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わたしは人よりものごとを知らなくて
高校のときなんか今よりもっと知らなくて
だからよくいろんな間違いをしていた。

例えば千葉で暮らしていた高校時代
わたしは
電車の終点=田舎もしくは最果ての土地
そう思っていた。
だから毎日乗っている総武線の終点駅
中野と三鷹もそうであると信じて疑わなかった。

高三の秋の放課後
ふとどこかに行きたくなった。
ちゃんと今日中に帰れて、でも田舎。
それはもう三鷹しかないだろうと思って
みんなと別れてひとり
千葉行きではなく三鷹行きに乗った。

でも新宿に着いた時点で
一気に不安になった。
中野は近い。
でもここは都会だ。
中野ってほんとに田舎なのだろうか…。

新宿を出て中野にはすぐ着いた。
ふつうに都会で街だった。
駅にはホームがいくつもあった。
もう夜だった。

がっかりして
無駄足だったと気づいて
東京行きの中央線に乗り換えた。
三鷹まで行く気なんて消えた。

このまま帰るのも虚しいから
新宿で降りることにした。
特に目的もなく駅ビルに入った。
本屋があった。
それは青山ブックセンターだった。

感動的だった。
青山ブックセンター。
今はもうないけど。
青山ブックセンター。

わたしの本好きというより
本屋好きの原点だと思う。
そこらの本屋では見かけない沢山の本が
平積みされた本の装丁が
全部かっこよく見えた。
今でこそ人気のトイカメラを
初めて知ったのも買ったのもそこだった。

そのとき二冊の本を買った。
その二冊は今でもすごく好きで
いろんな意味で大事で
ときどき本棚から出して
めくって触ってみる。
それは見ても読んでも楽しいし
本当にいい本は触ってるだけでも感じがいい。

こんなことを思い出して書いているのは
そういえばあれって
大事なことだったよな、と思って。
思いこみだけで動いていたあの時とか。
衝動に突き動かされたあの日とか。
絶対大事なことだった。

最近はわかりやすい価値観に乗っかって流されて
そんなんは仕方ないと思ったりするんだけど
でも気づいたら焦りと不安ばかりで
それらがピュアやロマンチックを
奪っていくとしたらとても悲しいことだ。

今はまだ次を知らないけど
立ち止まって
振り返って
確認する過程で
いつかきっと気づくだろうって
そんな風に思っている。