「逢えると思ってたから…」
と小さく消えてしまいそうな声
「…ほんとはもっと前に分かってたんでしょ」
と言って黙り込む君。

電話の向こうで
君が何も言わないのは
泣いてるのを隠してるから…。

そばにいれば引き寄せて抱きとめる事だって
できるのに、それも今はできなくて。
「ごめん、俺も直前まで知らなくて…」
っていい訳にも聞こえるようなことしか言えない。

「こんな事でって思ってるでしょ?」
と一度言葉を切ってから
「今回はこんな事じゃないんだよ、今までだって約束してたのに逢えない事あったでしょ?」

出来ない約束はしないって決めてる。
約束に遅れたり、行けなかったり…。
逢えないことだってあったけど
こんなに重苦しい空気は初めてで。

「わからない?」
と震える声で言われても
何も答えられないまま、君が話してくれるのを待ってる。

「いつもはね、言ってくれたでしょ?直接行けないって伝えてくれたのに、今回は違うよね?
事務所の発表のが先で」
「…」
「一番先にあたしに話してくれるって思ってた、信じてたのに、違ってて…。」
予定の変更をマネージャーから聞いた時
仕事のことしか考えられなくて
だからといって、連絡しない理由にはならない。

「ごめん」
「ん~~、もういい。だって逢えないのは決定なんでしょ?」
抑えた声はそのままで、すべてを諦めたように話す。
もっと気持ち、吐き出してくれればいいのに。

「明日も早いんでしょ?じゃあもう切るね、おやすみ」
いつもならもっと話してたい、声が聞きたいと駄々をこねるのに
一方的に電話を切って。
そのあっけなさに違和感を覚える。
我儘が言えないのは俺のせいだね。

きっと君は泣き続けてる。

空が明るくなって
朝が来ても、明日になって…それからも

俺が同じ気持ちで、眠れないまま
夜明けを待っていることは知らずに。