ふんわり風船ハート みぶき えみ@月の記憶の声を聴く人

   

月の記憶の声を聴きながら綴る

みぶきえみの世界観🌙

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前のお話

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私たちは、天文台を作るっていう

同じ夢を持って、会うたびに語り合った。

 

私は、高校3年生になる前の

春休みを過ごしていた。

 

受験が本格化する中

自ら望んで、その蚊帳の外を選んだ私は

 

学校での出来事が

夢物語のように感じていた。

 

そして、3月が終わろうとしている時

彼に話があると、呼び出された。

 

会う場所はいつも

市電で30分くらいの繁華街の

地下にある喫茶店だった。

 

 

別に悪いことをしているわけじゃない。

 

だけど、塾講師の彼と高校生の私は

自然に人目を避けるようにしていた。

 

私が卒業して

結婚するまでの辛抱だと思うと

背徳感のような感情さえ

とても嬉しかった。

 

だから、この当時の写真は

1枚も残っていない。

 

今のように、スマホで手軽に

写真を撮れる時代じゃない。

 

フィルムのカメラで撮って

現像しないといけない。

 

つまり、誰かの目に触れるということ。

 

遠くの写真屋さんに出すとしても

その不安は消えなかった。

 

それに、無理して撮らなくても

結婚したら、いくらだって撮れるって思ってた。

 

 

いつもの席で待ってた彼は

ちょっと緊張した感じだった。

 

私は確信した。

 

きっとプロポーズだ!

 

もしかしたら・・・って思ってたから

いつもより、おしゃれして来た。

 

時間の流れが、スローモーションみたいに

とても遅く感じる。

 

心臓がドキドキして、のどが渇く。

 

最高に幸せな瞬間の中に

包まれていた。

 

そして、彼が口を開いた。

 

 

 

 

 

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