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アキレスは亀に追いついたのか?

今日封切りの「アキレスと亀」(北野武監督作品)観てきました。

売れない画家の倉持真知須(ビートたけし)と,
それを支え続ける妻幸子(樋口可南子)の物語。

「芸術」の世界に生きる画家,その家族,画商
の姿をデフォルメして,たかが芸術と笑い飛ばし,
合間合間に,されど芸術というこだわりがチラチラ隠し絵のように仕込まれていて
楽しめました。

先日,「人を動かす事を芸術という」と書きましたが,
動かすためには,ある意味「命かける」くらいのかなりの本気がなければダメなので,
本気が行き過ぎて,命落としちゃったりする人が何人も映画の中に出てきます。
その死に様は,実にドライにあっけなく
「あっ」
って感じで生死の境を超えていくのですが,
じゃあ,死ねば人を動かせるかっていうと,それも違うんだよなっていうのが,
このドライさに表れているような気がします。

作品中にはかなりの数の絵が出てきます。
そのうち70点ほどはたけしさん自身で描かれたものなのだとか。
主人公が画商にけなされるシーンで,たまに
「ん,でも,なかなかイケてるんじゃないかなぁ」
と思うものもあったので,いくつかはかなり本気で描かれたんだと拝察します。

映画自身には,すごく泣けるとか,すごく惹かれるってことはなかったですが,
観終わって駅に向かいながら,なんとなく気持ちが軽くなった作品でしたカチンコ


眼・目・め

昨年暮れあたりから,視力が落ちてきたなぁと気になっており,
個展後,人間ドックに行った際に視力を測ったら,
コンタクトしたままで0.4と0.5。

検眼の際の体調や疲労度で,数値が違ってくるのはわかっているものの,
さすがに対策を講じないとと不安になりました(・・;)。

そんな中,知りあいの間で評判になっている
初回の検眼は予約が必要で,2時間もかけるという佐倉のメガネ屋さんがあり,
「いいよぉ。おススメ。そこのおじさんがまたオモシロいんだよね」
との話を聞き,夏休み初日は佐倉のメガネ屋「とよふく」さんへ。

最初にCの字があちこち向いている,普通の検眼の表を見て裸眼の状態をチェックし,
「はい,普通の検眼はここまでね」
次にレンズをのぞいて,
[]が二重になってる別の形を左右がずれてるかどうかなどの確認をしながらレンズを調整し,
遠近感を見たり,目の動きを見たりとメニューは盛りだくさん。

「宇都宮さん,力のあるオモシロい目してるんですよぉ。
たまに日航のパイロットなんかにいるんですけどね。
見えない部分をググゥッと自分で調整しちゃう力があるの。検眼してて楽しい♪」
「はぁ,そうなんですかぁ…(・・。)ゞ」
よくわかりませんが,
確かに,会場の後ろの方からパワーポイントの画面が見えにくい際,
集中してぐっと見据えていると,ちゃんと見えてくるってくることが時々あったので,
そのことをいわれたのかもしれません。

なんでも,近くを見るためのレンズと,遠くを見るためのレンズは違うので
その人がどんな仕事をしているのか,
どんな観方をしたいのかでレンズの選び方は変える必要があるのだそうです。
これまでコンタクトで見えていた感じに近いレンズと,
対象にすっとフォーカスを絞り込みやすいレンズを比較させてもらい,
後者のレンズを試してみたくて,眼鏡を作ることに決めました。


現在,
裸眼・コンタクト・眼鏡
の3種類の観方ができるようになったと言えます。
この3種類で見分けて思うのは,
絵を観る人も,
視力検査的な意味での視力に加え,
さらにフォーカスしやすい眼かどうかで
見え方ずいぶん違ったものに映っているのだろうなということ。
さらには,そこに心象や体調,経験,絵以外の情報などが加われば,
同じ絵を観ても,誰一人として同じ観方はしないだろうということ。
もし,同じものを見て観方に近いものがあれば,
きっとその人たちは,考え方や境遇や生い立ちや性格や,
いろんな部分に共通の要素を持っているのではないかということ。

とよふくさん曰く,
「眼は大脳の一部です」
なるほどなと思うこの頃メガネ



魂見たり!

美術コレクターの集まり「わの会」のコレクション展に行ってきました。
一応受付のお手伝いという名目でしたが,
今日の収穫は,ひょっとしたら測れないくらい大きなものだったかもしれません。

会場であるギャラリーKANIさんは,西武新宿線の野方駅から徒歩7分。
閑静な住宅街の中にある画廊です。
そんなに大きなスペースではないので,
66点の出展は,上下展示などでかなりムリムリな配置になっていますが,
その作品は,名の通った大きな美術館レベルの質の高いものばかり。

それもそのはず,コレクションに命かけてるような方たちが,
数ある自分のお宝から厳選した2点ずつで展覧会が構成されているのです。
かけてあるのは,もちろん「絵」ですが,
展示されているのは,「コレクターの審美眼と,目利き度」だと拝察しました。

三時からのオープニングパーティのメインイベントは,
各出展者の作品紹介。
これが実に熱い! 時間おかまいなしに語る語る…。
作品の質は非常に高いものばかりなので,絵のパワーはかなりのものなのですが,
今日ばかりは,コレクターの熱気の方に軍配が上がっていました。
主役は作家ではなく,完全にコレクター。
こんなオモシロい場面に立ち会えるとは思っていませんでした。
コレクターというのは,アーティストの1ジャンルなのだと認識した一日。

こんな熱いコレクター達の収集対象にされたら,
作家冥利につきるでしょう。

魂見たり!美術コレクター!メラメラ

●第四回「わの会」コレクション展 -二点展-
 9月7日~9月26日 11:00~17:00 入場無料
 ギャラリーKANI
 〒165-0027東京都中野区野方4-32-5 tel 03-5380-6677


Inspirer

他者を揺り動かす(inspire)ことが芸術であり,
他者を揺り動かす力のある人をアーティストとよぶのだと思います。

私が,自分も含めた全ての人のアーティスト度を測る尺度の一つに
 正直者
 チンケな嘘つき
 大嘘つき
という三段階があり,
このうち,アーティストという称号が与えられるのは正直者と大嘘つきだけ。

昨日は,柏わたくし美術館の堀館長とご一緒させていただきました。
失礼を承知で上記の分類を適用させていただくと,
堀さんは,まさに「正直者のアーティスト」。
その純粋なお人柄とバイタリティで他者を揺り動かされます。
私財を投じてご自宅を美術館にしてから8年目の今は,
無名の画家を発掘し育てていくことに力を注がれているとのこと。

個展終了直後に,いったん見えたつもりだった次の目標が,
踏み出そうと思ったとたん,思い通りの方向に道がなかったことに気づき,
どうしようかとウロウロしていた私は,
堀さんの正直者の眼で見透かされていたような気がします。
どこかで
  「逃げるな,基本に返れ!」
と声が聞こえるような,気もします(>_<)。

私は正直者ではないので,
大嘘つきを目指さないとアーティストにはなれないのですが,
大嘘つきの条件は,自分を徹底的に知った上で上手にだますことができること。
自分で自分を意識的に揺り動かすことができることです。
道は遠いが,ここまできたらせめて「ただの嘘つき」くらいは目指しましょう!
(いいのか宣言して(^_^;))

ちなみに私が思う大大大嘘つきのアーティストは
北斎,ロダン,クリムト,ピカソ…
現代アートだと村上隆あたりでしょうか。
この辺の大御所は,正直者を超えるところまで到達した方々だと思います。

上を見れば切りがないけど,
まずは,ただの嘘つきから走る人





New teacher, New material

久々です。そんでもって英語ネタ。

TUJで意気込んで,発音とリスニングの中級クラスをとったはいいけど,
先生のMartellousの英語が聴き取れず,案の定落ちこぼれました(´_`。)。

今回学んだのは,
   進歩はなかなかわからないが
   後退したのは,すぐわかる
ということ。

自分の感じてることや考えを英語にすることからしばらく離れていたら,
「これまでのbest memoryとworst memoryを順番に話す」というお題の最後のクラスの日
言葉が出ない…。
流暢に話せていたのが,ちょっともたつく…なんてもんじゃなくて,
もたつきながら話してたのが,何も話せなくなった状態(>_<)。

以前だったら,ここでやめちまうのが私ですが,
やめるのが惜しいのは,結構な時間とお金をかけてきたから。
もう少し話せる聞けるという感覚を得ずしては終われないと,
今回はスクールに行かずにネットで先生を探してみました。

今日はトライアルレッスンの日。
メールで待ち合わせの場所と時間を決めたので,
実際に会えるかどうか不安でしたが,
無事に会えて駅前のコーヒーショップへ。

英語で話そうとすること自体が,とても久しぶりだったので
モタモタはしてましたが,マンツーマンの良さは相手が自分に合わせてくれること。
久しぶりに,満足のいくレッスンでした(=⌒▽⌒=)。
新しい先生は,アメリカで英語の先生をしていたcuteなAsean AmericanのAngelaで決まり。

今度はアメリカのテレビドラマDVDを教材として使います。
まずは私が聴きとって書いたものを,映像を観ながら添削してもらうという試み。
うん,おもしろくなりそうですにひひ




金沢21世紀美術館

タレルの部屋にあったのは,
天井に四角く切り取られた青い空と
それを縁取る白い壁。


腰壁のように四方に張り巡らされた石を背にして腰掛けて,
じんわりと伝わってくる熱,
微かに聞こえてくる音,
部屋の中でゆったりと漂う空気と時間を感じながら,
思考を止め,感覚だけになって,
そのままずっとその場に留まっていたい誘惑にかられました。

先週金沢に出張し,仕事が終わって空港に向かうまでの時間で
予てより訪れてみたかった「金沢21世紀美術館」に行ってきました。
美術館を設計したのは,ガラスを用いた作品で知られる妹島和世さん+西沢立衛さん。
光と開放的な空間を感じる建物で,
館内には,広い壁や部屋がそのまま作品になっているような
常時展示型の作品がいくつかありました。
私が特に気に入ったのは,冒頭に書いた「タレルの部屋」。

企画展で感動したのは「 ロン・ミュエック展」。
金沢出張が明らかになった5月くらいから
帰りに絶対観てこようとずっと楽しみにしてきた展覧会です。

ロン・ミュエックの作品と向き合うと,
自覚している自らの大きさの感覚がぐらつき,
他の観客と作品が同時に視界に入ると,その大きさのアンバランスに,さらに揺れます。
わずか数センチにまで近づいても,体温や息使いが聞こえてくるのではないかと思われるような
徹底したリアルな表現であるがゆえに,
「大きさ」の感覚のみに観る者を集中させてくれる作品でした。

映像でも,印刷物でも決して味わうことのできない
その時,その場で自分が作品と向き合うことでしか生まれない体験。
久しぶりに満喫したファインアートでありました虹


アートの元

丸木美術館に行ってきました。
埼玉県の東松山にあるこの美術館は,
画家である丸木ご夫妻が私財をはたいて,40年近く前に建てられたものだそうです。

丸木位里さん,俊さんといえば原爆の絵で有名ですが,
イデオロギー的なメッセージが前面に出過ぎているアートが好きでない私は,
その種の絵を進んで観に行く事はありません。
今回は,この美術館の企画展に行こうという同僚の誘いにのり,現物を拝見するのは初めて。

階段を昇って,正面の展示室は,絵本の原画が中心の小さな部屋。
私が思っていたような「反戦!平和!」を声高に叫ぶような作品ではなく,
色も構図も非常に美しく,完成されていて,幻想的なイメージがよい感じ…(*⌒∇⌒*)。
好きな絵本作家イワン・ガンチェフにも通じるものがあり,
偏見は見事に砕かれました。

隣の大きな部屋に移ると,お二人の代表作である巨大な原爆の絵が並びます。

離れて全体を観て,近づいて詳細な部分を観る。
これを何度も繰り返しながら
ただ,黙ってそれぞれの絵と対峙する…。

こうしているうちに,
ほんとうの表現って何か,それはどうやって表されるのか

という個展後に抱えていた漠然とした問いに,少しだけ答えを得たような気がしました。

私がメッセージ性の強すぎる絵が好きでないのは,
薄っぺらい「作り物」感があって,無理に人を動かそうとする意図ばかりが目につくからですが,
しっかりと,表現者の底に刻まれ,
どうしようもなく,
表現せざるを得ないものとして現れてきた作品は,
深く人を動かし,静かにそれを伝えることができる。
これがその答え。

また,丸木位里さん,俊さんの作品が高い芸術性を放つのは,
制作が,お二人のコラボレーションによるものだったことも大きな要因かもしれません。
出口近くにおいてあった本をめくると
「仇みたいな関係ですよ」という位里さんの言葉。
お二人とも,それぞれに十分お一人で画家として立つだけのものを持ちながら,
日本画の位里さんと,油絵の俊さんが共に描く。
「どんな風にお二人で描いてらしたんですか?」
と美術館の方に聞いてみましたが,
「実は,制作の場面をはっきりと記録したものもなければ,その様子を見た人もいないんですよ」
とのこと。
勝手に想像して浮かぶのは,切磋琢磨の真剣勝負の図(-_☆)。

帰りに,お二人の人物デッサン集を購入しました。
確かなデッサン力に裏打ちされ,原爆の絵とは違う伸びやかな線の
いい感じに力の抜けた表情豊かな裸婦十数点。
同じモデルさんを描いたとわかるものがあり,ページを折って二つを比べてみると
それぞれに違う個性を感じるのですが,響き合っています。
強烈な個性でぶつかりながらも,実は仲のよいご夫婦だったのでは…?と
こちらも勝手に,随の図。
(奥様>ダンナ様の力関係だったようなので(^_^;))本





ハレの気,ケの気

やっと「ふつう=ケ」に戻ってきた感じがします。

個展は,ふつうではないハレのイベント。
その時,その場に向けて力を投入し,一気に放つ…。
気が張って,高ぶっていますが,
おそらく,こうでなければ乗り切れないんじゃないかと思います。

高くなったら低くなるのが自然の摂理。
ふつうでない負荷がかかってたわけですから,
終わった時点であっちこっちのバランスが崩れてます。
身体は,マッサージや,運動で何とかメンテして,
気持ちは,いろんな場面でいろんな事で引っかかって,ちょっとずつ凹んだりしながら
だいぶ周りの空気となじんできましたσ(^_^;)。
個展終わった直後に書いたお礼状は,
個展時の高ぶったノリで書いてしまったので,
今読み返すと,なんとも…,こっ恥ずかしい気持ちになってます(→o←)ゞ。

先日,ファインアートには「ハレ」と「ケ」があるんじゃないかって書きましたが,
その分類でいくと,私の絵は「ケ」の類。
まとめて観るから個展の「ハレ」の場をつくれますが,
本来の一つ一つは,小さめのオフィスや住宅で観ていただくくらいの「ケ」のパワー。
だから,油絵なんかが並ぶグループ展だとパワーに負けてしまうし,
大きすぎる空間には不向きです。

その絵も,搬出後少しだけ休ませた後,
それぞれが個展で出会った方の元に散っていきました。
新しい場で,少しでも楽しんでもらえる事を祈ってます星空



ハレのアートと,ケのアート

出張で兵庫に行き,初めて加古川線に乗りました。

発車に遅れまいとバタバタ乗り込み,何とか間に合ってほっと一息。
乗る前に「やたら派手な車両だなぁ」と気になったので,
席に落ち着いて,向かいのホームの電車をまじまじ眺めると,
観た事のある絵柄…。
横尾忠則画伯の作品「滝の絵」と「三叉路の絵」ではないですか\(゜□゜)/!

乗る時に,こちらの車両にも,何やらペイントが施されているのだけは確認できたので,
降りたら携帯で写真を撮ろうと決めました。

さて,駅で降りて絵柄を確認。
こちらは「火事の絵」のようです。
好みとしては「三叉路の絵」の方が好きだなぁ,撮ろうかなぁどうしようかなぁ…,
狭いホームで迷ってモタモタし,邪魔になっている私o(・_・= ・_・)o。
結局そのまま改札を出ました。

タクシーに乗って,
「いやぁ,加古川線初めて乗ったんですが,
横尾忠則さんの作品が車両にペイントされてるんですね。
このあたりは,横尾さんとご縁がある場所なんですか?」
と,運転手さんにたずねると
「私らはあんまりわかんないですけど,最初の頃は電車全体に『目』がいっぱい描かれてましたよ」
と,あんまり嬉しそうでない感じ(´_`。)。
確かに,電車全体に目がいっぱいって様は,想像するだにおっかない気はします。

私的な分類ですが,ファインアートにもハレとケがあるように思います。
ハレは,美術館の大きな壁面や空間にどーんと展示して,
   「はぁー,すごい…」と,作品の存在感や主張を体全体で感じ取る非日常のアート。
ケは,お店や一般家庭の壁や空間にかけて,
   「ほぉ,いいね」と,生活の空間や流れを和ませる日常のアート。
横尾さんの作品は,どこからどう観てもあきらかに「ハレ」なので,
たまたまその場を訪れた観光客などは「おもしろい!」と思えるけど,
その電車を日常の中で使ったり,見たりする人には,ちょっと刺激が強いかも。

まぁ,ペイントの目的は観光客向けの演出だろうから,その効果は十二分に発揮できてると言えますが,
観光客とジモティーの皆さん両方満足してもらえるのは,
ハレのファインアートとは違った,アンパンマン列車みたいなタイプのビジュアルなのかなぁと思ったのでした地下鉄


記念切手

個展のホントのホントの終わりは,
来てくださった方にお礼状を出したり,絵を送り出したり
そんなこんなことが全部終わったところだと思ってます。

で,今はそれを行っている最中。
体調が本調子じゃないので,身体のメンテも行いつつ,
まだ個展の残骸が散らかっている部屋で,
ゆっくりだらだら手際悪く,事が進んでいきます( ´ー`)。

宛名を作成していて,郵便番号がわからない方がいらっしゃったので,
番号の検索をかけてたら,日本郵便のサイトに,
「フレーム切手(オリジナル切手作成サービス)」を発見。
オリジナル部分は正方形にトリミングされるようです。

これは利用しない手はない。
何故なら私,かなりの正方形好きで,水彩の大半は正方形の作品。
前半の一番人気「Mendelの葡萄」で80円切手と,
後半人気のあった「Newtonの林檎」で50円切手を
作ってしまいましたぁヾ(@°▽°@)ノ!
こんな記念切手が作れるなんて,えらいぞ日本郵便!
どのくらい時間がかかるのかについては,書いてなかったようですが待ち遠しいです。

と,こんなことしてるから仕事がはかどらないんですね。
明日は絵の梱包だプレゼント