今顔覗き込まれると耳まで赤いのがバレてしまう。
見て欲しくない空気感じ取って
あえて覗き込んでくる…んでしょ?
あたしが赤くなってるの確認してにまにま笑いながら
繋いでる手にぎゅーって力入れて
「痛いって~」
って言うの待ってるでしょ?
困った顔したら彼の思うツボ!

ほっぺはまだ火照ってるけど
顎を上げて余裕のある風を装って

「スンリの部屋に行こ」

って唐突に言ったのは
困らせたい気持ちになったから。
そして言ってから視線合わせてないのは
彼の困った顔を見てしまうと
「うそっ、嘘だよ~冗談だってw」
と引き下がってしまいそうだからです。

そんな心配をよそに
つないだ手に力を込めながら
「うんうん、いいよ~」
と変わらない口調で返してくる。
「買い物してかなきゃ、食べるものもないけど」
って嬉しそうなんですけど…。
全然困ってないよね?
それどころか喜んでる。
隣でニマニマしてるの見なくても
空気で分るってどんだけだよ。
困らせるつもりの当てが外れて
少し悔しいけど
部屋に行けるの決定~
そのうえあたしも楽しみだから、まいっか。

駅前のスーパーは
夕飯の買い物客で賑わっている。
お買い物カゴを手に、入ろうとしたら
「カート、カート~っ♪」
とと言いながら
あたしが手に持ってたカゴを
カートに乗せてくれるけど
そんな大量に買い物しないよね?

「何が食べたい?」
なんて聞く必要ないみたい…。
「このピザ旨そう~」
とカゴに入れ
「コロッケ…コロッケ?いやチキンだろう」
とチキンも放り込んでる

「ユキの手料理も食べたいけど、また今度にする~」
と勝手に決めてて。
「料理下手って思ってるの?結構上手いのに~何でも作るよ」
とアピールしてるのに。
「ビールとシャンパンとどっちがいい?」
ってカブせてくるし
なんか悲し~~~くなってきた。
それが顔に出ちゃってたよね。

あたしの肩に手を回して
自分の方に引き寄せると
「いちゃいちゃするから、料理してる暇ないって」
と耳元で囁いて、そのままさり気なくこめかみにキスしてくる。
誰かに見られてるかも!!って思ったら
恥ずかしくて、また顔が火照ってくるよぅ。

離れなきゃ、と少し身体を離して
「一緒に料理つくるってのはどうかな?」
と提案してみる。
「今は料理より、したいことあるから」
と即答スンリ、意味ありげにこっち見てる。

なにしたいことって何ナニなぁに~~~~????

ダメだ喉がカラカラになってきた。
「ビールもシャンパンも、もうどっちも飲んじゃう」
そう宣言して目に付いたスモークサーモンを
カゴに入れるあたし。
「了解~」
と満足げな彼
「できれば今飲みたいです」
と我侭を言うあたしに
すっごいキメ顔を近づけて来て
「…ガマンシテ」
っ…。
普通に言えばいいでしょ?
なんで吐く息、多め、しかも小声で囁くの?
息が耳にかかるでしょーが!

近すぎる顔を押しのけたら
ニヤニヤ…ニヤニヤ…し過ぎてる。
もしかし、またキスしようとしてたんですか?
ナニ?コノ動物…。
すっごく身の危険を感じるけど、憎めないのはナゼ?

あたしも負けてらんない!
一番可愛く見えるであろう角度と笑顔で
彼の頬に軽くかすめるようにキスをして
「我慢できないから早く帰ろ」
って耳元で囁き返す。
ほんの、冗談のつもりだったのに。
こぼれんばかりの笑顔で
うんうん頷いてる彼を見て

どうしよう?
気持ちの引っ込みがつかなくなってる…。