受精率 | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

顕微授精と体外受精の受精率についてご質問がありましたのでお答えします。


施設によって差はあるかと思いますが、一般的には顕微授精は8割程度、体外受精は7割程度の受精率かと思います。

そのため顕微授精の方が1割程度受精しやすいと考えてよいかと思います。


ただ顕微授精には顕微授精特有のデメリットがあります。例えば卵子の細胞膜が弱い場合には刺すことで卵子が変性する可能性もあります。変性卵とは死滅を意味するためその後受精することができません。


またテクニカルな問題もあり、刺したつもりが精子が卵子内に入っていないという事も起こり得ます。

また専門的な話となりますが、顕微授精の前に精子を不動化処理といって精子に意図的にダメージを与えます。これにより受精が促進されやすくなりますが、この不動化処理が不十分な場合にも受精率が低下する原因となります。


このように顕微授精特有の問題点があり、必ずしも顕微授精の方が高い受精率になるとは言い切れません。

もちろん体外受精にも体外受精のデメリットがあります。

例えば多精子受精がそのよい例です。多精子受精とは卵子内に精子が2匹以上入る事ですが、この段階で子供になることはできません。

また卵子の殻が固くて入りにくいようなケースもあります。


いずれにしてもこれらの問題点を踏まえて、その方に最適の受精方法を選ぶことが良いのかと思います。