眠れない夜が続いても、朝は来る
疲れてるほうがいい、何も考えられないくらいに。
仕事は好きじゃないけれど
今は忙しいほうが良いい。

最近の仕事ぶりを見て
「今日は残業しなくていいから」
と上司が気遣ってくれるけど
今はまだ、1人になると考えてしまうから。

まっすぐには帰らずに寄り道してたの。
今年は寒くなるかな?ロングのダウン買ったほうがいいかな?
迷って結局買わないままお店を出て
たまたま見上げたビルの大きな画面に…。

あれって…。タプだよね?
ちょっと待って、待って…待って!
なにこれ?どういうこと?
もしあれが彼だとすると
あの人…ヤバイ筋の人じゃ無かったってこと?
ホストって線も消えてなかったんだけど…。
それよりもあたしの中の彼の状況は悪くなって行ってて
だって、あの画面の彼が本当の彼だとすると

多分有名な人…なんだよね。

振られたんだから
このまま忘れてしまいたいのに

予測できないところで、出没するって可能性大有りってことでしょ?

なんだかドッと疲れてしまったので
帰ることにしたゆきは
完全に彼を頭の中から押し出して
忘れようと思った。
忘れられるなら…そう出来るなら…。

カムバ前の練習でほぼ毎日徹夜。
休憩の途中で差し入れだとか
応援に来てくれる人も居て。

髪型とか、背格好とか
彼女に少し似てるだけなのに視線で追ってしまう。
練習に集中しようとして頭の中から全部を閉め出してるはずなのに
思考の隙間に、ゆきの笑顔が入り込んできて
集中できない

「何考えてんの~?」
とジヨンが面白そうに寄ってくる。
「当てていい~?女のコトじゃね?」
ってズバリ言ってくるから
「はっ??え?なに?」
とごまかそうとしても、逃げられなかった。

「だと思った~」
と…何も言ってないのに頷いてるジヨン
「しかも、なんかやばい状況??」
と楽しそうに笑っている。
「べつに…たいしたことないし」
と応えて言葉が詰まる。

こんなにも自分の日常を脅かしてくるゆきの影響
それを受け入れる意味を考える。
柄になく考えてるタプに
「そんな風に女のコト考えてるタプ初めて~、好きなら素直になれば?」
とかちゃかしてくるジヨン
ジヨンの戯言は無視することにして
カムバに力を注ぐ。
考えるコトはしない、迷わない。
思考レベルを0設定にして
TV出演のことだけを考える。
これが成功すれば。

気持ちも整理できるだろう…。

ステージでの記憶はまったく無くて
気がつけば終わっている。
楽しく爽快な気分…それだけ集中していたって事。

「打ち上げ~つか反省会?」
ジヨンがニヤニヤしている…。
面白がられている状況が気に入らないが
軽い食事をし、解散・・・の予定。

なのに『せっかくだから』と
テンションの高いジヨンチョイスの
『最近評判のクラブ』
に連行される羽目に・・・。

「1杯飲んだら帰るからな」
と宣言して車から降りると

その店はゆきと初めて出合った場所で
思わず笑ってしまった。
よりにもよってココ?
その微妙は表情を見逃さないジヨンは
「ここイイ子多いらしいよ」
と・・・意味ありげに笑っていて
タプの表情を完全に読み間違えたまま。
軽い足取りで店に入っていく。

店は日曜の夜だというのに賑わっていて
この前と違うのは通されたのがVIP席だったってこと位
中二階の高さにあるその個室からはフロア全体が見渡せた。