幻想雪恋歌 3 | The Lilies And Roses

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自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)




夜…眠る前に布団の上で台本を読み終えた時

気が付けば瞳から涙が溢れていた――…。

「………………………っ」

…何て……。

…何て…情熱的に愛し合う2人なの――…!!

そして…雪花のカイン兄さんへの恋心が…私の敦賀さんへの想いと…自然にシンクロする――…。



幻想雪恋歌 3 ~TRAGIC LOVE~

「…これを…私と…敦賀さんで演じるの――…?」

一度 読み終えた台本の気になったシーンのページをパラパラと捲り出した。

「そうそう…ここのシーン……」

最初は本当の兄妹だからって…宗教の影響もあってお互い想いを隠していた2人だけど…

その秘めた恋心を抑えられなくなった瞬間の――…!

「の…“濃.厚なキスシーン”――…!」



「……………………………………/////」

“濃.厚”って…一体どういう事を言うの……??!

最初に読んだ時にはそのお話の世界に完全に入り込んでしまって全く言葉の意味に疑問を持たなかったけれど……。

そして…更にその後に……!

“カインと雪花は情熱的な愛で漸くひとつに結ばれ…2人は明け方まで深く愛し合う――…。”っていう…

「…ベッドシーン――…。」

ここのシーン…細かいセリフや動きなど描かれていないけれど…
それはアドリブでっていう事になるの…?

「………………………。」

「………………………ど…どう…しよう……/////」

しかも一回だけじゃない…のよね…そういうシーン……。

顔が真っ赤になり…恥ずかしくて思わず布団の中に潜り込んだ。自分の心臓の鼓動が激しく鳴っているのが聞こえて来る。




まだベッドシーンどころか…キスシーンだって演じた事 一度も無いのに……。

…コーンには演技でキスをしたけれど…本番ではなかったし

どう演じたらいいのか全く何も分かるわけないじゃない……!!

しかも それを……敦賀さんとするの――…?

…私が――…?




ホテルで2人暮らししていた頃…“独占欲の証”を刻み込んだあの夜の事を思い出してしまった。

逞しくて…とてもセクシーな敦賀さんの身体――…。

あの時は…セツカが兄さんのおでこにそっとキスをして…首に“独占欲の証”を刻み込んで終わったけれど……。

今度は…そこからキスをして…ベッドシーンスタートなの……??

「…どうしよう…本当に……!どうすればいいの…私――…?」

しかも…映画のストーリーの中で一番 重要なシーンだわ…これが……!




「…………………………。」

「…このシーンが…ちゃんと演じられなければ……この映画は…失敗作になってしまう……!」

…社長さん……。

どうして今回は勝手にオファー承諾しちゃったんですか……?

今の私に出来る役なのか…ちゃんと考える時間が欲しかったですよ――…!!


布団から真っ赤に染まったままの顔を少しだけ出し深いため息をついた後、私は天井の木目をぼんやりと見つめた。

「…………………………………。」

取りあえず…明日にでも モー子さんに相談してみよう……。

この前モー子さん恋愛ドラマに出演して…激しくはないけれど少しそれっぽいシーンも演じてたし……。






それと…これからは歌の練習も必要だわ……。

今回の映画はパンクバンドの話だから――…。

「…セツがヴォーカルで…カイン兄さんがギターなのよね……。」

そして…兄さん自身の歌声も凄く美声なのだけど…それは“セツだけのモノ”で…彼はセツの前だけでしか歌わない。



甘い…カイン兄さんの美声が聴けるのは

この世で “雪花” ただ ひとりだけ――…。



敦賀さんの歌声って…聴いた事ないけれど…どんな感じなのかしら…?

普段の声が甘くて低い美声だから…きっと歌声もそうなのよね……。

「………………………。」

「……ふ…ふふふ…っ////」

あの人の歌声を想像してみるだけで…何だか動悸が激しくなっちゃいそうだわ……。

私…特に敦賀さんの“声”が好きかも――…。

そっと瞳を閉じていると昔にカインが雪花を抱き締めながら…耳元で甘い言葉を囁いた時の事が脳裏に鮮明に浮かんで来た。


…どうしよう…私////

あの時よりも…ずっと…ずっと敦賀さんの事が好きになってる――…。



………好き…。

好きです…敦賀さん――…。

どうしようもない程に…貴方の事が……。

だから…どうかずっと傍に居させて下さい――…。



いつ捨てられるか分からない

不安定な“恋人”なんていうモノではなくて

ずっと安定している“後輩”のままで――…。





* * *





「ん…?ケータイ鳴ってる…?」

枕を抱き締めて自分の世界に入り込んでしまっていたらしい私は、その音で我に返った。

「……?もう深夜なのに…誰かしら…椹さん…?」

もそもそと布団から出て携帯の画面を覗いてみると…そこには密かに想いを寄せている先輩の名前が表示されていた。

「…え…ええぇぇえーー?!つつつ敦賀さん?!」

「…………っ なっ…何てタイムリーな相手なの……!!」


落ち着くのよキョーコ…取りあえず深呼吸…!!

自然に…!

いつも通りに接するのよ…!



この秘めた恋心が彼に伝わってしまったら

今のベストな関係は崩れ去ってしまうのだから……!!



ドキドキ止まらない胸に手を置いて大きく深呼吸をした後に、私は携帯の通話ボタンを押した。

「はい…もしもし…最上です…」

『…あ…最上さん、起きてた…?ごめんね夜遅くに…』

「いえいえ…はい…まだ起きていましたから…大丈夫ですよ」

『そう…?それなら良かった――…。』



あ…本当に敦賀さんの声だわ――…。

低くて…男らしい美声で……。

もう…さっきまで貴方の事を考えていたから…何だか動悸が……////




『……もしもし…最上さん…? 聞こえてる…?』

「はへ?! …あっ…はいっ…すみません/////」

『…新しい映画の話なんだけど…最上さんは台本もう読んだかな…?』

自分の身体が一瞬ビクっと動揺で震えたのを感じた。心臓の鼓動がどんどんと速まっていく――…。

「……あ…はい…さっき読み終えた所です」

『そうなんだ…。で…どう?役は…掴めてる?っていうか…それは雪花だからもう基本は問題無いのかな』

「え…と…あの…」

どうしよう…例のラブシーンの事…今…聞かれたら――…!!

『…一週間後だろう…?顔合わせ。三日後…月曜の夜…空いてる?久し振りにご飯作りに来てくれないかな…?』

「…………はい…?」

『共演するに当たって…一回それまでに会って色々と話が出来たらいいかな…と思って。バンドの練習もこれから必要になるし。』

「あ…はい…そうですね」

『もし出来たら…その時にカインとセツカの役の感覚も戻しておきたいんだけど…』

「敦賀さん家で…演技の練習…ですか――…?」

『うん。俺…月曜の夕方 テンさんに“カイン用”に髪を染めてもらうし…
その時ついでに雪花用の衣装も少しなら受け取れるなって思って』



…どうしよう……どうすればいいの…?


貴方に

会いたいけれど 会いたくない


逃げ出したいけれど

逃げ出す訳にもいかない――…。



「あ…はい…そうですね…。雪花になるのは久し振りなので…私も演技練習が出来たら嬉しいです…。ありがとうございます…。」

『いや…こちらこそありがとう…。それに…俺が…君に会いたくて……。』

「………え…っ?」

…やだ…やめて……。そんな事言われたら…私の心が乱れてしまうじゃないですか――…。

『…本当だよ……。会いたい。本音を言うなら…今すぐにでも車を飛ばして…君に会いに行きたい……。』

「………………………!」

…うそ…。涙が出てしまいそう……。ダメ…今泣いちゃ……。

『…ごめんね…困らせてしまったね…。それじゃあ…月曜の夜に事務所の地下駐車場で。また時間はその時に連絡するから。』

「………………………っ」

「…あ…はい…。分かりました。…それでは失礼します……。」

『今日は…君の声が聞けて嬉しかった…。ごめんね夜分遅くに……。おやすみ最上さん…。』

「………………………。おやすみなさい」



* * *



どうしよう…涙が――…。

“会いたい”って言ってくれた事が嬉しくて

思わず“私もです”って…そう応えてしまいそうになってしまった……。

「………………………っ」

どうして…こんなに…心が乱されるの…?

しっかり…しっかりしないと

あの人の前で…本当の感情が表に出てしまいそうになる――…。




ラブシーンの問題も考えないといけないし

この先一体どうなっていくの……?

私……?

不安だらけで…先の事が…全く想像出来ない――…。





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