ちょうど巫女のハッケミが

屋敷の前庭で祈祷の舞を

披露していた時だった

 

ガヤガヤと正門の前に

人が集まっていることに

長男のタンが気づいた

母ウンスの袖を引っ張り

 

 

オンマ

誰か来たよ

 

 

と伝えたが

ウンスは今は祈祷中だから

ちょっと待ってね

と言うばかり

じっと祈祷を見つめている

 

子供達の誕生日に合わせて

年に三回

ふらっと現れる巫女は

相変わらず

黄色いへんてこりんな

衣を身にまとい

髪を振り乱して

くるくると地面を回っている

この舞のような

踊りのようなものに

夢中なのは次男坊のサンで

前回みたいにくるくると

足取りを真似をして

ユニョンに叱られた

 

 

ハッケミサンの祈祷は

風変わりすぎるって

揶揄する人もいるけど

私はそんなことないと思う

だっておかげで子供達は

今まで大きな病気も怪我もせず

こうして大きくなっているもの

 

 

ウンスは隣にいるヘジャに

ささやいた

残念ながら夫のチェヨンは

本日

とっとと行って

さっさと帰ってくるために

早朝出仕で

祈祷の時は留守にしていた

だが

他の家族や使用人が

見守る中

祈祷は滞りなく行われ

最後に

えいヤァ!

と 気合が注入され

ハッケミはどこかへ消えた

 

 

あら みんな

来てくれたの?

今日は大晦日で

王宮も忙しいでしょうに

 

 

ウンスは子供達を引き連れ

ようやく正門へ向かって

来客に微笑んだ

そこにいたのは

養成所の女医見習いと卒業生

それに武閣氏の面々で

三つ子の祝いにと

駆けつけてくれたのだ

 

 

お子様たちのお祝いに

と思って・・・

王宮は今宵は遅くまで

行事が続きますから

朝のうちにと参りました

お忙しい時間にすみません

これ 宴の折にでも

召し上がってくださいませ

 

 

武閣氏のエンは頭を下げ

餡のぎっしり詰まった

天界で言うところの

今川焼きをウンスに手渡した

モミは藁で長靴を編んで来た

と言って三人にそれぞれ

渡すことができ

カウンはタンの時にも

作った草木染めの手ぬぐいを

色違いで持って来ていたし

ヒョナは首巻きとリンゴを

大事そうに抱えて来ていたし

クウォルは棗の苗木を渡した

 

 

サン様

水やりをがんばってくださいね

きっと

たくさんの実をつけますよ

 

 

なんだか

サン おさぼりしそうね

 

 

ユニョンがからかうと

サンは真っ赤な顔で言い返した

 

 

ぜ〜〜〜〜ったい

わすれないもん

 

 

武閣氏たちの心のこもった

ソンムルの数々を

誕生日の子供達は

嬉しそうに受け取った

 

そして

その後ろに控えていたのは

養成所虹の関係者達で

今は典医寺の女医として

毎日悪戦苦闘中のトワは

毛皮の上掛け(毛布)を

持参して来ていた

 

 

初めていただいた碌で

用意したんです

どうぞ使ってください

 

 

女人が自分で稼ぐことの

喜びに目覚めたようで

トワは満面の笑みで言った

同じく卒業生のショウは

これまた自分の給金で買ったと

嬉しそうにソンムルを

取り出した

それは白帽子(ナンパウィ)で

可愛い刺繍が施されている

 

 

二人がしっかり

働いてくれていて

嬉しいわ

これで高麗も安泰ね

 

 

ウンスが褒めると

二人は照れ臭そうに

顔を見合わせ笑った

 

 

あのぅ

私たちもいますよ〜

 

 

三期生のミジャは

ボソッと言って

餅菓子を買い求めて来たと

タンとサンを喜ばせた

二期生の寮長サユナは

ソダンでも使えるようにと

手作りの大きな袋

そして忙しくて

一緒に来られなかったと言う

寮母ホン・ソアの預かりものの

手袋を渡した

 

 

ここには来られなかったけど

来る途中 上護軍に

偶然お会いできたんです

ソア様ったら 上護軍様に

お祝いを申し上げてましたわ

 

 

まあ そうだったの

 

 

それを言うなら

私だって〜

 

 

目を輝かせて

話し始めたのは

三期生のネイルだ

 

 

上護軍様に

お話したのよ

医仙様が目標ですって

全力で患者の命を

救いたいから一生懸命

学んでいますって

そしたら微笑まれて〜〜〜

キャァあああ〜

 

 

医仙様 騒がしくって

ごめんなさい

ネイルったら

ずっとこの調子なんです

上護軍様にお話をできたこと

嬉しすぎると言って

 

 

三期生のエ・ミリは

ウンスに言い訳

彼女はお祝いにと

コッシン(女性用の靴)と

カプシン(男性用の靴)を

持参していた

 

 

ネイルも早く 

ソンムルをお渡ししなさいよ

 

 

同じ三期生のナオに促され 

栗のお菓子をスニョンに

手渡す

 

 

で 私からは

こちらを!

 

 

今度はナオは意気揚々と

焼き物を取り出した

 

 

作るの頑張ったんですよ

チェヨン様の像

かっこよくできている

でしょう?

 

 

おお これはすごい

さすがだわ

 

 

その着眼点に

他の者たちも拍手喝采

三期生のイ・ジュナは

その盛り上がりに

困りながら言った

 

 

焼き物の後で

あれなんですけど・・・

私からは綺麗なお菓子を

差し上げます

お子様たちの未来に

たくさんの夢を見て欲しいなって

思って・・・ほら

一粒口に入れると

甘くて優しい気持ちに

なりますよ〜

もちろんタン様にも

ご用意いたしました

 

 

あああ 困ったわ

私 ナオやジュナのように

素敵なソンムルじゃ

ないかも

でも 

この貝殻も綺麗でしょう?

それにお魚 

栄養がありますよ

 

 

レイありがとう

うふふ

みんなの心のこもった

ソンムルですもの

どの品も嬉しいわ

忙しいところをありがとう

 

 

ええっっとあのぅ

あたしからは・・・

おめでとうの言葉

だけなんです

ごめんなさい

忙しくって何にも

用意できなくて・・・

でもお祝いしたい気持ちは

本物です

お子様たちお誕生日

本当におめでとうございます

 

 

妻であり母親でもある

三期生のリョウが

三つ子に優しく語りかけた

 

 

ありがとう

ユニョンは

そのお気持ち

とってもうれしいです

 

 

にっこり笑った

ユニョンの顔が

ウンスには

少し大人びて見えた

 

 

ーーーーーーー

 

 

疲れておらぬか?

 

 

いつも妻を気遣う

優しい夫のチェヨンは

ウンスのこめかみに

口づけしながら

優しく尋ねた

 

 

ええ

楽しいことは

疲れないのよ

だけどさすがに

子供達は

はしゃぎすぎたかな?

 

 

年末の三つ子の誕生日の夜は

家族だけで過ごすことが多い

王宮の行事が控えてる

関係でもあるが

今年もなんとなくそんな流れ

だが それはそれで

ゆっくりとした祝いができた

 

 

朝にはわざわざ

養成所の学生さんたちや

ムガクシのお姉さんたちが

来てくれたり

昼には

ご近所さんが来てくれたり

患者さんがお祝い持って

来てくれたりしたのよ

診療所のみんなも

お祝いしてくれたわ

モグァは柚子茶や花梨茶を

届けてくれたし

オルからもお祝いの言葉を

 

 

そういえば

養成所の学生だと名乗る

女人たちに声をかけられた

それに

寮母のホン・ソア殿にも

 

 

ええ そうみたいね

相変わらずモテモテで

妬けちゃう

 

 

妬いてくれるのか

それは喜ばしいことだ

 

 

チェヨンは笑って

ウンスをぎゅっと

引き寄せた

閨での夫婦の気の交わりが

明日への力になっているのは

間違いないが

何気ない妻との会話も

もちろん愛しくて仕方ない

 

 

それで子供らは

患者さんたちから

何をもらったのだ?

 

 

えっと

ユキさんからは

綺麗な紙をいただいたの

彼女美容にも興味があって

熱心なのよ

キートスさんからは紙風船

それでそれらを飾りつけに

使ったってわけ

キョンスさんからは大小の筆

それにご近所のマルさんは

菊の刺繍入りの手ぬぐいを

持って来てくれたし

キクさんからは「かるた」を

いただいたの 

どうやら倭国のものみたい

 

 

そうか

それはいいな

 

 

それから・・・

最近越して来た

料理研究家?のファデさんが

チーズ(蘇)を作ってくれたの

チーズよ!びっくりしたわ

あとポクスンァさんと

ラピスさんが

おめでとうって言ってくれたし

メイさんからは硯と筆

チョンニョンさんから

手作りの髪飾りと

彫りの入った木刀をいただいて

ムムさんからは

手作りのチュモニ

(巾着)でしょう

カツさんからは髪飾りと

色違いのハチマキ

タンの分もあったのよ

鍛冶屋の奥さんの菊さんは

いろんな色の鞘柄の小刀

もちろんお手製ですって〜

それにトモさんからは

ソダンに行くときに使って

くださいって素敵な袋を

 

 

ほお 

チーズに袋に髪飾りに木刀に

硯やお手製の剣か・・・

すごいな

 

 

うん 

どれもこれも

みんなの心がこもっていて

子供達も喜んでいた

 

 

そうか

色々もらったのだな

 

 

ええ そうなの

でも高価なものや

賄賂になるような類のものは

ないから 安心して

真心をいただいたのよ

 

 

わかっておる

 

 

ああ

そうそう あとね

ミホが来てくれたのよ!

針房の修行も年末年始は

お休みなんですって〜

「あたしが作った学用品入れを

使ってくれたら嬉しいな」って

言ってたけど

タンが再会を喜んでねぇ

ほら 育児園の頃

仲良しだったでしょう

二人とも大きくなったわよね

ミホは本当にしっかりして

母親のミヒャンも

安心でしょうね

 

 

そうかそうか

イムジャと関わりのある

人々が多く来てくれたのか

いい日であったな

 

 

チェヨンは嬉しそうに

笑った

 

 

ええ

サン達のソダンの友達も

顔を出してくれたんだけど

サンのチングのショウちゃんは

ヨンに憧れているんですって

いつかヨンみたいな武士に

なりたいって言ってた

 

 

ウダルチは縁故では入れぬ

実力主義ゆえ

其の者の頑張り次第だな

待っておると伝えてくれ

 

 

わかった

喜ぶわ

ヨンからの励ましだもの

それからタンの学友の

チョコマルちゃん

守り刀をいただいちゃった

それに

ノビちゃんの親御さんから

栗羊羹が届いたし・・・

 

 

ウンスは大きなあくび

その姿にチェヨンは

目を細めた

安心しきっている妻の姿は

何よりかわいい

 

 

なんだか

眠くなって来たかも

もうすぐ新年ね・・・

あと・・・

市場のみんなも・・・

色々・・・

 

 

ウンスは

チェヨンに言った

 

 

貸本屋のテルさんは

硯箱でしょう

で ユンさんは

いつものようにヘジャに

筆を預けてくれたって言ってた

ヘジャもいいチングを

持っているわよね?

あと 

ホットク屋のアジュンマが

野菜嫌いのサンにも

食べれるようにって

「野菜たっぷりのチヂミを

持って来ました〜」って

届けてくれたのよ

 

 

そうか

わかった

イムジャ

またその話はまた

明日改めて聞くとしよう

そろそろ

年が明けるぞ

今年も良い年であったな

子供達の成長も健やかで

何よりウンスが

俺のそばにいてくれる

俺はそれだけで幸せ・・・

ん?

おいおい

もう寝たのか?

しょうがないな・・・

ゆっくり休め

イムジャ

 

 

チェヨンは夢の中に

向かった妻に

布団をかけ直すと

そのおでこにちゅっと

音を立てて口づけ

微笑んだ

 

来年も良い年で

ありますように・・・

そんな願いを込めながら

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

今年もお世話になりました

お話におつきあい

ありがとうございました

来年もまた

よろしくお願いします

 

 

 

 

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多くのアメンバーの皆様に

お話にご出演頂きました

 

企画にご参加の皆さん

ありがとうございました

もう少しソンムルを

残しておりますので

お楽しみに〜

 

年内になんとか

更新できました

良いお年をお迎え下さい