チェ家の次女

チェ・ユニョンは難しい顔で

世間では魔鏡と言われている

小さな手鏡を覗き込んで

自分の姿を見つめていた

 

この手鏡は母のウンスが

天界から

この国へやって来たときに

持っていたもので

銅鏡と違って

ありのままの姿を映し出す

 

母がこの手鏡を見ているとき

隣で眺めていたら

もう一人

母親がそこにいるんじゃ

ないかと思うくらい

そっくりの姿で鏡に映っていた

だから

この手鏡は正しく映ると

わかっている

 

 

あぁあ〜

やっぱり似合わないなぁ

どうしてスニョンみたいな

綺麗な髪の色に

生まれなかったのかしら

 

 

ユニョンは何度目かの

小さなため息をついた

 

 

そのようなことは

ございません

とても素敵ですよ

ユニョンお嬢様

 

 

子守のクリムが

とりなすように言っても

ユニョン本人が

満足していないのだから

慰めになっていない

 

 

だいたい

なんで朝からそんなに

めかし込んでいるの?

宴までまだ時間があるのに

 

 

スニョンは寝巻き姿のまま

ぼんやりと妹を見て

やれやれとした顔で言った

 

 

だって

イサは朝早いでしょう?

イサに見せたいの

このいただいた衣

とってもステキだから

一番に見せたいのに

なのに・・・

ユニョン

似合わない・・・の・・・

 

 

しょんぼり答える妹に

呆れ顔でスニョンは言った

 

 

ほら

ユニョンのイサひいきが

始まったわ

そんなこと言ったら

アッパがすねるわよ

それで

イサに意地悪しちゃう

かもよ〜

 

 

そんなこと

アッパはしないもん

それにアッパはもう王宮

でしょう?

 

 

ユニョンは確認するように

クリムに尋ねると

クリムは大きく頷いた

 

 

三つ子の誕生祝いにと

王宮の針房のホン尚宮から

揃いの緋色の美しい

チマチョゴリが届いていた

もう一人の主役サンには

青色のパジチョゴリで

どちらも上等な絹織物で

仕立てられている

豪華な絹織物の見立ては

多分 

チェ家に肩入れしている

大妃様だろう

 

それはそれは

美しい仕上がりの衣で

娘達は大喜びだったのだが

ふとユニョンは

自分の髪の色と衣の色が

合わないことに気がついた

それで朝から

ずっとため息混じりなのだ

 

 

スニョンのような

黒だったら

この衣がきれいに見える

だろうなぁ

 

 

そうかしら?

わたしはユニョンのような

赤みがかった髪の色の方が

この衣には にあうと

思うけどなぁ

 

 

スニョンは小さい頃から

お絵描きが上手で

色彩感覚にも優れている

そのスニョンが言うのだから

そうなのかしら?と

ユニョンが思い始めたとき

弟のサンとゴンがやって来た

 

 

ユニョン

まっかっかだね〜

火事みたい

 

 

この弟の思わぬ一言に

姉のスニョンは頭を抱えた

どうしていつもこの子は

間が悪いのだろう

いらん一言を言ってしまう

のだろう

 

サンにしてみれば

緋色の衣は珍しい色で

素直な感想だったのかも

しれないが

例え方が少々まずかった

もちろん

赤みがかったユニョンの髪を

バカにしたことなど

一度もないが

髪の色を

気にしているユニョンとって

トドメとなるような

サンの言葉だった

 

 

もういいっ!

どうせ

にあわないもん

サンのばか!

 

 

ユニョンは部屋を

飛び出した

サンはユニョンに怒られ

あっけにとられたままだ

 

隣の閨で宴の作業をしながら

子供達の話に聞き耳を

立てていたウンスは

苦笑しながら

傷ついたユニョンの後を

追いかけようと

閨の扉をそおっと開けた

 

 

まったく

困ったものねぇ

小さくても女は女

でもサンに女心をわかれ

と言う方が無理だわ

 

 

大晦日

誕生日の朝から

子供達のドタバタ劇

だが

そんな賑やかな暮らしを

ウンスは大事に思えた

 

 

なんでさぁ

なんでユニョン

おこったのさ???

サン ほめたのに?

 

 

廊下に出て来て

ふくれっつらのサンの頭を

よしよしと撫でながら

いやいやいや

あれは褒めてはいないわよ

と ウンスは

心の中で独りごちる

 

 

サン

ユニョンに限らず

誰かの容姿について

不用意な言葉は

言っちゃダメなのよ

サンにとっては

なんでもないことでも

相手にとって

言われたくない言葉

って場合もあるんだから

 

 

そうなの?

 

 

ええ そうよ

サンも六歳なんだから

もう少し

分別を持たなくちゃ

六歳は五歳と違って

大人なのよ

 

 

おとなぁ〜〜〜

サン?おとなぁ?

 

 

サンは

ぽおっとした顔で

嬉しそうに繰り返している

 

サンによくよく言い含めてから

ユニョンの影を追ったウンスは

はたと足を止めた

 

部屋の角を曲がったところの

廊下でユニョンはイサと

出会い頭にぶつかったようで

イサが かがみこんで

ユニョンの顔を

のぞいていたのだ

 

 

ここはイサに任せようかな

あの人が見たら

卒倒しそうな場面だけど

ユニョンがイサ贔屓なんだもの

イサは悪くないわよね

 

 

ウンスは静かに

踵を返した

 

 

みないで!

 

 

どうした?姫?

見ないでって?何を?

 

 

ユニョンのことよ

 

 

へ?

 

 

だってサンが

サンが

 

 

また兄弟喧嘩か?

せっかくの誕生日なのに

困った二人だなぁ

 

 

ケンカじゃないわよ

サンにいわれたの

ユニョン 火事みたいって

イサも思うでしょう?

この衣には

黒い方がいいよね?

 

 

あああ

そう言うことか

 

 

聡いイサは言葉足らずの

ユニョンの気持ちを理解し

微笑んだ

 

 

ユニョン姫は

ユ先生の髪の色が

嫌いかい?

オレは先生の髪の色

とても綺麗だと思うよ

それで先生の色に似ている

姫の髪の色も

とても好きだな

この晴れ着に姫の髪の色

とてもいいと思うけど?

姫はそれが気に入らないのか

 

 

う〜〜〜ん

 

 

もしかして

姫はスニョンちゃんと

自分を比べているのか?

誰かと自分を比べても

答えは出ないよ

スニョンちゃんには

スニョンちゃんの良さがあり

姫には姫の良さがある

スニョンちゃんのいいところを

手本にするのはいいよ

だけど羨むのは違うだろ?

 

 

そうだね・・・イサ・・・

ユニョン

オンマの髪の毛大好きよ

ふわふわして

ツルツルして

さわると気持ちいいもの

 

 

そっか そっか

 

 

ねえ イサ?

 

 

ん?

 

 

ユニョンの色

好きってほんと?

 

 

え?あっ 

ああ うん

 

 

言質を

取られた格好になって

イサはしどろもどろに

返事をした

 

 

よかったぁ

あのね

ユニョン 

イサに一番に

見せたかったんだぁ

キレイにして

見せたかったのに

サンが

よけいなこと

言うんだもん

でもイサがすきな色なら

いいんだ

ユニョンも好きになるね

自分のこと

 

 

ユニョンはイサに

ぴょんと飛びついて

嬉しそうに笑った

 

 

自分のことを好きになる

か・・・

 

 

イサはふうっと息を吐いた

倭国にいた頃の自分は

自分が嫌いだった

ここに来たばかりの頃も

自分を責めてばかりで

好きではなかった

 

 

オレも自分のこと

好きにならなきゃな

 

 

あら?イサはいいわよ

 

 

え?

 

 

イサが自分のこと

好きじゃなくても

ユニョンがそのぶん

い〜〜〜っぱい

好きでいてあげるもん

 

 

目の前の

小さな淑女の一言が

あまりい愛しすぎて

イサは

その艶やかな髪の毛を

そっと

撫でずにはいられなかった

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

一緒に過ごそう

楽しい日も 悲しい日も

嬉しい日も 辛い日も

一緒なら強くいられるから

 

姫たちの晴れ着イメージ

こちらアップは先日 大阪鶴橋の

韓国雑貨のお店KOKOREAさんで

購入したカードの中の一枚です

チマチョゴリやパジチョゴリ

可愛い韓服のカードについつい

手が伸びてしまいます

 

 

おせち門松お年玉鏡餅絵馬おせち

 

 

大晦日もお付き合い頂き

ありがとうございます

 

六歳の幼な子は

もう立派なレディ

おしゃまな乙女ですね

 

もう一話

夜に更新できたらいいのだけど

できなかったときのために

ご挨拶を・・・

 

今年もありがとうございました

良いお年をお迎え下さい

 

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