彼は楽しそうに
「俺はカリカリしたしっぽが好きだから最後にしてる」
って言うから
「じゃあ今日はしっぽから食べてください!」
とか自分でも可笑しいくらい真剣だったと思う。
不思議そうに首を傾げてる彼に
「あたしのしっぽあげますから、あなたのあたまの方とトレードです!」
って…。

変な子だって思われてるのは分る…。
普段の自分から考えても、今のあたしが変なのは十分わかってるよ
でもこのまま別れたくなくて。
空回りしてた…。

彼は噴出しながら笑ってて。
「トレード~了解」
ってそのまま一口ほお張って、美味しさに驚いてるから
「ここのはすごく美味しいんですw」
ってまる自分の事のように自慢してた。
そんなあたしを彼はうんうん頷きながら見つめてくれてて
食べかけのタイヤキもにこにこ受け取ってくれて
「しっぽがやっぱり旨い」
って…人の食べかけなんて嫌な人だっているのに
気にせずに美味しいと感動してる。

あまりにも遠慮なくイロイロしてしまったので
今になって急に恥ずかしくて。
「じゃぁ」
って帰りかけたのです。

『待って!』
って言われるの少し期待してた。
でも声かけられることはなくて

そういうもんだなぁって
淡々と思っていたのです。

肩が引っかかって、始めは足元踏み外したかと思ったけど
そうじゃなくて。
何に当たったんだろうって
振り返ったら。
彼が立ってた。

背が高いからかな?
少し前かがみになって
「ごめん、このホテルってどこに行けば…」
って。
あぁ~道聞きたかったんですね。
とがっかりしながらも。
駅の北口から大通りを右に
とか詳しく説明してたら。
言葉に詰まっちゃって。

…いや今見つめてくれなくて良いから。

そんなに真剣な目でウンウン頷かなくていいから。

…なんとか案内し終わって
改札までの道を突き進んでたら。
「家ついたら連絡して」
ってメモ渡されて、そこには携帯番号と、メルアド…。
心配されてるのが気に食わなくて
「連絡する理由がないし」
とつき返そうとしても。

「待ってるから」
って一言

『心配だから』
って言われたら絶対つき返そうと思ってた。
心配される筋合いないし、だって他人でしょ?
なのに『待ってるから』って

「気が向いたらだけどいい?」
って言って、返事も聞かずに走って逃げてきちゃった。

あの人ほんとヤバイんだもん
好きになっちゃうよ
って…さ。

もう好きになちゃってるからヤバイんだって。
まずは頭ん中整理しないと!
それにかっこ良すぎるし。
ああいう人は女の子が黙ってないって
きっと彼女もいるはずだし…。
あぁぁぁ~マイナスの事しか考えられないので

逆転の発想!
帰ったら電話する、それだけ!
それだけのことです。
そう割り切ろう、じゃないとあれこれ考えすぎて
ドキドキするだけじゃなく、切なくなったりしちゃうもん。