どこに向かってるんだろ
もう歩き始めてだいぶ経つし
タクシー乗ったほうが人目を避けられていいと思うけど。
まだ今日のジヨンに慣れなくて繋がれた手を引かれるままに
歩き続けてる。
いつもと違う緊張感はどこからくるの?
手を強く握られて
「っつ」
と思わず声に出すと、振り向いてくれもしないけど。
手はすこし緩めてくれて・・・でもまたすぐにぎゅっとしてくるから
それの繰り返しがわけわかんなくて
「我慢できないよ、そんな風に握ってたら痛いのわかるよね?」
って言っちゃった。
思い切って言った言葉なのに
「もうすぐ着くから」
って淡々と答えるだけでなんのヒントもくれない・・・。

大きな建物・・・。
広いエントランスに大理石の床、回転扉から中に入ると
目の前には大きなクリスマスツリーが飾られている。
青と白のライトがつけられ
周りを赤いポインセチアが円く並べられていて
とても暖かい雰囲気だ。

ジヨンはフロントでキーを受け取ると
ひとり足早にエレベーターに乗り込んで
そのまま『close』のボタンを押してしまいそうな勢いだったので
ミチはそのままつくいていくかどうかを迷うほどだった。
怪訝そうに繭をひそめて、でも口元が笑ってて
サングラスで目は見えないけど怒ってはないみたい。
早く~と手をひらひらさせて呼んでいるので。
思い切ってエレベーターに乗り込んだ。

扉が閉じるとジヨンはサングラスをはじめて外して
少し屈んでミチの顔を覗き込んでくる。
ただでさえ狭い空間に二人っきりだし
それだけで鼓動が激しくなってて、息苦しいのに
まっすぐ見つめられたりしたら、死んじゃうよ。
そう思っただけだったのに。

「死んじゃうよ」
ってつぶやいてたみたい。

「まだ早いって~」
と彼は微笑んで彼女の手を取り部屋に引き入れる。

部屋の灯りがともると
テーブルにはシャンパンといちごが用意されていて
ケーキまでが置いてある。

「少し早いけどメリークリスマス」
「えっ?」
「多分その頃は仕事忙しすぎて、時間取れないから。今日クリスマスパーティすることにした」
と真面目な顔でグラスを取り出すと
器用にシャンパンを開けている。
「電話できないかもしれないし」
「わかってる、カムバあるし忙しいもん」
「そ~、だから今日は・・・」

グラスを手渡される。
キラキラ琥珀色したシャンパンの向こうでジヨンが笑ってて
それだけで幸せだった。
「今日は?」
と続きを催促したら。
「・・・っと。今日は・・・特別だから、一緒に過ごす!」
ってせっかくロマンティックな感じだったのに
なに?急に今年の抱負を語るみたいになってるしw
思わず噴出してしまったら、緊張がすこしほぐれる。
乾杯したシャンパンの力も加わって
やっとジヨンの顔が見られるようになった。