幻想雪恋歌 2 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)



カインと雪花が…

初めて結ばれるシーンの撮影をした時――…。

俺の…俺の心は…

“カイン”ではいられなかった――…。


* * *

柔らかい君の唇からは甘いルージュの味…。

舌を絡.め合う熱い濃.厚なキスを…たどたどしくも必死に受け入れようとしてくれる姿が…とても愛おしくて――…。

全身がクラクラ…と眩暈のするような不思議な感覚に包まれていき…

そして…滑らかな君の美しい白い肌に…我を忘れて俺の“独占欲の証”を刻み込んだ――…。

愛おし過ぎて…夢中になって…その艶やかな肌の感触を確かめていくと…色気のある甘い吐.息が君の口から漏.れてきて…

俺の首に腕を回し潤んだ瞳で…愛おしくてどうにかなってしまいそうなくらいに 熱い眼差しで俺の瞳を見つめてくる君の姿に…

まるで…俺…“敦賀蓮”自身が君に愛されているような…そんな不思議な感覚を抱いた――…。

分かっている…これは“演技”である…と…。

だけど…後からどう考えてみても…本当に全てがそうであったようには…どうしても思えなくて――…。



…あの瞬間――…。

俺は漸く感じ取る事が出来たんだ…。

君が心の奥深くにしまい込んで必死に隠していた

本当の“最上キョーコ”の気持ちを―――…。



…愛してる…キョーコ――…。

この胸が…張り裂けてしまいそうなくらいに――…。

君の事が愛おしくて…切なくて…思わず涙が出そうになるんだ…。


もう何があっても絶対に離さない

君の中の秘めた情熱的な想いは…

しっかりと俺の“心”に届いたから―――…。






幻想雪恋歌 2 ~TRAGIC LOVE~

「……“Labyrinth(ラビリンス)~雪の華~”か――…。」

カインと雪花で映画への出演を知らされた翌日、俺はCMの撮影で横浜の海辺に来ていた。

昼間の撮影は順調に撮り終え、後は夜の海辺の撮影をする為にそれまでの休憩時間…人の少ない夕方の海辺をひとり歩いていく。

今朝に事務所で受け取ったばかりの まだ目を通していない真新しい映画の台本を手にしながら。

「……………………。」

「“Labyrinth”……迷宮…? どんなストーリーだろう…?」



また…カインと雪花で演技が出来るのか……。

…あの娘と一緒に――…。



遠くの海岸線の方をぼんやりと切なく見つめながら…今から一ヶ月程前に最上さんに告白したあの日の事を思い出し始めた。

貨物船が遠くの方で汽笛を鳴らしながら…ゆっくりと穏やかな青い海を進んでゆく――…。





「トラジックマーカー」の撮影が終了してからの約一年の間に、まるで蛹から蝶になったかのように…どんどんと美しく磨かれていく君に焦りを感じて…

もう…あのまま…告白せずにはいられなかった――…。

このどうしようもない程に…育ってしまった君への愛しい想いをありのままに…真っ直ぐ君に向けて話した。



ラブミー部である君に誤解をされないように

冗談だと思われないように…ゆっくりと丁寧に――…。



本当は…クオン・ヒズリとしての自分を取り戻し、ちゃんとケジメをつけられた上で…君に隠し事なく全てを告白をしようと…

そう心に決めていたのだけれど――…。

時折ふとした瞬間に寂しそうな…切ないような複雑な表情を見せるようになった君の事を…

どうしても…もうこれ以上放っておけなくて――…!!

思わず拳を力いっぱいに握り締めた。潮の香りを含んだ涼しい秋風が音を立てながら浜辺を通り過ぎていく。

自分の前髪がふわっ…と風になびいて切なく揺れる――…。




前に社長に呼ばれて…最上さんの過去の調査結果を聞かされていた所為でもある……。

社長も彼女と母親の関係を気にしていて…極秘で人を雇って調べていたらしい――…。

弁護士である最上さんの母親は仕事にとても忙しく…彼女は幼い頃から放置される事が多かった様だ…。

そして…不破の実家である旅館に預けられたままであり…偶に母親に会えた時すら家に連れて帰ろうとはしてもらえずに…

いつも幼い彼女は泣きながら

“いや…行かないで…!置いていかないで――…!!”

…そう必死に訴えていたらしい――…。

更に最上さんは…上京した後に唯一心の支えにしていた不破にも置いてかれていて…俺の胸はとても苦しくなった…。



彼女の…心の奥底には…深くて重い傷がある――…。

必死に孤独と戦っている君…。

人に迷惑を掛ける事を恐れて

誰にも素直に甘える事が出来ない君――…。



切ない想いのまま砂浜にそっと腰を下ろし…ゆっくりとそのまま瞳を閉じた。

爽やかで…心地の良い波音が耳に優しく響いて来る――…。




…ねぇ最上さん――…。

君が独りで抱え込んでいるものを…俺にも分けて…?

どんな事でも…俺が受け止めてあげるから――…。

俺を頼って たくさん甘えて…?

“甘える”という事を俺が教えてあげる――…。

甘やかしてあげたい…今まで出来なかった分までいっぱいに――…。




君の事を考えながら…暫くそのままゆったりした時間を過ごしていると…

いつの間にか海の水平線上に太陽が姿を隠し始め、美しく神秘的なオレンジ色に辺り一面が染まっていった。

かもめが鳴きながらキラキラと光る海上を数羽ずつ横切っていく――…。

「………………………。美しい…夕日だな――…。」



…こんな光景を見ていたら

グァムでコーンとして再び君に出会えた

あの日の事が脳裏に浮かんで来る――…。



今はまだ正体を話す事は出来ないけれど…

いつか…必ずちゃんと君にコーンの事も伝えるから――…。




「………………………。」

「それは…それでちょっと勇気がいるけどね……」

そう言うと…俺は自嘲の笑みを浮かべた。

あの時の俺は…正体を隠す為に彼女のメルヘン思考を最大限に利用して…君にたくさん嘘を付いてしまったから――…。

そして…優しい君の甘い唇の感触――…。




愛しくて純粋な君が…

俺の“過去の呪い”を解いてくれたから…

今の俺は輝ける未来に向かって

真っ直ぐと進んでいけるんだ――…。




だから今度は俺が…君の心の支えになりたい――…。

少しずつで…ゆっくりでもいいから…

どうか俺の熱い愛情を受け入れて――…?




「…必ず…いつか…彼女の心を掴んでみせる――…。」

決心したかのようにそう呟いた後、俺は「Labyrinth(ラビリンス)~雪の華~」の台本に目を通し始めた――…。





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