競合か、顧客か。


激しい競争にもまれる市場で闘う企業の最前線。

この問いに頭を悩ます人も多いことでしょう。


イオンは、2007年から定年延長制度を導入したそうです。

これに手を挙げ、ジャスコ与野店で店長を務める小嶋常良さんの

今朝の日経新聞の取材記事。


9店舗もの店長を経験され、25年営業一筋でやってこられた

還暦過ぎの小嶋さんのコメントにとても共感しました。


「従業員はとかく競合店のことを気にするが、天候や顧客の動きを見て欠品を防いだり、

 衣料品の陳列の仕方を変えれば、他店を気にしなくても自分の店を良くできる


そうです。そのとおりです。

企業の商品なりサービスを利用していただけるのは顧客にほかなりません。

顧客を開拓し、支持されなければ、企業の成長などありえないのです。


さらに、小嶋店長のようなリーダーのもとでは、

従業員はモチベーション高く仕事に取り組めているはずです。


なぜなら、成熟社会となった日本において、

働く人のモチベーションの普遍的な源泉は、お客様の役に立つこと。

つまり、「顧客にありがとう」と言ってもらえることが最大のモチベーションの源です。


「競合企業に勝て」では、働く人の心は動かないないのです。

特にイオンのような業界ナンバー1企業であれば、なおさらです。


業界2位以下の企業であれば、「業界ナンバー1企業に追いつき、追い越せ」が

現場のモチベーションを高めることに大きく寄与します。

わかりやすい目標であり、1位企業に近づくことが業績向上にもつながるからです。


そういう意味では、実は2位以下の企業のトップが、

リーダーシップを発揮することはそう難しくないのかもしれません。


ところが、業界ナンバー1企業では、

リーダーは顧客を見て必死に想像力をはたらかせ、

何を提供すれば、より喜んでいただけるか、明快なメッセージを創らなければなりません。


リーダーに求められるのは、松下幸之助さんの水道哲学のような

顧客を見つめ苦悩し続けたからこそ、湧き出てくる自分の言葉でのメッセージを持つことなのです。


残念ながら、20年少し前にハーバードのマイケル・E・ポーター教授が

競争優位の戦略を発表して以降、最近のリーダーの多くは

競合にいかに勝つかだけを、意識しすぎなのではないでしょうか。


特に、MBA留学帰りで、現場で顧客と対峙し苦労した経験がなく

経営企画部門にいたような人たちの言葉は注意して聞かなければいけません。


自分で顧客を必死に見つめ、

何をすれば喜んでもらえるか苦悩することを軽んじ、

MBAメソッドなど借り物の言葉で、リーダーシップを発揮しようとするからです。


そのようなリーダーのもとでは、

顧客と向き合い、日々真剣勝負している現場のひとたちほど

モチベーションがどんどん下がっていきます。


これを放置しておいては、競合に勝つどころか、業績低迷にもいたってしまうでしょう。

となれば、そのような顧客志向でない人間をリーダーに据えている経営の責任問題です。


もちろん、どんなリーダーでも最初から本当の顧客志向を持っているわけではなく、

部下たちに総スカンをくらって、大切にしなければならないことに気付き一皮むけることも真実です。


しかし、リーダー育成のために一皮むけることを待つか、

現場で顧客のために働く志士たちの芽を摘んでしまうのか、

このトレードオフをしっかり早めに判断するのが、経営トップの仕事だと思うのです。




p.s.

・・実は、私自身、20代の終わりにMBA流をビジネスクールで学び

最先端のアメリカの経営科学に度肝を抜かれ、一瞬開眼したと勘違いしていました。

しかし、実際の現場に戻り、その理論やメソッドを用いて、リーダーシップを発揮しようとしても

誰もついてきてくれなかった、という苦い思い出があるのです。。。




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※前川タカオが代表を務めるFeelWorks

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