深夜の番組はどれも同じようなバラエティで
4本目のビールを開けながら思う。
こういう時こそ熱めのお湯につかって肩に入った力抜かなきゃ。
その前にうるさい携帯はOFFにして…。

携帯に出ない事はあっても
電源切ってるなんて、こんなこと初めてだよね。

薄桃色の入浴剤を入れて
白濁したお湯に体を沈める。
張り詰めた緊張感が少し緩んで。
深く息を吐いたら、ビールの酔いが一気に回ってきた。
あたまがぼーっとしはじめて、このまま寝てしまいそうだ。

お風呂で寝たりしたら
べべ怒るよね。

と意識はぼやけてるのに
彼を思い出した自分に苦笑いして
体を洗う前に携帯の電源をONに戻す。

電源切っててそれが気になったから
ベベのコト思い出したりしたんだよ!きっと

そうだ!絶対そう。

起動した携帯がメールの到着を音で知らせてくる。
彼のメール、だね。…でも優先順位はお風呂のが上ですから。

忙しすぎた一日をリセットしたくて。
いつもより長めのお風呂。
あがっても体を拭く元気もなくて
バスローブを軽くはおって部屋に戻ると
チカチカと点滅している携帯が目障りで。

はいは~い…わかってますって!

受信フォルダを確認すると。
未読メール5件って…。
珍しい。

メールしても電話しても返してこない事多いのに。
自分が連絡取りたいときは必死だから笑っちゃう。

「やっぱり会いたいからメールした、電話しても出ないでしょ?」
という1通目のメール
うん、確かに出ない…ね。

「とりあえずホテルに向かうから、メール見たら連絡して」
という2通目。

連絡…しないよ、だってきみは連絡してもしなくても
来るんでしょ?ここに

「セントラルホテルってあの駅前のホテルだよね?」
と3通目、そうだよ当たってるよ。外れてても連絡はしないけど…。

「ホテル着いた!!!ルームナンバー聞くの忘れてた、どこ?」
って、知らせなくても聞くんでしょ?フロントで。

そして最後のメールに笑ってしまう
「もしかして外出中?部屋にいなかったらどうしよう」
ホテル着いてから急に弱気になってるベベが面白すぎる。

って!!!ちょっとあたしバスローブ羽織ってるだけで
髪の毛も濡れたまま、下着もつけてないよ!
下だけでも履いた方が良いよねお腹冷えるし
ちょっと~どこに仕舞ったんだっけ?
しかも持って来てるのお腹まで隠れる暖かい奴やし
色気なんてこれっぽっちもないんだけど
ああああああ~~~スーツケーツひっく返してみる?
の状況の中。

ピンポ~ンって

おいおい~来るの早いって!

ドアの前で躊躇してたら
「ドンドンドン」って!
でも~ほらまだ準備できてないし~。
って黙ってたら。

「みわ~開けて~!!いるんだよね?そこにっ」

って、うわぁ~、名前呼ばれちゃったし
あんたほっといたら、多分
ドア蹴破るよね。
パンツも履かないまま
恐る恐るドア開けたら

$妄想倉庫

こんな顔してるし。

この顔で見つめられちゃったら
どうしていいか分かんないって…。

「もう寝ようと思ってたんだけど」
って言って、眠たそうに目をこすってみたけど
あなた、あたしのバスローブ見つめすぎでしょ!
「明日も早いしもう寝たいんだけど」
ってもう一度繰り返したら。
「みわは、まだ寒いでしょ?って」
ドライヤー持ってきて
あたしの髪の毛乾かし始めてるし。

そっとそ~っと髪を持ち上げて
手で優しくすくいながら楽しそうに鼻歌を歌ってる。
彼の手が時折、襟足や頬をかすめて
そのたびに鼓動が激しくなるけど
なんでもないフリをしてる。

鏡に映ったあたしの髪がサラサラと
顔の輪郭に沿って丸く流れてるのを満足そうに眺めてる。

鏡越しだけど、目が合ってしまいそうだから。
手元見つめてうつむいてる…。

そんなあたしの気持ち全然わかってない彼が
「見て見て」
ってはしゃいでて。
近いよっ!

顔寄せてくるから
頬っぺたくっつきそうだって!

「うんうん良い感じ~」
と視線を合わせないように注意してあたしはそう答えて。
疲れてるオーラをめいっぱい出してた…はず。