思惑外れ…パナソニックがリストラ加速


 かつて大手電機メーカーの1角を占め世界的に知名度が高かった三洋電機が、設立から60年余りで「消滅」しようとしている。親会社のパナソニックがリストラを加速しているためだ。

 北米の薄型テレビなどのほかに直轄する主要事業がなくなり、人員は激減した。国内ではすでに「SANYO」ブランドを冠する商品はない。

 2年連続の巨額赤字に沈んだパナソニックは業績改善のため事業売却や給与体系を1本化し三洋社員の配置転換を進めることも検討している。

 パナソニックは2009年に三洋を子会社化した。電池事業など成長の柱を取り込む狙いだったが、中国などとの価格競争に敗れ赤字事業が続出。「すぐには思惑通りの相乗効果を得られなかった」(関係者)。


 08年4月に携帯電話事業を京セラに売却、海外を含め2000人削減したが、パナソニックの子会社となってから事業売却が加速。11年1月に半導体事業を米半導体メーカーのオン・セミコンダクターに売り、6500人減らした。

 12年1月には、中国の白物家電大手海爾(ハイアール)集団に国内外の洗濯機や冷蔵庫の事業を売却、3100人が三洋を去った。

 13年8月には中国で洗濯機などを生産する合弁会社の全保有株を、米家電大手ワールプールに売却する契約を結び、中国での白物事業からの撤退を決めた。

 残る三洋直轄の事業も売却などが検討されている。米小売り最大手ウォルマート・ストアーズ向けの薄型テレビ事業は、売上高が数百億円に上るとみられるが、津賀一宏社長は「脱テレビ依存」を掲げており、切り離される可能性がある。三洋の子会社で、電子機器や電子基板を製造する三洋テクノソリューションズ鳥取(鳥取市)も売却の方向だ。


 コメ粒からパンをつくるホームベーカリー「ゴパン」、携帯型カーナビ「ゴリラ」、充電池「エネループ」といった三洋のヒット商品は、すべてパナソニックブランドに切り替わった。

 パナソニックの子会社になる前、三洋の国内社員は約2万6000人いたが、13年4月現在の直轄部門は約2000人を残すのみとなった。

 パナソニックは自動車や住宅関連などの戦略事業に力を入れる方針で、三洋社員をさらに本体に取り込む見込み。「三洋の登記上の法人格がなくなるのも時間の問題だ」(関係者)との声も出ている。(SankeiBiz)