・・・気がついたら

目の前には彼。
面白そうにあたしをじーっと見つめてて
「ヤダっ」
ってシーツに潜り込んだけど
すぐに剥がされてしまう。

羽根のタトゥーが目の前にあって
「これって何か意味あるの?」
って聞いたら。
「お守りみたいなもの、悪いものから守ってくれてる」

って言うから。

「あたしには効かなかったみたい、悪い人が隣に居るもん」
とふざけても、彼は寂しそうに微笑むだけで
言い返してこないから怖くなった。

「悪い人、かも」
ゆきをどうしていいか分からない自分が居て
手離すことを、もう考えている。

今までの女とは違っていて
扱かい方がわからない。
初めからなぜか気に入っていて
側に居るとからかいたくなる。
彼女が側に居ると暖かい気持ちになるのは分かっていた。

ただ、彼女が引き出す新しい自分を
素直に受け入れられずに。
混乱している。

タプはベットから起き上がると。
ゆきを置いたままひとり部屋を出ていく。


彼の背中を見た瞬間。
もう終わりだなって分かった。
なぜか悲しくは無くて
服を着て部屋を出ても涙は我慢できたのに。

自分の部屋に戻って
テーブルの上に置いてある彼の名刺を見てしまうと
一気に感情が溢れてくる。
まだ彼の香りが微かに残っていて
ゆきはもう、涙を止めることができなかった。