赤くなったあたしを見てまた笑うジヨンに
「笑われてばっかりでなんだが嫌」
って素直に言えちゃった自分に驚いた。
「なんか、ミチといると笑える」
ってジヨンはボソっとつぶやいてまた笑ってて。
その笑顔につられてしまう。
いやいや、つられて笑ってる場合じゃないって!

彼の部屋はいつもと同じ、凄く綺麗にしてあって。
ひとつ違うのはリビングに山積みのチョコレート。
チョコだけじゃないよね?ブランドの紙袋とかもあって
それが手付かずのまま置いてある。
「これ開けないの?」
「うん?」
はっきりした返事してくれないまま
「今日はコーヒー?紅茶?」
ってお湯を沸かしてる。
「俺はコーヒー。なのでミチもコーヒーな」
と、聞いた割には勝手に決めてるし。

ふかふかのソファーに座ってチョコの山見てたら
胸がチクチクしてきた。
チョコを送った人の気持ちが伝わってきて。
少し痛い。

カップを持ったジヨンが隣に腰掛けてくる。
香ばしいかおりとか、手渡された温かいカップよりも
ジヨンがあたしのチョコの袋に手をかけているのが気になって。
「ちょっ、それ今開けるの?」
って聞いちゃってた。
「うん、一番最初に開けるのはミチのって決めてたし」

…だから山積みのままだったんだ。

箱からは手作りのトリュフとチョコブラウニー。
ジヨンはそれをジーッと見つめたままで
なかなか食べようとしないから心配になってきて。
「ごめん、美味しくなさそう?だよね」
って言い訳してしまう。
ジヨンは首を振りながら
「ううん、どっちから食べるか迷ってて」

その真剣に悩んでる横顔がキレイすぎてドキドキしちゃって。
伏せたまつ毛とかおでこに掛かる前髪とか
膝に肘ついて頬杖してるんだけど軽く握った手とか…。

急にこっちを見てくちびる噛みしめて
「決められないから、はいっ」
って箱ごと渡されて
「????」

にまにま顔のジヨンはそのまま目を閉じて
「ミチが選ぶコト!」
って勝手に決めてるし。
しかもこの流れは、もしかして…。

「えっと、じゃあトリュフからでいい?」
って聞くとウンウン頷いて
「あ~ん」
って口あけて待ってるし。
トリュフを口にそぉっと放り込んで
「おいし~」
って目を閉じたままの彼は、次を大人しく待っている。
ブラウニーは少し小さめにちぎって
「はぁ~い」
ってトリュフの時みたいに持って行こうとしたら。
いきなり手首を掴まれて引き寄せられて…。

ブラウニーをあたしの指ごと口に入れてるから
心臓が急に跳ね上がる。

閉じていた瞳は今、まっすぐこっちを見つめていて。
視線が交わったのを確認してから。
指に舌を絡ませてくる。
多分耳まで真っ赤になってる…よねあたし。
熱くてカッカしてきてて。
視線を逸らそうとしても
ジヨンの瞳が面白そうにキラキラしてるから
ついつい惹き込まれて身動きひとつできないよ。
指を離す時、わざと大きな音を立てて
反応を見てくるその視線に、もっと熱くなってくる。

「チョコも美味しいけど、こっちもいい?」
って聞かれても、答えられないって知ってるクセに!
言葉にしなくても良いよ、恥ずかしいから。

それにジヨンに『ダメ』なんていえるわけ無いよぅ
でも、こっちもって…?

ジヨンは身体を起こして、ミチをかるく抱きしめた。
そして、分っていない顔をしてる彼女を面白そうに見つめながら
思わせぶりに、自分の指にキス。
そしてそのまま、それを彼女のくちびるに優しく押し付ける

押し付けられた指は彼女のくちびるをそっとなぞり。
そのまま頬に掛かる髪の毛をそっとかきあげた。

緊張がすこし途切れて。
彼の手の暖かさを気持ち良く感じ始めたと同時に。
奪うようにくちびるが重ねられる。
抵抗していたわけじゃないけれど。

こじ開ける様に舌が入り込んできて。
本当に、食べられちゃいそうな感じ…だよぅ。
応えるのに精一杯で
気が付いたら、ブラウスのボタン外されてて
それも、なんだか寒いな~って肩がスースーするなぁって…。
寒さで気付くなんて!

だってだって~今日のジヨンのキスは
激しいけど奥まで探ってくるようなキスで
すごく求められてる気がして嬉しくて。

でもそれ以上、進む自信も無くて
脱がされたブラウスをそっと引き上げてると。
それにすぐ気付いた彼が
笑ってるんだもん~。

「笑うところじゃないっ」
って思わず言ってしまった。