声が聞きたいだけじゃない。
言葉に揺れるまつげに
くるくると表情を変える瞳…。
ただ君に逢いたいって言えればよかったのに。
そういえなかったのは弱い心を隠していたかったから。
待ち合わせ場所に走ってきて息を切らせてる君が
愛しいと思っても。
そのままの気持ちを素直に伝えられなかった。
息を止めて冷たい指先を僕の手に添えて
不安げに見上げてる君
手の力加減が分らなくて
指先がフルフルと震えているから。
笑いながらその手を両手で暖めたっけ。
居心地が良くて
このままずっと一緒にいられるんだと、そう思ってた。
「好きだったの」
と君の口から過去形で聞く日が来るなんて思ってなかった。
唖然としてる僕に君は溢れる涙を押さえもせずに
「ありがとう」
と言って…。
ためらいも無く背を向けて歩いてく。
聞きたいことは数えられないくらいあるけど。
聞けなくて…。
「あたしあんまり泣かないよ」
と笑っていた君が
あの日は、とても泣いていたのを思い出した。