待ち合わせのカフェに急いでる、駅からすぐのお店なのに
改札を出てからモタモタついてて。
このままでは遅れてしまいます!

だってなんか人多くない?
平日の夕方なのに人が溢れてる場所があって
何かのイベントなのかな?と気になりつつも
待ち合わせ優先っ

5分遅れでたどり着いて

「ごめん~」
って友達に謝ってから
カプチーノを注文すると。
「あんたなに迷ってんのよ~国際フォーラムってすぐわかるでしょ」
「なんか人多くてモタついてたら遅れた~」
ってむ~っとしながら言ったら。
急に嬉しそうな顔をして
「だって、そりゃそうだよ」
と意味深な言い回ししてきて
しかもたくらみ顔でこっち見つめてくる友人。

「なに?その顔。何かのイベントとかなの?」
と聞くと目をキラキラさせながら。
「実はさ~今1番好きな人のイベントでさw」
と胸の前で手を組んでうっとりしている…。
先に教えておいてよ~と思うけど
この友人、いつもコンナ感じなので

うんうんと話半分に頷いてカプチーノで暖をとってた。
「抽選に外れたから参加は出来ないんだけど、ほらこっからちょっと見えるじゃん」
カフェのガラスを隔てて、その向こうに人だかりが見えてる。
「屋外イベントだから、ちょっとは見えそうだね~」

とカップの中のスチームドクリームを
スプーンでくるくるとかき混ぜながら話を合わせてる。
「で、誰のイベントなの?」
って聞くと、彼女は良くぞ聞いてくれました!顔でニマニマしながら
「BIGBANGのTOPって人のね映画公開イベントなのさ、レッドカーペット歩くんだよ」

「………。れっどかーぺっと」

確かに人だかりの前には真っ赤なカーペットが敷かれていて
って…いまTOPって言った????
「T・O・Pって…タプ」
「そ、なにあんた知ってたの?」
…知ってる。うん知ってるよ鯛焼き一緒に食べた。
姿勢の悪いモデルだと思ってたけど
俳優さんだったの?

ぼーっとカップの中を覗いてたんだと思う。
急に歓声が上がったのに友人が反応して
速攻カフェのガラスにへばり付きながら
「ほら来たよ!カオリっ何してんの、こっちこっち」
って必死に呼んでくれてるけど。
体から力抜けてて歩いていけない。

歓声と人の多さに圧倒される

有名人だったんだ…。
そうだよね、だってあんなにかっこいいんだもん
それなのに全然気取ってなくて
おいしそうに鯛焼きを食べる人

カフェには他にもイベントを見ようと待っていた人がいて
友人がいつのまにか人だかりで見えなくなってる。
「ちょっと~カオリ!」

ってまだ呼んでくれてるから
フラフラしながらも近づくと
「こっちだって!」
と強引に引っ張り込まれてしまう。

正面からじゃないから始めはよく見えなかったけど
銀髪だから遠くからでも近づいてくるのが分る。
フォーマルな格好をしている彼は
違う世界の人だ。

目の前まで来くると
正面ではないカフェの方にも手を振ってくれている。

「キャーキャー」
叫んでる友人の横で
ほけ~っと呆けてた、手を振る余裕も無く
ただ呆然としてた。
そして気付かれないように少し後ろに下がる。
こんな遠いんだもん~見えてるわけないのに可笑しいよね。

この前あったタプとは違う人すぎて

リアルに感じられないままだけど
もう考えないことに決めて
友人と軽い食事をしてから別れる。

携帯からは削除した彼の番号
でももらったメモはまだ捨てられてなくて…。

忘れたいと思い続けてたのに
忘れられないのは彼のせいだ!
と、今日はそう思う事にして
早く寝てしまおう!
明日になったらすっかり忘れているはずだから。