たまたま残業がなくて、こんなこと滅多にないから
そのまま帰る気にもなれなくて
ウインドーショッピングへGO!
百貨店はヴァレンタイン前だからというのもあって、人が多くて。
少し覗いてみたけれど人の多さに疲れてしまって早々と店を出る。
時計を見ると6時前で

『まだ間に合う!』
商店街からは1つ入った路地を目指してすこし足早に歩く。
お目当ては、タイヤキ。
手焼きのタイヤキ屋さんって最近じゃぁあまり無くて。
少し小さめだけどあんこがたっぷり詰まってて。
とにかくカリカリ加減が半端ないんだって!
店先にはお客も並んでなくて、やった~楽勝!
ってお店のぞいたら、早々と店じまいしてるおじちゃん…。

「もう終わりですか?」
って聞いたら。
「あと2個ならあるよ、いるかい?」
と言ってくれて。
「じゃあお願いします」
「200円ね」
って~。
嬉しくてニコニコしながらお財布から
お金を…だしてる間に、背後に気配を感じてしまった。
すみません~あたしでラストなんですけど。
と申し訳ない気持ちで振り返ったら。
背の高い男の人が…。
てっきりおばちゃんとかだと思ってたから
一時停止してしまう。

パーカーのフードかぶってるけど
額に掛かる髪の毛は明らかに銀髪で。
危ない人だよ、目合わさないようにしなきゃ。
と先を急ごうとしたら
グラサン外して、お店のおじさんに
「終わりですか」
ってあたしと同じように尋ねてる。

そのまま立ち去るはずだったのに
動けなかったのは。
彼の目を…見てしまったからです。

一瞬だったから一重なのかどうなのかも分らなかったけど
印象的な眼差しで
それが気になってその場から離れられなかったんだと思う。

彼の気落ちしてる背中を見てしまったら
「ひとつでよかったら、どうぞ」
って言ってしまっている自分がいて。
袋ごと差し出してて『もう全部でもどうぞ!』って勢いだったw
そんな気持ちになってるって、自分でも笑える状況だよね。
タイヤキを手に取った彼がこっちを見てるから。
何か言わないといけない!
とは思うけど言葉が出てこなくて。
そのかわり、まっすぐに彼を見つめてた。

目は奥二重なんだね。
それだけじゃない、この人…すごくかっこいいよ。
背も高いし、それにタイヤキを選んでる手が
思っていたより個性的でぐっときてしまう。

彼は嬉しそうに
「じゃあコレ」
って1個つ選んで、こっちの様子を伺ってる。

なんでこっち見てるんだろう?
なんでなんで??って

恥ずかしくてドギマギしてる途中に理由が分ってきた。
あたしが食べるの待ってるんだよね?
持ち帰って食べるつもりだったけど。
あたしもあわてて袋からタイヤキ取り出して。

じゃぁ

って二人で食べようとしたんだけど。
「頭から食べるんですね?」
って思わず聞いちゃってた。
彼の答えを聞かないまま
「あたし頭の方が好きだから、頭から食べる方なんです、あんこがたっぷりでw」
って爆走してた。