タピオカはなぜ再びブームになったのか?を検証する

 

このあいだ編集さんと打ち合わせしたところ、「タピオカブームがなぜ再燃しているんですかね」という話題になった。そのとき38度の熱があり(インフルではない)、ぼーっと聞いてしまったが、家に帰ってきてすぐに答えが出て見つかった。

理由は簡単だった。それは台湾ブームだからだ。

今年ももちろんその兆しは見えているが、昨年はたいへんな台湾ブームだったのだ。昨年の連休には台湾の繁華街に行った観光客の発する「日本人だらけ!」という悲痛な叫びがツイッターでいくつも流れてきた。ツイッターのタイムラインで目立つくらい、けっこうな人数が台湾にいたのは事実である。

 

さておき、タピオカとはなにか。

 繁華街で行列を見るとタピオカミルクティーの店に行列ができていることが最近増えている。タピオカとは、90年代にブームになったデザートのひとつだ。世代はバブル、毎年のように新しいデザートブームが生まれていた頃だ。(90年代にはスイーツとはまだ呼ばれていなかった)

1990年のティラミス、1991年のクレーム・ブリュレと立て続けに大ブームになった。次のデザートを世界から発掘していたときに、翌年1992年に上陸したのがタピオカだ。タピオカとは熱帯地方の植物の根茎から作るコロコロした形状が可愛らしいでんぷんの塊だ。タピオカはココナッツミルクに入った新感覚デザートとして市場に仕掛けられた。けれども時代の実感としてはクレームブリュレほどの大ブームにはならなかった。1993年にはナタ・デ・ココも上陸させたが、この頃にはみんなもう新しいデザートを仕掛けてくるサイクルに消費者は飽き飽きしていて、それほど流行りはしなかった。1994年にはパンナ・コッタが投入されたが、もうこの頃には話題にしようとしても反応が薄かった。パンナコッタの翌年に上陸したカヌレの頃には、もうデザートブームは終焉していた。今ではそれなりにカヌレが定着しているのは、その後のカフェでの販売によって長年かけて定着したものだ。

台湾の渡航者はこの10年で2倍に!

実際にツイッターで騒がれているほど台湾渡航者の数は増えているのだろうか。台湾への渡航者数は2016年からだと1,895,702人で前年より21.4%増、2014年からだと36%増。なんと4年で約4割ほども増えていることになる。(出典:日本政府観光局「2018年訪日外客数」)

比較対象として近隣の韓国と比べてみよう。2013年から2018年までの韓国渡航者は5.1%増にとどまっている。ここ10年を見てみると韓国はやや増ではあるものの、年によっては2割減する年もあり、増減しながら現在の韓国渡航者数に推移している

ところが台湾は違う。この10年で渡航者数が減った年はない。右肩上がりで増え10年で約2倍に台湾渡航者の数は増えている。

 

台湾から上陸するカフェ&ショップ。

 台湾ブームによって、昨年は都内各地で台湾フェスという台湾の観光、芸能、食を紹介するイベントが続いた。上野公園で開催された「台湾フェスティバル®TOKYO2018」を皮切りに、代々木公園の「台湾フェスタ」、「東京タワー台湾祭 2018」と台湾と名のついたフェスが増えた。

同時に台湾からさまざまなショップが日本に上陸しはじめた。台湾で行列のできる小籠包専門店「京鼎樓」や地元で人気の台湾料理店「騒豆花」がオープン。台湾から上陸して人気店となった本格派のティースタンド「THE ALLEY(ジ アレイ)」が店舗数を増やすなど台湾ファンにとっては話題に事欠かない。食以外でも台湾で大人気のファンタジー&アドベンチャー&アクションRPG『ポケットブレイブス』が日本に登場。今年秋には台湾発の本と雑貨でライフスタイルを提案する書店「誠品生活」が日本でもオープンする。

久々のブームの煽りを受け、まだまだ台湾からの日本上陸は続きそうだ。

 

8割近い日本人が台湾好き

ここまで台湾が人気の理由はいくつかある。

・週末の2泊3日で弾丸ツアーが可能。

・LCCの格安航空券が非常に安い。

・屋台やマーケットでアジアン文化が楽しめる。

といった手軽で安価なこと。そして何よりも安全なことが台湾人気の理由である。

「台湾ブーム指数」で日本の回答者のうち79.6%が台湾を好んでいることがわかった。台湾に対して日本人が強い好感をもっていることがわかる。台湾経済部の調べでは日本人に好まれる特色として、台湾料理(51%)、人のやさしさ(47 %)、特産品(32%)、茶葉製品(29.3%)などが挙げられている。

それに加えて、今まで日本ではアジアンとイメージしていた近隣諸国が発展し、日本人から見て「なんとなく懐かしい」と思える国が減った。かつてはインドネシアやタイ、インドなどで語られた異国情緒と郷愁は、激減してしまった。空港を降りれば、日本よりもずっと最先端なビル群がそびえ立ち、都市部では日本人のイメージするアジアン風情が減ってきている。ところが台湾にはまだそれが色濃く残っている。

 

表に出せない台湾ブームの本当のワケ。

それに加えて台湾ブームにはワケがあると思っている。台湾のいいところは、「親日」と呼ばれる親切さと日本語が通じやすいところだろう。英語が話せなくても大丈夫という安心感。かつてのハワイのような位置づけだ。

あの林真理子氏が「どうかずっと、この島(ハワイ)が日本人のものでありますように」と書いたように、

「今、世界中どこへ行っても、幅をきかせているのが中国人と中国語である。ヨーロッパのいろんな国でも、ニューヨークでも、自国語と共に中国語が書かれている。バブルの頃、高級ブランド店にいっぱいいた日本人店員は姿を消し、いつのまにか中国人ばかりになった」。

台湾ブームのワケは実はここにあるのではないかと密かに筆者は思っている。このあいだタイとカンボジアに行ったが、最近は近隣のどこの海外に行っても中国人観光客が押し寄せている。アンコールワットは満員電車のようだった。中国人観光者がインスタ用に行列を作って1,2時間待ちは当たり前。近隣観光地は軒並み中国人観光者の行列でごった返している。

ところが台湾という微妙な位置づけの国にわざわざ中国人は大挙して行かない。諸外国と同じように中国人観光者が大挙して押し寄せていたら、台湾だって林真理子氏の語るハワイと同じになってしまう可能性は高い。

 

アラフォーでも楽しめるディープ台湾

台湾ブームとともにバブル時代に流行ったタピオカが再び戻ってきたわけだ。メインの客層は新しいものとして台湾ブームを受け入れた10代~20代後半の若年層。東京でも大阪でも台湾カフェには土曜ともなれば深夜まで行列が続く。台湾ブームに煽られて台湾カフェは出店数を続々増やしている。その一方で、ブームの一端を支えるのはディープ台湾を狙うアラフォー以上だ。香辛料の効いた本場の味を求めて隠れ家的な台湾料理屋を巡る。

ともあれ右肩上がりの台湾渡航者が増えるにつれて台湾食がサブカルではなくメインカルチャーとして日本に浸透しはじめているのは確かだ。花椒にはじまる中華香辛料やパクチーが一般に広がったのも台湾食ブームの牽引要素のひとつである。

 

タピオカブームは、昔ココナツミルクに入っていたトロピカルデザートではなく、台湾ブームとともにおしゃれなファッションアイコンとして再ブームを果たしたのだ。今思えば、昔のブームがお仕着せがましいものだったのも幸いした。今回は自然発生的なブームなので代理店的な仕掛けが大嫌いな若者も自然にブームにのった。

このタピオカをはじめとする台湾ブームはまだまだ続くだろう。