新しい暮らしには

もう慣れましたか?

妾に力添えできることが

あれば

何なりと言うてくだされ

 

 

百年前に飛ばされて

ようやく戻って来たこの時代で

温かく迎えてくれたのは

ウンスを姉のように慕う王妃様

相変わらず 気高く美しく

そして愛らしい姿にホッとする

 

 

ありがとうございます

王妃様

久しぶりにこちらへ戻って

何だか懐かしさと

落ち着かなさとで・・・

 

 

そうであろう

四年の月日は

長くありましたのぅ

なれど 私は医仙が

戻られると

信じておりましたぞ

 

 

王妃様は笑みをたたえて

ウンスに言った

 

 

ところで

テホグン(大護軍)の

屋敷の住み心地はどうじゃ?

 

 

ええ おかげさまで

快適です

お風呂がちょっと狭いかなぁ

でも まあ毎日

入れるだけマシってことで

満足していますわ

 

 

あとで知ったことだが

チェヨンはわざと

狭い湯殿にこだわったらしい

ウンスとくっついて

入れるようにとの下心だろう

 

 

それはよっかった

息災に暮らされるように

妾も願っておりますぞ

ところで 医仙

いえ 姉様・・・

貿易商人から珍しいものが

王家に献上されたのじゃ

何かわかるか?

天界にもこのような

摩訶不思議なものが

あるのであろうか?

チェ尚宮

あれを持って来てくれぬか

 

 

はい 王妃様

 

 

甘い香りが王妃様の部屋に

ぷうんと広がって

ウンスは卓の上に置かれた

物体をまじまじと見た

 

 

ええ?これは!

カカオじゃないですか!

まさかこの国で出会えるとは

思ってもみなかったわ

ああ でもカカオの歴史は

五千年前からあるって言うし

ここにあっても

おかしくないのかしら?

 

 

ほお 存じておるのか?

さすが天界のお方じゃ

なにやら西洋では

これを煮出して

飲むらしいのじゃが

とても苦くて

飲めたものではないぞ

よもやこれは生薬か?

 

 

ああああ

商人さんは飲み方を

ちゃんと

教えてくれなかったのですね

ええっと〜

煮出してそのままじゃなくて

牛乳と砂糖を加えて

甘くして飲むと

美味しんですよ

疲れにもよく効きますし

脳の栄養にもなるんですよ

 

 

のお?

 

 

ええ 頭の・・・

うふふ

そういえばカカオは

媚薬効果もあるって

聞いたことがあるわね

 

 

なんと!

そうなのですか?

 

 

王妃様は身を乗り出して

ウンスに聞いた

 

 

それにカカオを摂取すると

エンドルフィンっていう

幸せホルモンも

分泌されるですよ

だからチュコレートを食べると

なんだかホッとするって言うか

甘い気持ちになるんです

 

 

ほほう

なんとも

頬か熱うなるような

効能なのじゃのぅ

 

 

そうなんです

だから天界では

2月14日に好きな男の子に

このカカオを使ったお菓子・・・

チョコレートっていうのを

贈る習慣があるんです

それで愛の告白をするの

 

 

愛を・・・

ほおおお

女人から懸想相手に告白?

それはまたなんとも

大胆な・・・

 

 

天界ではよくある話で・・・

ああ〜懐かしいなぁ

私も学生時代

好きな人にチョコレートを

渡したなぁ〜

告白して

振られて泣いたこともあったし

思いが通じて付き合うことに

なった

なんてこともあったし・・・

今ではいい思い出だけど・・・

そうそう天界では

友チョコ 義理チョコ

それに自分へのご褒美チョコ

なんてものあってですね〜

 

 

そこまで話して

ウンスは急に全身に

悪寒が走った

 

 

なんだか

ゾクゾクする

冷たい視線を感じるのは

どおしてかしら?

 

 

首を傾げていると

チェ尚宮が

部屋の扉を指差し

ぼそりと耳打ちをした

 

 

ウンスや

あの腑抜けが表におる

ヨンァ

立ち聞きとは趣味が悪いぞ

用があるならはっきり

言わぬか?

 

 

すうっと扉が開くと

目の奥が

じりじりと燃えている

チェヨンの姿がそこにあった

 

 

ヒィ

 

 

ウンスは思わず

声を漏らした

 

 

王妃様

我が妻を迎えに参りました

これにて失礼致します

 

 

え?ちょっと

まだ王妃様と

話の途中で・・・

 

 

これ以上はならぬ

帰るぞ

 

 

挨拶もそこそこに

チェヨンに腕を掴まれ

ウンスは引きずられるように

部屋を出て行った

チェヨンはなにも言わずに

ズンズン歩いて行く

 

 

ねえ あのぅ???

もしかして

機嫌 悪いの?

どおして?

 

 

・・・

どうして?

 

 

うん

目がこ〜んな風に

つり上がっているわ

眉間にシワも寄ってるし

それにもともと少ない

口数がさらに少ないもの

私 怒らせるようなこと

やらかしたのかしら?

 

 

・・・

 

 

チェヨンの無言の圧力ほど

怖いものはない

 

 

ええっと?

 

 

ウンスは一生懸命

考えた

 

 

自覚がないのか

イムジャ

 

 

チェヨンは呆れた顔で

ため息をつく

 

 

ヨンがそれほど

怒るようなことって??

ええっと〜

さっきはチョコの思い出話

学生時代の・・・

ええ?あ?!

 

 

チェヨンはフイと

横を向いた

いささか耳たぶが

赤くなっているのは

気のせいだろうか?

 

 

イムジャが俺以外の男に

気を許し

俺以外の男に好かれたとか

振られたとか

 

 

口元まで釣り上がる

チェヨンの形相

 

 

まさか嫉妬?

恋に恋するような

そんな若い頃の話よ

それで天下のチェヨンが

嫉妬するはずないよね?

 

 

はぁああ

 

 

チェヨンは

盛大にため息をついた

 

 

こちらへ

 

 

キャッ!

ちょっとぉ?

なに?なんなの?

 

 

チェヨンは廊下の奥の

ひと気のない部屋に

ウンスを押し込めた

 

 

悪かったな

俺はイムジャが思う以上に

心が狭いのだ

いくらイムジャの

昔話だとしても・・・

他の男の話を

イムジャの口から

楽しそうに聞くなど

到底我慢できぬ

 

 

にじり寄られて

部屋の奥へと

詰められて

ウンスは息をひそめた

 

 

落ち着こう・・・

ねえ まず はい

深呼吸・・・し・・・て

 

 

どんと壁に片手をついて

チェヨンはウンスを

逃げられぬように囲い込むと

おもむろに口づける

息継ぎの合間もないような

激しさにウンスは

眩暈を覚えた

胸板をどんどん叩いて

ようやく放してもらえて

ふうと息を整える

と チェヨンは

寂しそうな顔でウンスを

見つめていた

 

 

これが

落ち着いてなどいられるか

他の男に愛を語るだと?

俺の頭がおかしくなりそうだ

 

 

チェヨンの唇が

食むように

何度も何度も降り注ぐ

 

 

愛・・・なんて・・・

語ってない・・・

他の・・・人に・・・

語って・・・なっ

 

 

息も絶え絶えに

ウンスはようやく

チェヨンに反論した

 

 

なれど

先ほど言ったではないか

 

 

それは

さっきの話は・・・

子供のはしかみたいな

そんな感情よ

愛じゃなかったって

とっくに知っているわ

 

 

なれど・・・

 

 

私がどれだけヨンのこと

愛しているか

わかっている?

ヨンに会いたくて

ここまで来たのよ

 

 

いいや

イムジャの方こそ

俺がどれだけイムジャを

慕っておるかわかっておらぬ

気が変になりそうなくらい

イムジャが欲しくて

毎晩 いや

今この時も

俺はイムジャのことを

どれだけ欲しているか

胸の奥のドロドロした思いと

戦っておるのだ

これほど苦しい戦に

かつて出会ったことはない

俺の方がずっと

イムジャのことを・・・

 

 

愛してる?

私に?

愛しているって・・・

言ってくれるの?

うふふ

嬉しい

 

 

はぐらかすな

 

 

だって

嬉しいんだもの

 

 

ウンスはチェヨンの首に

腕を回し微笑んだ

 

 

これから先の私は

全部ヨンでいっぱいにする

私もヨンのことしか

考えない

すごくすごくすごく

ヨンを愛しているの

こんなに誰かを愛しい

と思ったのは初めてなの

 

 

ならば

はよう

屋敷に帰るぞ

俺はこれ以上

自分を抑える自信がない

 

 

チェヨンはウンスの手を取り

二人は屋敷に向かった

 

 

王宮の

しかも王妃様のお膝元で

あのようなじゃれあい

まったく不届きものめが!

 

 

王宮の隅々を

知り尽くしている

チェ尚宮は

二人の話を耳にして

やれやれと苦笑した

小言を言って叱りつけたい

ところではあるが

甥が過ごした

四年の月日を思うと

グッと腹に力を入れて

小言を飲み込んだ

 

 

今宵は手加減できそうに

ない・・・ぞ・・・

 

 

うん

覚悟している

 

 

二人は閨にこもると

甘い夜を

存分に過ごした

 

後日 王妃様から

貴重なカカオが屋敷に届き

ウンスが

ますます悲鳴をあげることに

なろうとは

その時のウンスには

知る由もなかったが・・・

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

チョコレートに

ホッとひと息

甘いものは心を満たす

 

 

バレンタインバレンタインバレンタインバレンタインバレンタインバレンタイン

 

 

バレンタインデーは

すっかり過ぎてしまいましたが

チョコレートの話を

お届けしました

恋慕の話にはタンたちが

出てこないので

不思議な気がしますが

たまには新婚の頃の話も

いいものかも〜?

 

 

心が疲れた時も

脳が疲れた時も

甘いものがよく効きますよね

今年はバレンタインの催事を

見に行かなかったけれど

ご褒美チョコや推しチョコ

高級なチュコレートが

たくさん並んでいたようで

行けばよかったなぁと

ちょっと後悔なharuでした

 

またおつきあいくださいませ

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