日付変更と共に投下したかったのですが、間に合いませんでした・°・(ノД`)・°・

 今年の、Xmasつまりキョーコちゃんの誕生日企画の仕上げに短編を1本。

 短編といっても『不安な夜』の特別番外編です。

 Upが遅くなってしまったので、当サイトにおけるスキビ二次の全員公開期間を延長いたします。

最低限年内は全員公開にしておきます。


 では、キョーコちゃん誕生日企画最後の1本です。

不安な夜、はまだ続きますよ~~♪
 




 

   【We wish your happy birthday】

 

 

 

 Side 奏江


 今年も宝田社長宅の迎賓館を使って開かれた『ハッピー・グレイトフル・パーティー』は盛況だった。
 マリアちゃんの為にキョーコが計画し、社長が盛り上げて纏めたらしいこのパーティーは、趣旨こそ多少変わったものの、毎年続いて開かれている。
 そして、このパーティーは、日付が変わるとほぼ同時に敦賀さんが一番初めにキョーコに誕生日プレゼントのバラを贈り、ハッピー・バースディが流れて巨大なケーキが運ばれてくるパターンは変わらない。
 初めての年の時は、知らなくて敦賀さんに遅れを取ったけど、次の年からは遅れを取るまいとしていた私を、社さんやマリアちゃんが散々邪魔してくれたのよね。
 尤もいつでもキョーコは、敦賀さんからバラを贈られて嬉しそうにしてるけど、私からプレゼントを贈ると狂喜乱舞するから、毎回溜飲が下がる思いをしていたけど。
 そういえば、敦賀さんは、キョーコに一番初めに「誕生日おめでとう」って声を掛けるけど、その後はキョーコがみんなに囲まれている姿を微笑ましそうに見ているのよね。
 キョーコが、知人友人から誕生日のお祝いを言われて喜んでいる姿をこそ、嬉しそうに見守っているような。
 今年は流石に敦賀さんと張り合おうなんて思わなかったわ。
 まぁね。
 いくら親友でも、出来立てのカップルのロマンティックを邪魔するほど野暮にはなれないもの。
 それにしてもこのバカップルには苦労させられたわよ。
 キョーコは聞きしに勝る湾曲解釈振りで事実誤認を続けるし、敦賀さんは奥歯に物の挟まったような物言いをするし。
 今回あまりにもキョーコの事実誤認の激しさに流石の私も敦賀さんに同情を覚えてしまって動いたけど、あれだけ口説いていたのにストレートには言った事がなかったって何よね。
 まぁねぇ。
 逃げ場を残しておいたからキョーコが逃げずにいたと判断した敦賀さんは正しかったみたいだけど、敦賀さんの方が追い詰められちゃったんじゃね。
 それにしても〝あんな事態”に陥っていたのに、よくもマスコミに流れなかった物だわ。
 そこはやはり事務所の力なのかしら?
 LMEを選んだ私の判断は正しかったという事ね。尤も事務所が守ってやろうと思わせる女優でいなければ、敦賀さんと同じような恩恵に与る事は出来ないわけだから、精進あるのみ、だけど。
 キョーコの好きそうなアイテムよりも、私からプレゼントを貰う事の方が嬉しいらしいキョーコ。敦賀さんは毎年クィーン・ローザ〝だけ”を贈っていると称して、毎年小粒の宝石を忍ばせている。キョーコが高価な物を決して受け取らないから苦肉の策、って事らしいけど、後でばれた時どうする心算なのかしら?
 今年もバラに蕾が混じってるところを見ると、また仕掛けているわよね。キョーコったらいつになったら気付くのかしらねぇ。
 でも、高価なプレゼントだと受け取らないって解っていながらも、敦賀さんはいつでもキョーコに《本物》を贈る。芸能人は身に着ける物も本人の価値を評価するアイテムになる。敦賀さんは、キョーコを自分がいる高みまで引き上げる気でいるって事なのかも知れない。
 それだけ、敦賀さんはキョーコに本気、って事なのね。
 恋人でもない内から嫉妬してたらしい敦賀さんの独占欲は気になるけど、キョーコを高みへ導こうとする男は、キョーコの周りには敦賀さんだけみたいだし。
 社長は、引き上げる代償に遊びまくるのは必至だから対象外よね。
 キョーコを幸せにしてくれるなら、芸能界一良い男なんて評価を受けている男でも、まぁ、良いわよね。敦賀さんはフェミニストで通っているみたいだけど、殊キョーコを守る事に関しては、かなり苛烈みたいだから。敦賀さんの評価が多少落ちても、キョーコさえ守ってくれるなら、私には文句はないわ。

「誕生日、おめでとう。キョーコ!」
「モー子さん、ありがとう!」

 この笑顔を見られるなら、女友達では一番、というこの立ち位置も、うん、悪くないわ。




 Side マリア


 今年も無事にこの日を迎える事が出来ましたわ。
 初めて【ハッピー・グレイトフル・パーティー】を開いた頃は、私はこの日が嫌いでした。
 だって、私がママに帰って来て欲しいと我儘を言ったばかりに、ママは飛行機事故に巻き込まれて亡くなってしまったのですもの。
 ママの飛行機事故以来、私にとって誕生日は1年で最も呪わしい日になってしまっていましたのに。
 お祝いなんて出来ない日。世間はクリスマス・イブでパーティーを開いて楽しく過ぎていくこの時期を、私が楽しむ事は、ママに対して申し訳なくて出来なくなっていました。
 それを変えて下さったのはお姉様でしたわ。
 この1年で出遭った人達に感謝をするの、と。
 私達の力だけで小さなパーティーを開きたかったのに、おじいさまの匿名での乱入で、パーティーの規模は大きくなってしまって、お料理を担当されたお姉様の負担がとても大きくなってしまったのは困り物でしたわ。
 お祝いするのではなく、感謝をする日、に摩り替えて下さったお姉様の気遣いのお蔭で、私はこの日を楽しく過ごす事が出来ました。
 最後の最後で、おじいさまに真打登場宜しくお株を奪われてしまったのは残念でしたけど、あんなプレゼントがあるなんて、なんて幸福な日になった事でしょう。
 パパの『愛してるよ』の言葉は、まるで呪いを解く呪文のように、私の心を解いてくれましたわ。小さな子供のようにパパの腕の中で泣き疲れて眠ってしまった私は、一番の功労者であるお姉様の誕生日が祝われていた事も知らずに眠ってしまった事を翌朝になって知らされて、随分と情けない思いをしましたっけ。
 翌年からは、お仕事も増えて忙しくなったお姉様のフォローも兼ねて、私が主催して開くようになったパーティーは、日付が変わると同時にお姉様の誕生日パーティーに切り替わる事が定着しました。
 蓮様が日付が変わるのと同時にバラをプレゼントなさり「誕生日おめでとう」と仰ってから、ですけど。
 ワゴンで運ばれてくる巨大なバースディ・ケーキにお姉様が笑み崩れて、プレゼントに喜ぶお姉様を、蓮様がとても愛しそうに見守っていらっしゃるお姿を拝見するのも恒例の事。
 蓮様が誰か他の女の方にお心を向けられるのは淋しいですけれど、お姉様がお相手なら、私、認めますわ。

「お姉様、お誕生日、おめでとうございますですわ」
「ありがとう、マリアちゃん」

 蓮様、お姉様の満面の笑みを、これからも守って下さいましね。



 Side 社


 売れっ子俳優のマネージャーなんてしてると、どうしても大勢で会場に入るなんて事出来ないから、蓮と二人だけで受けなきゃいけないんだよな、ファン・ファーレ。
 このパーティーの延長線上に、キョーコちゃんの誕生日パーティーがなければバックれたいよ、ほんと。
 担当俳優がここ数年片想いを続けて、漸く想いが通じたばかりのキョーコちゃんの誕生日を真っ先に祝いたいという、蓮の希望を無碍に出来る筈もない。片想いを続けていた時ですら、蓮はぎゅうぎゅうに詰まっていた仕事のスケジュールを馬車馬のように消化してパーティーに行けるようにしていたくらいだ。両想いになった今年に一番にキョーコちゃんに「おめでとう」を言わせてやらなかったら、俺が恨みを買ってしまうよ、ほんと。
 あれだけ蓮に口説かれ続けても曲解しまくりで蓮の気持ちに気付かなかったキョーコちゃんが、とうとう年貢を納めたんだから。
 まぁねぇ。
 蓮が〝あんな事”になるほど思い詰めている相手がキョーコちゃんだとはっきり知らされて、それでも逃げようとした時は、流石にお兄ちゃんもどうしたものかと本気で悩んだよ。
 紆余曲折はあったものの、あちこちで蓮に掛けられる「良かったねぇ」という感慨深い声を耳にして、キョーコちゃんも往生したらしい。
 蓮にもキョーコちゃんにも、まだまだ不安要素はあるらしいけど、この先は二人で一つ一つ乗り越えていくんだろう。
 毎年、蓮が最初にキョーコちゃんに「おめでとう」の言葉とプレゼントを渡すのを邪魔しようとしていた琴南さんも、今年は流石に引いてくれたみたいだ。マリアちゃんと共同戦線を張って蓮に協力していたけど、今年はあの苦労がないだけでも砂糖の山を吐き出す苦労が報われている気がするよな。

「キョーコちゃん、誕生日、おめでとう」
「ありがとうございます、社さん」

 毎年一番乗りでプレゼントを渡した後の蓮が、その後はずっと見守る位置に着いて見つめている満面の笑み。
 これからもこの笑顔を守り続けるんだぞ、蓮。
 その為になら、おにいちゃんいくらでも頑張って協力するからな。



 Side ローリィ


 クリスマス・イブで世間が浮かれるこの時期に、俺にとってはめでたいマリアの誕生日にも拘らず、数年前まではろくに騒ぐ事も出来なかったこの日。
 今年も盛大にパーティーが開かれている。
 最上君の発案で開いた【ハッピー・グレイトフル・パーティー】は、自分の誕生日を楽しむ事をしなくなっていたマリアを心から楽しませてくれた。この機に乗じて、と息子を呼び寄せて会わせた事は功を奏した。
 あれ以来、このパーティーの主催は、忙しくなった最上君に替わってマリアが陣頭指揮を執っている。
 初めてパーティーを開いた年は、まだ幼かった事もあり、父親の腕の中で泣き疲れて眠ってしまったマリアは、最上君のバースディを祝う事が出来なかった事をひどく悔しがっていた。
 翌年からは最上君の誕生日を祝う計画を中心になって立てている。
 蓮が最上君に日付が変わると同時に祝いの言葉とプレゼントを贈るのを、マリアは率先して手伝っていた。琴南君が蓮の邪魔をしようとするのを、マリアは社と連携して妨害していたものだが、今年は琴南君が邪魔する気配がない。
 蓮から、漸く最上君と付き合う事になったと報告があった。
 最上君の親友である琴南君がそれを知らない筈もないから、出来上がったばかりのカップルに遠慮の一つもしたのだろう。
 日付が変わると同時に、蓮が大輪のバラをほんの数本最上君に渡す。最上君はこの瞬間はにかみながら受け取る。
 このプロセスは毎年のパターンになっている。
 一つのセレモニーを終えてから、『ハッピー・バースディ』の曲が流れる中で、厨房のスタッフが巨大なバースディ・ケーキをワゴンで運んでくる。
 パーティーを楽しんでいる参加者は、曲を聴いて初めて日付が変わった事に気付くようで、最上君が招待した人達が最上君へのプレゼントを持ち寄る姿が目に入る。ケーキを目の前にした最上君へ、美味しい料理への感謝を込めた拍手が贈られるのもパターンだが、毎回心が籠っている。
 嬉しそうな最上君を見守る蓮の顔は穏やかだ。

「最上君。誕生日、おめでとう」
「社長さん、ありがとうございます」

 ふわりと満面の笑みを浮かべる最上君は、輝く笑顔を浮かべている。
 蓮、この笑顔を守るのはお前の役目だ。





 Side 椹


 仕事の合間を縫ってこのパーティーに参加させて貰って何年になるだろう。
 社長からパーティーの趣旨を聞いた時は、最上君の発想に驚きつつも感動したものだ。
 最上君と蓮が付き合う事になったと聞いた時は驚いた。日付が変わる瞬間にこのパーティー会場にいたのは初めてながらも、日付が変わった途端に、蓮が最上君に大輪のバラをプレゼントする姿に照れを覚えたが、それが毎年のパターンだと聞いた時は、本気で驚いた。今まで蓮と最上君が付き合う事にならなかったのが不思議だった。
 あんなに良い笑顔を浮かべている最上君が、何故、今まで蓮の気持ちを受け入れようとしなかったのだろう。
 疑問は多々あるが、今この瞬間の最上君の笑顔はとても幸せそうだ。
 この笑顔が続けば、最上君のこれからの活躍も大いに期待できるというものだ。

「最上君、誕生日、おめでとう」
「椹主任。ありがとうございます」





 Side だるまや女将


 クリスマス・イブは居酒屋のうちにとっては稼ぎ時ではあるんだけど、キョーコちゃんから招待を受けた時は行ってあげたいと思ったんだよね。
 うちの人はクリスマス・パーティーには興味のない人だけど、何でも感謝の為のパーティーだという事だし、社長さんから日付が変わったらキョーコちゃんの誕生日だからサプライズ・パーティーにする心算なんだという話を聞いて、うちの人は二つ返事で行く事を承諾したっけねぇ。
 初めての年には気付かなかったけど、翌年からは人気俳優の敦賀 蓮さんが、キョーコちゃんに好意を持っている事に気付いた。うちの人は気に入らないみたいだったけど、でも敦賀さんはキョーコちゃんを本当に大切にしているようだしねぇ。
 大輪のバラをプレゼントして、その後はみんなに囲まれて笑顔を浮かべているキョーコちゃんを、敦賀さんは嬉しそうに見守っているものねぇ。
 敦賀さんがキョーコちゃんを大切にしているのはその表情からも解るから、うちの人も納得せざるを得ないみたいで、仏頂面ながらも反対はしていないみたいだよ、最近は。
 キョーコちゃんが幸せになれるなら、相手が人気俳優だろうとそこらのサラリーマンだろうと構わないんだからね。

「キョーコちゃん、誕生日、おめでとう」
「大将、女将さん。ありがとうございます」

 可愛い笑顔を浮かべるキョーコちゃんが幸せそうで何よりだよ。うん。





 Side 蓮


 漸くキョーコに想いが通じて付き合い始めた初めてのクリスマス。
 俺にとってはクリスマスよりもキョーコの誕生日の方が大切なイベントだ。
 キョーコがマリアちゃんの為に始めた【ハッピー・グレイトフル・パーティー】は、マリアちゃんの誕生日パーティーからキョーコの誕生日パーティーに移行する。
 これは毎年の事になっている。
 世間の恋人達のようにクリスマス・イブに恋人と過ごすというのもロマンティックで、キョーコの好みだろうとは思う。
 けれどそれよりも、俺はキョーコに『クリスマスのついでではなく、キョーコの誕生日を祝う気持ち』に包まれて欲しい。
 幸い明日の午前中は社さんの計らいで仕事がオフになっている。
 パーティーが終わったら、キョーコと一緒に過ごす約束を取り付けてある。
 パーティーの後片付けは、スタッフがやるらしいから、キョーコは片付けたがるけど、他の人の仕事を取り上げたらいけないと言って連れ出せるだろう。
 いつものように、日付が変わる直前に届けて貰った用意しておいたバラをキョーコに差し出す。今年は琴南さんが妨害しようとする気配もなくて、マリアちゃんと社さんの仕事が減ったみたいだ。まぁ、今年だけかも知れないけど。
 パーティーがお開きになって、キョーコを連れ出すまで、キョーコが楽しい時間を過ごすのを、俺は見守っていたい。

「キョーコ、誕生日、おめでとう」
「ありがとうございます、蓮さん」

 はにかむ笑顔が可愛らしくて、人目がなければ抱き締めたいところだけど、流石にここでそれをするわけにはいかないからね。
 パーティーがお開きになったら、俺のマンションで過ごす約束だから、その時は遠慮なく抱き締めたい。
 今は、キョーコの誕生日を祝ってくれる人達にこの場を譲っておくよ。



  We wish your happy birthday!












 最上キョーコちゃん

 お誕生日おめでとう!