麻原彰晃死刑執行Xデー | 大江ゆかりのブログ

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平成24年度新司法試験再現答案。
私は『とめはねっ!』に出てくる鈴里高校書道部唯一の男子部員、帰国子女です。
第14巻(最終巻)は平成27年5月29日発売!

麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚の死刑執行が年内に予定されているというXデー報道が多数流れています。

すでに法務省内の手続が法相のサイン待ちともいわれています。マスコミの予定稿はすでに準備済です。

いっぽうで、数年にわたり、意思疎通がはかれず垂れ流し状態がつづくという精神病状態で、受刑能力を欠くとも報じられています(加賀乙彦『悪魔のささやき』 集英社新書2006年8月17日


教授に、

「原則として死刑制度には賛成できないが、内憂外患等の国家の存続にかかわる犯罪については、存置の必要を否定しきれないように思え、悩んでいる」

と質問したら、

「死刑制度にはまったく反対だ。国家がなくなったときのことを心配してもしょうがないじゃん」

と、教授にいわれました(*1)。

なお、麻原死刑囚の罪責は殺人罪等であり、内憂外患等ではありません。

死刑存廃論はさておき、現行法と現実の運用を前提とすると、死刑廃止論は後述の1点だけ指摘していったん棚上げしておきます(*2)。

また、再審請求中の死刑執行の可否についても、ひとまず措いておきます。


死刑制度は、人格的覚醒すなわち規範意識のめざめ、改悟回心をうながすことがあります。

もっとも、大教大付属小学校事件の犯人のように、反省を一切表明することなく執行にいたることもあります。

しかし、抽象的には悔悟の可能性のある死刑の受刑能力すなわち精神的能力を要求するのが現行法の趣旨です。

一連のカウントダウン、Xデー報道は、死刑の執行を既定事実化し、受刑能力への疑問という障害を地ならししているようにも映ります。

もう1つ2つ付け加えると、事件の凶悪性とセンセーショナリズムによって、三浦事件などをつうじて深められてきた犯罪報道のあり方についての議論がほとんど吹っ飛んでしまったこと、同死刑囚の公判段階で、視覚障害のある当事者の訴訟準備ということも議論を深める先例、契機になり損なったことは、今後の日本にとって残念です。

このように報道は、視線を一方に向けてしまい、議論や関心の死角を生じさせます(マスキング、被覆作用)。

死刑について議論を深める機会とするために死刑執行のサインをし、見学をした「死刑廃止論者」である千葉景子元法相(弁護士)と民主党についても書いておきます。廃止運動の代表的弁護士は、「千葉こそ死刑だ」と言っていました。法相としての良心は、弁護士としての良心とはちがうのでしょう。死刑制度の是非はともかく、議論・考えを深めるための執行というのはまったくいただけないし、その政治姿勢は、民主党とあわせて政治に対する信頼を失わせるものです。

Xデーは年内に確実に来るでしょうが、政治への信頼回復は、橋下徹・大日本合州国初代大統領の登場をまたなければならいのでしょうか?


(*1)個人的にもっとも影響を受け、尊敬する教授の1人は、「家族が殺されたら、国家が裁かなくても、自分の手で復讐する」そうです。そういう機会が教授に来ないでほしいです。私にも。

(*2)死刑の執行は、人の命を奪うという点で「殺人」の側面を持っており、それは法的のみならず事実上も強制のカラーを帯びることがあることを忘れてはならないと思います。永山則夫死刑囚の執行時は、暴れる受刑者を無理やり吊るし、刑場に移動させられる受刑者の断末魔の叫びが拘置所内に轟いたといわれています。