20年て、こんな一瞬で流れていくんか
この子達はついこの間まで
ランドセルを背負って店の前を登校してたぞ?

民家の少ない田舎道を
子供の少ない登校班で帰って行く
その後ろ姿が
小さくなるまでふじこは見送ってた




藤井酒販がここに出来て安心やわ

以前は播州織の綿畑だった場所に移転してから
近所のお母さんたちがよくそう言ってくれた

でもそれはふじこの台詞で
毎日、毎夕
通学路の子供たちの声や
前の畑で芋掘りをする保育園児たち
思春期で挨拶を照れる自転車の中学生に
ふじこが元気をもらってきた

落ち込んだ日も
体調が悪い時も
子供たちが(うちの子は通らない)

ばいばい
さようなら
おばちゃん今何時?

ふじこに話しかけてくるだけで
笑顔になれた
子供の力は底なしやと思う




見守って大きくなった子供たちは
18歳でみんないなくなる

大学も専門学校もない西脇では
実家通いできる進路が限られているから

この地で赤ちゃんを生み育てる母親のほとんどは
18年という期間限定で子育てをする

子供の未来のため
選択肢を増やすため
より良い人生を願う想いが
18年で離れる寂しさを超える

本当はもっと
ずっと長く
いや、せめてもう少しくらい
顔を見ていたい
ご飯を作ってやりたい

子供への母の本音を超えて
子供の可能性をココ以外に託す
それを、誰もが当たり前のようにしている




ふじこは
田舎のお母さん失格かもやけど
大学生の子供とも
社会人になった子供とももっと話しがしたいし
成人して大人になって髭が濃くなって老けても
その顔をもっと見ていたかった
みんなそうしてるって分かってても
うちもそうなるんやろなって勘付いてても
一人暮らしするマンションのドアを閉めても
じゃあね、鍵閉めるんよ!て
いつも通りにドアを閉めれてもそれでも
まだ往生際悪く
滝野社インター降りるまで
寂しくて泣きまくった

西脇のお母さん、18年でみんなこれやるんか
マジすげーって思った





美しく成長した子供たちを見て
おばちゃんのボンボンを髪飾りにしたい
その言葉から感じる故郷への想いに触れ

手を離すということでしか得られない
絆があるんやと感じられた
バランスを崩すことでしか前に進めない
大きな一歩やったんやと思えた

2年かかったけど
田舎のお母さん合格でもええかな🍀