こんにちは。深海ゆずはです。
こちパっ! SS書きましたー!
書き始める前に「こうなるかな……」と思っていたのと
全然違っていて。(笑)
うちの子は本当に自分勝手に動きまくるなぁと笑って
しまいました。
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【こちパっ!SS】
「おはようー! うわっ、何それ!?」
エンマの机の上に乗っている大量の小箱を見つけ、あたしは目を丸くする。
「知らねーよ。今朝学校に来たら、置いてあったんだ」
めんどくさそうにそう告げるエンマをじっと見つめ、あたしはハアっとため息をつく。
「エンマ。いい加減、人の弱みにつけ込んでゆする真似はやめなさいよね」
「あわれんだような目で見るな。それにゆすってねぇし」
「いやいや。これは『付け届け』ってやつでしょ!? 『これで勘弁してください』的な」
「はあっ!? こんなもんで勘弁するわけねーだろうが」
「ちょっと……。いいでしょうか」
ギャーギャー言い合っているあたしとエンマを見つめ、ひなこちゃんが手を挙げる。
「ふたりとも……わざと?」
「「へ?」」
きょとんと顔を見合わせるあたしたちに、ひなこちゃんがさらに大きなため息をつく。
「今日は2月14日なんですけど」
2月14日……と言うことは……。
「バレンタインかあああああああああああっ」
あたしの絶叫に、教室中の生徒達がいっせいに耳をふさぐ。
「うるせー!」(クラスメイト)
「すみませんー!」
うううっ。すみません。もともと声が大きいものでっ。
あたしはこめつきバッタのペコペコと頭を下げてから、改めてエンマの机の上の小箱を見つめる。
23、24、25……。
まだ朝のホームルーム前なのに……。とんでもないな!
「エンマさん、おさかんですね」
「ばっ!」
しみじみと呟くあたしの言葉に、エンマは赤くなり、隣にいたひなこちゃんは顔を引きつらせる。
「……ゆのちゃん。その日本語、激しく間違っている」
ひなこちゃんに本当の意味を耳打ちされ、恥ずかしさのあまり「ギャー!」と悲鳴をあげる。
真っ赤になっているあたしに向かい、エンマはチラッと視線を投げてから手を出した。
「オマエのは?」
あたしの? あたしの何だって?
「オマエは、オレサマに渡すもんがねーのかよ」
エンマに渡すもの……。
「あった! あった! あたりました!」
ポンと手を打ち、鞄の中をごそごそとあさる。
「ゆのちゃん、ちゃんと用意してきたんだ」
ダメっこが成長している! と言わんばかりに、ひなこちゃんが目頭を押さえる。
「台割り。ちょっと変ようと思って。どう思う?」
「……そう。そうだよね。そんなところよね」
ひなこちゃんは興味が失せたというように、あたしたちの側から離れていく。
「ひなこちゃん?」
去っていくひなこちゃんの背中を見つめていると、エンマの手があたしの手の中にあった台割りをひょいと取り上げる。
「……なるほどな。確かにこっちの方がバランスいいな」
「でしょ!」
満面の笑みをエンマに向けると、ポーカーフェイスのまま、エンマがあたしの手首をつかみ強引に引き寄せる。
「!」
いきなりエンマの整った顔がアップに迫る。
驚いて目を見開くと、エンマはニヤリと笑い、アッカンべーをする子供みたいに舌先を出す。
次の瞬間、生暖かい感触が唇の端をなぞり……。
「ーーあまっ」
そう発したエンマの言葉を聞いた瞬間、あたしは真っ赤になってしゃがみ込む。
「な……な……なに……した……の……ッ」
「何したって……。口の端にチョコがついてたからとってやったんだろ。ありがたく思え」
いやいやいやいやっ。
教えて頂いて大変ありがたいのですがっ。
が!
があああああああっ!
指摘するだけでいいじゃんっ。
……っていうか、なんでなめるのおおおおおおっ。
「チョコの代わりってことで、いーだろ」
「……用意してたのに」
「え?」
あたしの言葉が心底意外だったのか、エンマが驚いたように目を見開く。
「用意したって……」
「バレンタインのチョコレート!」
しゃがみ込んだままそう言うと、あたしはポケットからチョコレートを取り出し、エンマの手の平に置く。
「ーーマジか」と、エンマは絶句してから、それだけ呟く。
「マジですよ!……って聞いてるの!?」
顔を隠していたエンマの袖を引っ張ると、真っ赤な顔が現れて……。
あたしまでつられて赤くなる。
「……赤くなってんじゃねーよ」
「そっちが! そっちが先に赤くなったから! うつっただけだもん!」
あたしがムキになって言うと、エンマはあたしの目線までしゃがみ込む。
エンマが冷たい両手が、あたしの頬を包みこむ。
「サンキュー。すげー嬉しい……かも」
「もっと喜んでください。私とゆのさんで作った渾身の作ですよ」
「……銀野。いつのまに……」
背後で仁王立ちするしおりちゃんの姿を見つけ、エンマはギョッとしたように立ち上がる。
「ゆのさんに対する邪悪な気配したので、とんできたんです」
「邪悪じゃねーだろ」
「訂正します。邪(よこしま)な気配です」
「……」
「ちなみに私はもらいましたよ。ゆのさんが『親友』である、私のために手作りしたチョコレートを!」
「別に欲しかねーよ。コイツが一人で作ったら、怖くて食べられねーだろ」
はあっ!? エンマ、今、何て言ったああああっ!?
「おかしいですね。チョコレートをもらえて、とても嬉しいと仰っていたように聞こえましたが」
「あ・れ・はっ。このお子様イチゴパンツにも、よーやく人並みの気遣いができるようになったと感動しただけだ」
「ちょっと! お子様イチゴパンツって何よ!」
「見たまんまだろうが」
キー! なんつーことをおおおおおおっ。
「ってか、銀野も一緒に作ったのかよ」
「はい。ゆのさんが一緒に作ろうと誘ってくださって」
頬を赤らめるしおりちゃんに、エンマは微笑む。
「へー。銀野。良かったな」
エンマがまっすぐしおりちゃんの目を見てそう告げると、しおりちゃんは嬉しそうにうなずく。
「はい。親友と呪いのチョコレート作り。最高に幸せなひとときでした」
「……ちょっと待て」
うっとりと告げるしおりちゃんに向かい、エンマは顔を引きつらせる。
「おい、今『呪いのチョコレート』とか言わなかったか?」
確かに、今しおりちゃん、『呪い』って言ったような……。
「いやいや、それは違うって。日頃お世話になっている、パーティー編集部の皆やトウマ先輩たちに作ったんだから」
「そ……そうだよな。第一、呪われるようなことしてねーし」
「ゆのさんに近づく悪い毒虫以外は大丈夫です。毒虫はコロリといくかも知れませんがね。ふふ。ふふふふ」
「「……」」
しおりちゃん……。どこまで本気なの!?
ドキドキしながらしおりちゃんを盗み見ると、しおりちゃんはニコリと微笑む。
「エンマ、心配しなくて大丈夫! 呪いはしおりちゃんの軽いジョークだから」
「ふふふ。そうですよ。ジョークに決まっているじゃないですか」
しおりちゃんはエンマに向かい、ニタリと笑う。
エンマはあたしとしおりちゃんを交互に見つめたあと、
「ーーまずは黒崎に味見させるか」
と、つぶやくのだった。
【完】