夕方
典医寺のチェ侍医は
康安殿にいた
 
王様が頭痛薬を
ご所望されたため
診察に向かったのだ
 
昼間
王妃様としばらくの間
高台から都を眺めていたと
報告を受けていた侍医は
寒風で
王様の体が冷え血の巡りが
悪くなったのだろうか
と考えていた
 
けれども脈診しても
問診しても
そのような所見はなかった

ただ王様は部屋に戻られてから

物思いに沈んだ顔をしていたと

内官アン・ドチが案じていた

 

高台で何か

気鬱になるようなことが

あったのだろうか?

王妃様と過ごす時間は

いつも穏やかな表情を

されているというのに・・・

 

そうして逡巡していると

内官のアン・ドチが

席を離れたその一瞬

王様がヒソヒソと

チェ侍医に尋ねた

 

 

侍医の息子は医仙のところで

修行を積んでおると聞いたが

 

 

はい そうでございます

医仙様には息子が

公私ともによくしていただき

感謝しております

 

 

なれば

あの家の娘たちとも

仲が良いのじゃな?

 

 

は?はあ まあ

それなりに・・・?

息子によく懐いてくれている

と感じております

それが・・・何か?

 

 

侍医から見て

どのような娘たちじゃ?

 

 

はぁ?

ええっと??

 

 

チェ侍医は王様の

言わんとしていることに

察しをつけて口ごもった

余計なことを申し上げ

医仙様の心を惑わすような

ことになっては大変だ

 

 

実は・・・

王妃はチェ家の娘と

ウ王子の婚姻を望んでおる

口に出さずとも

余には王妃の思いがわかる・・・

それにウ王子も

チェ家の娘を気に入っておる

だが ことは一筋縄では

いかぬのじゃ・・・

 

 

チェ侍医は何も言わなかった

正直にいうと

どう答えるのが正解なのか

考えあぐねていたのだ

王様は言葉を続けた

 

 

母上は・・・

 

 

大妃様でございますか?

 

 

チェ侍医は鍼を打ちながら

相槌を打つ

 

 

母上は・・・

公主とチェ家の嫡子との

婚姻を望んでおる

タンがこの王宮に

出入りしていた頃から

ずっと

そう願い続けておるのじゃ

公主が成長するにつれ

少しはそのような気持ちも

落ち着くかと

密かに思っていたのじゃが

どうやらその気配はない・・・

しかも母上は余が公主を

元や明の貴族に嫁がせる

のではないかと案じておられる

断じてそのようなことは

致さぬのに・・・のぅ・・・

余は不甲斐ない息子じゃ

 

 

そのようなことは・・・

 

 

いいや

考えれば考えるほど

身動きが取れなくなるのじゃ

王妃を尊重すれば母上が

母上の思惑を尊重すれば

王妃が心を痛める・・・

だが 公主と王子 

姉弟どちらもが

チェ家と姻戚になるわけには

いかぬ

そのようなことすれば

権力に偏りが出るゆえ

慣例でも今まで

認められたことはない

 

 

なるほど・・・

そういうことでございますか

それは 私の立場で

王様に何が申し上げることは

できません・・・が・・・

どちらにしても・・・

あの上護軍がその話を

承諾するでしょうか?

まずはチェ家の皆様の気持ちを

ちゃんと

確かめては如何でしょう?

 

 

侍医のいうとおりじゃ

だが

それが一番の難問なのじゃ

だから頭が痛いのであろうなぁ

余は王妃も母上も唯一の友も

失いたくはない・・・

無論 諍いは好まぬ

だが国の安寧と世継ぎの安泰を

考える立場におるのに

このままはぐらかしてばかり

というわけにもいかぬ・・・

 

 

王様が思慮深く

先の先まで考えを巡らせる

お方だと侍医もわかっていた

王様の思考の中には

母である医仙様に対する

配慮を感じられない・・・

そんな気がして

医仙様贔屓のチェ侍医は

なんとも複雑な思いに駆られた

 

 

ーーーーーーー

 

 

お帰りなさい!

今日は早いのね

 

 

夫の帰りを待ちわびる

新妻のように

ウンスはチェヨンに

まとわりついて微笑んだ

 

 

ああ キリがないゆえ

お役目を切り上げ

早々に帰ってきた

このところ家族と一緒に

飯も満足に食えぬとは

なんということだ!?

 

 

アッパ〜

ゴン

う〜〜〜んと

おしゃべりできるように

なったんだよ〜

アッパ ゴンとあんまり

あってないでしょう!

 

 

自分のことを

自慢するみたいに

次男坊のサンが胸を張った

 

 

そうだな

ゴンの声を忘れて

しまいそうだったぞ

いい子にしておるか?

 

 

あい〜〜〜っ

 

 

チェヨンは三男坊を

グンと抱き上げ

頬をすり寄せる

 

 

ああ いいなぁ

サンもそれがいい〜

 

 

すぐさまサンが父親に

抱っこのおねだり

まだまだ甘えたい盛りなのは

みんな一緒なのだろう

スニョンもユニョンも

いつのまにか父親の周りに

くっついている

父親のチェヨンは

一人一人を抱きあげて

ぎゅっと抱き寄せると

最後にタンを見つめた

タンは照れた顔で

首を振った

 

 

ぼくは・・・いい

ぼくはにぃにだから

そういうのは いいよ

 

 

まあ タンったら

すっかり成長しちゃって〜

でもそれも寂しいわね〜

いいんじゃないの?

たまには親に甘えても・・・

 

 

ウンスは重くなった息子を

よいしょと担ぎ上げると

夫に手渡した

 

 

ぼくはいいのに〜

ゴンのこともっと

だっこシテあげて〜

 

 

タン また重たくなったな

それにしっかりした体つき

ちゃんと鍛錬しておるな

 

 

うん

ちゃんときたえてるよ

アッパに負けないようにね

 

 

よしよし

いい心がけだぞ

 

 

チェヨンはタンを

軽々と抱き上げると

ギュウッと抱きしめた

 

 

へへへっ

アッパぁ

汗くさいよ〜

もう放して〜〜〜

 

 

いやだ 離さぬ

 

 

はなせ〜〜〜〜!!

アッパ〜〜〜〜

 

 

じゃれ合う父と子を

眺めながら

ウンスは息子の成長を

ほのぼのと思い微笑んだ

 

 

さあさあ

感動のご対面も

終わったことだし

そろそろ夕餉にしましょうか

今晩はポッサム(茹で豚)よ

ヘジャが実家からもらってきた

ソンオク仕込みの醬で

食べましょう〜

 

 

高麗の雪深い都にも

そろそろ春が近づいている

だろうか?

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

いつのまにか大きくなって

いつのまにか手が離れる

子を思う親心は

いつまでたっても変わらないのに

 

 

黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花

 

 

啓蟄が過ぎたのに

なんだか寒い日々ですが

週末は暖かくなるようですね〜

春本番ですね

またおつきあいくださいませ〜

 

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