挫折を経験していないトップランナー【村尾隆介さんインタビュー後記】

「今まででいちばん辛かったのははどんなことですか」

僕が「人生を変える一冊」のインタビューで最近、
ゲストに必ず聞いている質問がこれだ。

１月後半のゲストでご登場いただいた村尾隆介さんにも、
当然のように僕はこの問いを投げかけた。

村尾さんは、小さな会社のブランド戦略を数多く手がける
文字通りブランディングの専門家。

村尾隆介さんのサイト　RYUmurao.com
→　http://www.ryumurao.com/

聞聴道（もんちょうどう）～著者インタビューとポッドキャスト配信の職人キクタス早川洋平のブログ～

（写真右が村尾隆介さん）

「カッコイイ大人を一人でも多く日本に生み出したい」という言葉の通り、
彼自身がとにかく「カッコイイ」。

これまで女性を「カワイイ」と思うことはしょっちゅうあっても、
同性に「カッコイイ！」と興奮したことは皆無だった僕だが（自分のことは棚に上げて……）、

村尾さんの

ファッション、
話し方、
立ち居振る舞い、
ぶれない考え方に、

インタビューが始まって15分で「惚れて」しまった。

ひさびさにインタビュー中に興奮してしまった僕だったが、
ふと我に返った。

「村尾さんだって絶対に『カッコ悪かった』ことはあるはずだ」

勇気を出して村尾さんに問う。
　
「今まででいちばん辛かったことは何ですか」

　彼は少し考えてから、答えた。

「うーん、それが意外とないんですよね……、
あえて挙げるとすれば14歳で渡米したことかな。

僕自身は挫折とか辛かったとかあまり思っていないんだけど、
周りからは良く言われるので」

僕は自分の「質問力」の未熟さが悔しかった。

各界のトップランナーと呼ばれる人にインタビューして久しいが、
彼らは必ずといっていいほど大きな挫折や失敗を体験している。

本には書かれていないこともたくさんある。
むしろ書かれていないことの方が多い。

事実、僕がいままでインタビューした人のなかには、
外から見ると、失敗とは無縁の「成功者」そのものという方も少なからずいたが、
例外なくみな、大きな挫折や失敗を経験している。

だからこそ、村尾さんにだって「挫折」はあるはず。

それに、番組にはミッションがある。

それは、

「聞かれた人（ゲスト）も、それを聴いた人（リスナー）もハッピーになるインタビュー」だ。

リスナーのみなさんが知りたいのは、
ゲストのいちばん人間くさい部分。

心を打たれるのは、
「彼だってこんな苦労を乗り越えたんだ。だから自分も頑張ろう！」というエピソード。

そのエピソードを引き出すための、キラークエスチョンが、

「今まででいちばん辛かったことは何ですか」

というシンプルな問いだ。

もちろんご本人が話したくないものを
無理矢理聞き出して、
何万人もの人に公開するというスタンスは、
僕の意図するところではない。

けれど、これまでの経験から言うと、
「リスナーを勇気づけられるなら」と、挫折のエピソードをお話しくださった
ゲストはみな、「カットしてください」と後から言ったことはいちどもありませんでした。

みなさんが口をそろえておっしゃってくださるのは、

「自分をふりかえるいい機会になった」
「自分でも気づいていない一面を知ることができた」

という言葉。

これこそが僕の番組のミッション、聞かれた人（ゲスト）も、それを聴いた人（リスナー）もハッピーになるインタビュー」。

弱気になりかけた僕は、改めて番組のミッションを伝え、
「リスナーを勇気づけるために」というお願いをし、村尾さんに同じ質問をぶつけた。

一瞬の静寂。
　
村尾さんは静かに口を開いた。

「番組が暗くなるといけないから、どうしようかなと思ったんだけど……」

詳細は今回のインタビュー音声に譲るが、
村尾さんのエピソードはこうだ。

プロフィールにもあるとおり、
彼は本田技研を退社後、
サプリメントの輸入販売ビジネスで成功、
事業売却を経て、その成功ノウハウを「小さな会社のブランド戦略」に昇華させて伝えている。

外から見るとサクセスストーリーそのものだが、

「ホンダの名刺（看板）がなくても俺はこんなにビジネスができる、
と思っていました。知らず知らずのうちに天狗になっていたのかもしれません」と村尾さん。

ある程度の年齢になり、一国一城の主になると怒ってくれる人もいない。
このままじゃいけない─。

村尾さんが事業売却した裏側には、
こんな思いもあったそうだ。

そして彼はその過程で、「家族」という大切なものも失っている。

プロフィールにはない、
カッコ悪い部分をさらけだしてくださった村尾さん、
やっぱりカッコ良すぎます。