容を紹介したものです。このプログラムは、米陸軍や企業の研修にも取り入れられているとのことです。
リバティ精神科学・心理学を学んだ人が読むと、「心の免疫システム」と書かれていることがリバティの「潜在的適応戦略」に該当することや、「氷山思考」と書かれていることがリバティの「スキーマ」に該当することが理解できると思いますし、これらに書かれているようなことがリバティ精神科学・心理学によってもできる、しかもより楽にできることが分かるでしょう。
私が目指してきたことは、モチベーション2.0を卒業してモチベーション3.0に移行すること、環境順応型知性を卒業して自己主導型知性に移行すること、そして、その人の最大限の人的能力を発揮できるようにすることでした。
これまでは、いわゆる「心を病んだ人」「生きづらい人」のサポートに主な市場が存在していたので、そういう仕事が中心でしたが、古い潜在的適応戦略を破棄して、最大限の創造性、表現力、影響力などを発揮できるようにサポートするというもっと幅広い市場の開拓に本格的に乗り出したいと思います。
これまでは、時代に対して早すぎた感があり、もっと単純なもの、幼稚なものが大衆ウケをする状況が続いていましたが、潮目が変わりつつあるように思います。人間は成長するものなので、最初の入り口はそうでも、経験を積んでステージアップするからです。
既存の経済構造、社会秩序は間も無く大崩壊に向かいます。また、AIの普及に伴って、産業構造や人々の意識は劇的に変わってゆきます。AIでは代替できないヒューマンパワーを最大限に発揮することでしか生き残れない時代に移行します。
するとサービス名も「心理カウンセリング」や「心理療法」ではそぐわないですし、「コーチング」とも違います。それで、長らく新しいコンセプト、サービスの名称を考えてきたのですが、腹が決まってきました。
英語では、Human Potential Liberation ヒューマン・ポテンシャル・リベレーション、略称HPL、意味は、「人間の潜在的能力を解放する」です。このコンセプトを発信する準備を今進めています。
なお、あなたの潜在的可能性とその阻害要因を分析する「ヒューマンパワー無料診断」を実施しています。どうぞご利用ください。