「顔上げて」

って言ってるけど聞こえないフリする。
聞こえないはずないのに、聞こえないフリ。

彼はそんなあたしのこと
ちゃんと分かってるから不思議
いつもは鈍感なのにこういう時は
無条件に優しくて…。

我侭言って振り回して
勝手に怒って泣いてるのはあたしなのに
いつも受け止めてくれる。

「みわー」
とまた呼ばれて。
反応しなきゃ永遠に呼んできそうだったから
涙抑えられる限界線まで視線を上げて
上目使いで彼を見たら。

「おいで」
って両手広げて笑ってて。

それでも動かないあたしに
「キスしにきてっ」
って、こんなセリフいえるのって君しかいないって
恥ずかしげもなく笑ってて
その笑顔につられて笑ってるあたし。

「うん、いいよ。けどその前にぎゅってしてっ」
と、彼の腕に飛び込んでギュってしてもらうけど
やっぱり足りなくて。
「しかたないなぁ」
って言いながら。

軽いキス。
彼のくちびるは柔らかくて優しい。
遠慮がちだけど、気持ちに正直だから
心の敏感な所にそっと触れて想いが伝わってくる。

暖かくて嬉しくて。

「泣いてるの?」
って言われるまで。
こらえてた涙が落ちてるのに気付かなかったくらい幸せで。

「泣いてなんかないよ」
って言う。
嘘だってバレてる…。
でもそこには触れずに
「まだ帰ってほしいって思ってる?」
って真剣な声。

返事しなかったら
「帰りたくないんだけど」
って…あらら、聞いてもないのに言っちゃう?それ?
笑っちゃったよ。

「好きにすれば」

って言うとホッとしたようで
「じゃ~ベットはみわが右で俺左?」
そこどっちでも良いから。

「好きにしたら」
と答えると
「う~ん」
と真剣に悩んでる彼…。

微笑ましく見つめながら
下着つけてないことを今更ながら思い出して。
どのタイミングでスーツケースからパンツ取り出して
はこうかと考えあぐねてる。
それでも今の状況が楽しくて
あしたも頑張れそうな気分になってる。

ベットの右側を占領して
あたしの枕を丁寧にセッティングしてくれてるから
左側に寝てあげる。

パンツは明日、彼より先に起きてはけばいいよね。

ありがとうベベ。
君は居るだけでいいの。
そばに居てくれるだけで…
あたしは幸せになれる。

明日もまた、こんなあたしに付き合ってください。

振り回してるって思ってるけど
結局離れられないのはあたしの方だって
分ってる…。

だから余計に我侭言っちゃうけど。
それを笑顔で受け止めてくれるあなたが好きです。
いつも、ありがとう。


でも『大好きだ』とは
まだ言わないんだから!




☆★☆END☆★☆