車が止まる。
ソファーから身を起こそうとすると
「待って」
と彼からのリクエスト。
面倒だし、歩けるから彼の制止も聞かずに
勝手に外に飛び出して。
外の風を楽しんで深呼吸してたら
すっごく怖い顔してタプが寄ってきて。

走ろうと思ったの。
だってまた怖い顔してるし
逃げちゃいたいって思ったの
なのに捕まえられて。
怖い顔で何も言わないまま
あたしを抱きかかえたまま移動って・・・。
相当重いのに軽く掲げられて。
ジタバタする気力ももうなくなってたし。

お姫様抱っこの状況が急に楽しくなって。
彼の首に両手を回して抱きついてみた。
「はいはい~お姫様」
と彼は笑って。
部屋の扉を開ける。
暗くてよくわからなかったけど
広いベットに降ろされて
部屋の明かりがつく。

ここ・・・ホテルじゃない。

ベットの周りには脱ぎ散らかしたシャツが落ちてるし
サイドテーブルには飲みかけのミネラルウォーターが放置されてる。

ここ、彼の部屋だ。

「ゆき~こっちみて~」
って言われて顔を見上げたらそのまま軽くくちびるにチュされて
固まるしかなかった。
彼はそのまま部屋を出てってしまったけど。
あたしは、そのままベットメイクもされてない、いちばんいい所に丸くなって
ぼーっとしてた。
シーツからは彼の香りがして。
ふかふかベットだから眠たくなってきてしまう。

眠すぎて記憶が遠ざかっていく
その途中でシーツごと後ろから抱きしめられて目が覚める
シーツは頭まで深々とかぶったまま、
剥がされないように胸元でしっかりと握り締めてる。
彼はシーツを取り除こうとはせずに、
ただゆきを抱きしめているだけだった。

薄い布越しに、体に回されてる腕の力強さと、
背中に押し付けられている彼の上半身が
気になって息苦しい
息苦しいのはシーツかぶったままだからだ!
そう思いついたゆきはシーツに少しの隙間を作って
様子を伺おうとモゾモゾと身じろぎしてみる。

その隙間をタプが見逃すはずも無く
気が付けばシーツは取り上げられていて
慌てたゆきはベットに起き上がり
背後にいた彼の方に向き直った。

白いシャツはボタンが2つほど外れていて胸元が大きく開いてる。
首筋、鎖骨のくぼみが惜しげもなく晒されてて
思わず触れたくなった。
アップにしてる髪しか見たことなかったけど。
シャワーを浴びてたのかな?
髪の毛はまだ濡れていてそのままおろしてる。
メガネをかけてるから。

いつもより幼く見えて
と思ったのは撤回します。
ゆきの視線に気付いて
口の端を、軽く引き上げるように微笑みながら
「もっと見たい?」
って間を詰めてくるんだよ?

この人やっぱ悪い人。

「・・・いらない」

って視線外しながらつまらなそうに

「帰りたい」

とつぶやいた、。