ウダルチ隊長に任命されて
元より戻る
新しい王に仕えよと勅命を受けた

はたして いかほどの王であろうか

都は一部の臣下に牛耳られ 短い間に元によって
なんども 王がすげ替えられている

なにを信じてよいのか なにが信じられるのか
もはや民にはわかるまい
その日を暮らす食いぶちになんとかありつけるよう
その日の寝床が確保できるようにと
民の願いはその程度
民は政治にも王にも関心などあるまい

我が身かわいさに保身にはしり
特権を利して私腹を肥やす臣下どもに
期待しろと言うほうが馬鹿だ

所詮 弱きものは踏みにじられ 強きものが得をする
搾取される側と搾取する側で成り立つ世の中の
なんと不条理であることよ

某には もはや命をかける信義など存在しない


兵舎で 幾夜も眠りこけた
眠っていても 雑音は届く

やつらはまだまだ使えない兵
駒として消されるのはあまりに酷い
せめて我が身を守れるくらいには鍛えてやらねばならぬ
新王を迎えるために 命を賭すなど無駄なこと


あまりに静かな夜で わずかばかりの虫の羽音が聞こえるのみ

皆は呑みにでも出かけたのであろうか


******


うつらうつらしたヨンの前に
緋色の髪をした女人がいた

萌黄色の壁紙に囲まれた女人は椅子と言うにはあまりに
柔らかなものに腰を掛け赤い液体を手にしている
初めて目にする風景に これは夢か?幻か?といぶかった

高麗では見かけたこともない緋色の髪が澄んだ肌に似合うている
髪の色と同じくらい紅い唇は何かを言いたげに潤んでいる

あれは天女であろうか
いよいよ自分にも彼方の世へと迎えが来たのかも知れぬ


寝ているようにも思えた女人が
ぼそりとつぶやいた

   其処にいる?

誰にむけて放った言の葉なのか
言の葉は宙を舞い
所在なげに女人は肩を竦めた
その栗色の大きなまなじりから一雫涙が伝う

ヨンは これ以上見ていたら息苦しさが増していくようだった

手を伸ばしたが触れることは叶わない
やはりこれは夢幻であろう


不思議なお方だ

一時 この腕に抱きしめて女人の涙を拭うことができたら
どんなにか心が満たされるであろうか

そんな欲を抱かせる

女人の美しいまなじりの奥の底知れぬ淋しさが
自分のそれと重なり
ヨンは心のなかでそっと女人を抱きしめた

   

  某は此処におります・・・







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ヨンに会いたい 秋の夜です・・・
今日よりも明日もっと 良い一日になりますように

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