「あっ~えっと、サイン!そう、これにサインして欲しいなって」
あああああ~そんなことこれっぽっちも思ってなかったのに
今の状況をどうにかしたくて
出てしまった言葉に
「…え?」
と沈んだ彼の声
慌てて振り返っても
視線を合わせてくれないまま
彼はマジックを取り出すとサラサラと
ペンを走らせて
「まだ欲しいの?」
と続けて2冊目を手に取ってる
「あっもう…」
「もう…いい?」
その口調は今まで聴いたことないくらい
淡々としていて恐くなる。
「ごめん、なんか悪い事した?」
と慌てて言うけど答えてはくれなくて。
無言のまま雑誌を2冊乱暴に渡される

あぁ~ダメだって涙出てきちゃうよ
もうまっすぐに顔見れないし
うつむきたいけどそうしたら涙溢れてきちゃうし。
気を張って唇ぎゅっとかみ締めるのだけで精一杯
パッツパツなあたしを見て
「全然分ってない」
と彼は一言つぶやいて
強引にあたしの体を床に押し倒す。
素早く顎を持ち上げると
一方的なキスをしてくるけど
それがとても優しいキスで
こんどは別の意味で泣いちゃいそうだって
吐息は全部彼に絡め取られてしまって
触れ合うくちびるはお互いの唾液で心地よく滑り
水音を立てながらキスは続いてる。
彼の舌が奥にまで入り込んできて
上顎まで探ってくるから
これ以上は、じっとしてられなくて
彼の肩に手を回して
そっと抱きしめてた。

ジヨンがそれに気付いて
くちびるを離そうとしているのを感じる。
離して欲しくなくて、離れたくなくて
あたしは腕に力を込める。
そんなあたしに彼は笑いながら
「あいかの前ではただの男。急にサイン欲しいとか言われて
そっちのジヨンの方が良いのかって、なんかムカついてただけだから」
っておでこと左まぶたに音をたててキスをくれる
あたしの体ごと、優しく抱きしめながら
「あいかが可愛いからついついやっちゃうんだよな、こーゆーの」
「こーゆーの?」
「そ、泣きそうになってるのも可愛いからさ、ついつい」

「…いぢわる」

口を尖らせて彼の腕から逃げようとするあたしを
かれはキツク抱きしめて。
「もう少し、このままで」
と耳元でささやく。
その声がとても楽しそうで優しく響くから。
「あと少しだけならね」
とあたしも笑ってる。

「もっと、キスしてくれたらね」

と付け加えて。




☆★☆ END ☆★☆