$妄想倉庫-ベビグンナイジヨン

待ち合わせてた
「明日何時なら大丈夫なの?」って言われてて
「夕方6時なら大丈夫だよ~えっと18時ね」
って念押ししたのに
急に部長直接「ここ数字の出しなおして欲しい」
って言われて、終わったらその時点でもう18時って

間に合わないって分ってるけど、
地下鉄を出てずっと走ってて

約束の時間に遅れたことなんて、今まで一度も無かったから
遅れたあたしをいつまで待っててくれるのかもわかんなくて
泣きそうな顔で走ってたんだよねきっと。
待ち合わせの場所には階段があってその上に彼が居て
視線が合ったの分ってたけど
彼はそんなの気が付かなかった振りしてて

うん、雪は降っててちょっと積もってたかな?
でもそんなこと気にもしてなくて
ただジヨンめがけて階段を駆け上がって…。

だから足が滑って踏み外したことも
こけかけて手を突こうして慌ててたことも
なんだか夢の中の出来事みたいで
現実じゃない気がしてた。

でも確実に手の甲はズキズキしてて
それでも、少しでも早く彼の元へと、気持ちだけが先走ってて
すごくバタついてたんだと思う。
気が付いたら目の前までジヨンが降りてきてて。
痛むあたしの右手をぐっと引き寄せるから
そのまま体持ってかれちゃって
ジヨンの胸に激突・・・。

「おそいって」

って口尖らせて言うけど

「ごめん…ね」

としか言えなくて…。

コートに付いた雪をジヨンはその指で払ってくれてて
あたしフードファーについた雪もその指で払ってくれてた。
待っててくれた時間がわかっちゃうよ
きっとずっと待っててくれたんだよね?
だってその指先がすごく冷たくて。

短いつめの先に冷たい雪が残ってて泣きたくなった。
「ほんとお前って、危なっかしいから」
と笑って。
あたしの遅れてきたことなんて全然気にしてない彼に
もうどうしていいかわかんないよ。

きっと涙目だったんだと思う。
用意していたヴァレンタインのチョコだって
記憶から消えていて

チョコ渡したのかな?それ…自体に気付かなくて。
ただ優しいジヨンが目の前に居て。
笑ってくれてるのが嬉しかった。

「それ俺へのチョコだよね」
って言われてあわてて差し出した手作りチョコは本当に素朴で
沢山の人に一杯貰ってるの知ってるから
恥ずかしくてズーット俯いてた。

そんなあたし見て彼はやっぱり笑ってて。
何も言わずに手を引いてくれる。
「寒いだろ」
って一言だけ言って。
冷たい手…だから。
あたしは両手で彼の手を暖めてた。
本当に無意識で。
「ミチは暖かいな」
って言われて初めて。
凄く恥ずかしくなる。