「まい~チョコレートも食べよう」
と彼は言うだけで。
袋を開けようとはしないのね。
・・・開けてくれるのを待ってるんだよね。
丁寧に包まれた小さな箱を
紙袋から取り出して。
「ラムレーズンと生チョコのどっちを先に食べるの?」
って聞くと
「ラムレーズン」
とだけ答える。
体温ですぐに溶け始めるチョコレートだから
箱ごと彼に差し出すけれど
やる気の無い顔して首を振って見せた後
口を開けて待ってるタプ・・・。
またですか???
またあ~ん要請ですか?
「溶けちゃうけといいのかなぁ」
とつぶやきながら
そぉっと一粒だけつまんで
口の中に放り込もうとしたら
手首を掴んでくるなんてびっくりしちゃうよ。
チョコだけでいいのに。
溶け出して指に残ってるチョコレートまで
そっと舐め取ってる。
それだけでも、ゾクゾクした感覚が指先から全身に
伝って声が出ちゃいそうなのに。

それをわかってて
チョコの付いてない所にまで
舌を這わせてくる。
息を詰めてないと吐息が漏れてしまうから
「・・・タプっ」
としか言えなくて。

制止したわけじゃない
けれど彼の動きはすずに止まってしまって。
それを残念に思ってた。
「生チョコも食べる?」
と自由になった手でチョコをつまもうとしてると
「まいもひとつ食べてみて」
というので。
そのまま口に入れるとすぐに溶けて甘さとほろ苦さが
一杯に広がって、笑顔になっちゃう。
そんなあたしを楽しそうに見つめながら。
「目つぶってて」
とチョコをもう一つ差し出してくる彼。
「はぁ~い」
とチョコを口に入れて目をつぶっていると
「これも一緒に」
ってくちびるに冷たい物が押し当てられて。
キス・・・だけじゃない。
バニラアイス・・・でしょ?
アイスの冷たさで溶けかけてたチョコが
形を取り戻してきて
そこに彼の舌が入り込んでくるから
甘さと硬さ、冷たさと柔らかさが
一緒になって、もうよく分らない。

彼とのキスはそれだけで十分甘いのに
こんなキスはズルすぎるよ。

声を抑えることはもう出来なくて。
彼の動きを止めることも出来ない。
背中に手を回して、キスを受け止めて
「今日は七夕~知ってた?」

とキスの間に言われても
頷くのが精一杯です。
「今日は恋人たちの日、だから・・・してもいいかな?」
ってここまできて、そんな事確認しなくてもいいでしょ?
恥ずかしくて答えられないし。
・・・っていうか、その笑い!
わざと言って反応見てるんでしょ?
「アイスも溶けてしまうけど・・・それでもいい?」
って~~~だから答えられないの分ってるくせにぃ。
すっごく赤い顔してると思う
顔が熱いし、恥ずかしくて彼の顔を
まっすぐ見られないけど
背中に回してる手はそのままだよ。
キスも忘れない。

ちゃんと覚えてる。

これから起こる事も・・・全部。




☆★☆ END ☆★☆