帝王切開瘢痕症候群(Cesarean Scar Syndrome : CSS)
現在帝王切開率は日本で上昇傾向にあり約 20%は帝王切開で分娩となっています。
(アメリカでは33%、ブラジルでは80%が帝王切開)
帝王切開後に子宮内の傷口が凹み瘢痕化(ニッチ)してこれが不正出血、内腔への血液貯留、精子侵入障害、胚の着床障害を引き起こし、続発性の不妊症へとつながるとの指摘があります。
またこれら陥凹部への液体貯留が原因で生理痛がひどくなったり腹痛が生じる事も分かってきました。
帝王切開術後の子宮内創部を経腟超音波検査にて観察することで容易に診断する事ができます。
日本産婦人科学会でも生殖・内分泌委員会で「帝王切開瘢痕症候群による続発性不妊症に対する治療法の検討小委員会」を立ち上げこの問題を検討しています。
この委員会が調査した結果は以下のようになっています。
治療法としては①不妊治療による治療する方法(n=107)、②保存的療法(サージセルを陥凹部にそうに有する方法)(n=16)、③手術で治す方法(開腹、内視鏡でオペ)(n=46)がとられています。
妊娠が判明している169名の3群におけるそれぞれの妊娠率は①33%、②50%、③60%となり、不妊治療群と手術療法群で有意な差を認めました。(p=0.0032)
手術療法別の妊娠率は開腹手術が9/16(57%)、腹腔鏡手術が10/20(50%)、子宮鏡手術が6/6(100%)となり有意な差は認められませんでした。
瘢痕部に貯留する液体が胚の着床を阻害し、腹痛を伴う場合には、体外受精では妊娠は難しく、手術療法を強く勧めると結論付けています。
J. Obstet. Gynaecol. Res. Vol. 41, No. 9: 1305–1312, September 2015