典医寺での

用事を終えたウンスは

少しばかり憂鬱だった

 

いつもならばこの後

王妃様のところで

おしゃべりをして

その後大妃様にも御目通りする

診察というより

何気ない会話で

ひと時を過ごすのが

王宮に来る時の流れだった

ただ 今はお二人と

顔をあわせるのが気まずい

 

冗談で

タンを婿に欲しいとか

ユニョンが嫁に来たらいい

とか 二人から

言われたことはあっても

あくまでそれは冗談の範疇で

ウンスも聞き流すことが

できた

 

だが

一国の王様が明国の使節団に

公言したとなると

話の次元が違う

 

王妃様の居所を訪れるのが
こんなにも気が進まないのは
初めてのことだった・・・
 
 
でもお待ちよね
行かなくちゃね
 
 
そんな折
典医寺の中庭
梅の木の下に背の高い男を
ウンスは見つけた
見慣れたがっしりした肩の
持ち主は
誰よりも頼りになることを

ウンスは知っている

 

 

どおして?

ここにいるの?

ヨン?

 

 

あ?ああ

この辺りに用事が

あって・・・だな・・・

ついでに寄ってみただけだ

 

 

チェヨンが

典医寺界隈に用事がある

とは思えないが

それも夫流の気遣いだと

ウンスは嬉しく思った

 

 

今年は梅の木を見ることも

忘れておった・・・

 

 

その幹に手を触れながら

チェヨンの表情が

愛しそうに変わった

 

 

あの日 この木の下で

イムジャの口から

子ができたと聞いた・・・

 

 

ヨンが喜んでくれて

雄叫びをあげたの

すごく感動したことを

覚えてるわ

 

 

そうだったな

あれからもう九年か?

月日の経つのは早いものだ

 

 

ほんと・・・

 

 

あの時腹にいたタン

あの頃は影も形もなかった

ユニョンたち

その子らに将来の婚儀の話が

持ち上がるとは

なんとも不思議な気がするな

 

 

ええ

 

 

俺はあの頃と何も

変わっておらぬというのに

子供らはやがて成長し

いつかこの手を離れて

行くのか・・・

 

 

そおね

それが寂しくもあり

頼もしくもあるわ

ねえ 私はどお?

あの頃と変わった?

老けたわよね?

貫禄ついたわよね?

 

 

そうだなぁ

昔から肝の座った女だったが

ますますどんと構えておる

 

 

ええええ

やっぱり私 肥えた?

 

 

チェヨンはククっと笑って

ウンスの頬を撫でた

 

 

そうではない

イムジャは今も昔も

美しいまま

俺のただ一人の女だぞ

 

 

チェヨンはウンスの手を取り

指を絡めた

夫の体温が手のひらを通して

妻の体に広がって行く

 

 

ヨンがいると

すごく安心する

 

 

ウンスはわずかに頬を

赤らめて呟いた

 

 

二人は言葉すくなに

王妃様の居所へ向かった

途中 庭園では

残雪がわずかに残り

冬の終わりを告げている

 

ユニョンのことがあってから

ウンスにとって王宮は

居心地の悪い場所となった

すれ違う噂好きの女官の視線

好奇な目で見る役人たち

かつて

妖魔だと噂されていた頃の

人の視線と同じものを感じたが

隣を歩くチェヨンは

まったく動じず

むしろ堂々と

妻の手を引き歩いていた

 

 

俺たちは・・・

娘の幸せだけを

考えていれば良い

他人にとやかく言われても

それがどうした?

無責任な輩など放っておけ

 

 

うん

 

 

叔母上も大妃様の愚痴を

相当引き受けたようだぞ

 

 

そおなの?

 

 

ウ王子とユニョンが婚約したら

公主様とタンの将来は

閉ざされると大妃様は考えておる

公主様贔屓の大妃様にとって

この先の展開は気がかりな

ことだろうが

子供達の将来など

今から気を揉んでも仕方ないと

今朝方 叔母上がうまく

大妃様を諭してくれた

 

 

そっか

叔母様が・・・

ありがたいわね

 

 

そうだな・・・

それに俺も

かつてチュンソクの嫁御と

親同士が決めた許嫁だったが

そんなこと

すっかり なかったように

今は互いに良き伴侶に恵まれた

そうであろう?

世の中先のことなど

わからぬものだ

 

 

うん

そうだったわね

 

 

俺は子供達には

誰かが決めた未来より

自分で切り開く未来を

掴み取って欲しいと思う

そのために親として

力を尽くしたい

 

 

うん私も 

王妃様に話してみるわ

私たちは娘の心を一番大事に

しているって・・・

たとえ王命でも

理不尽だと思ったら

従えないって

 

 

ああ それで良い

 

 

立場的に

ヨンに迷惑かからない?

 

 

そんなこと 案ずるな

俺の一番はイムジャだぞ

イムジャの心が楽になるのが

俺には一番なのだから

 

 

ウンスはチェヨンの手を

ぎゅっと握り返し

大きく頷いた

 

 

 

 

一方 その頃

屋敷はちょっとした

騒ぎになっていた

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

あなたの代わりはいない

何があっても どんな時も

そばにいて欲しいのは

あなただけだから

 

 

桜桜桜桜桜桜桜桜桜

 

 

お話に

コメントしてくださった皆様

ありがとうございます

励みになっております音譜

ぼちぼちと

お返事させていただいて

おりますが

なかなか最新話まで追いついて

おりませぬ ミアネヨ

お気持ちに感謝です

 

週明けもどうぞ安寧に

お過ごしくださいませ

 

 

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