ついやってしまう理由 ~矛盾の心理学~LAURIER五百田達成

 誰でも、ダメだと分かっていながらついやってしまうことってあります。

 身体によくないと思いながら、お酒を飲み過ぎたり、タバコを吸ったり、夜中に炭水化物を摂ったり……。

 さてこんな状況が起こっているとき、人間の心理はどのように動いているのでしょうか。

それを説明するのが、心理学者のフェスティンガーさんが唱えた

「認知的不協和」という理論です。

これは、

「考えていること」と「行動」

に矛盾が発生している状態をのことを指します。


 上の例でいうと、身体に悪いとわかっている(考え)

のに、

 お酒を飲み過ぎてしまう(行動)


という「矛盾」が起こっています。人は、このように考えと行動に矛盾が生ずると、

気持ちが悪くなってしまいます。どうも落ち着かないんですね。


 そうするとどうするでしょう? この矛盾を無くそうとします。

矛盾を解消するための方法としては、大きく分けて次の2つがあります。

1 考えに合わせて行動を変える。
2 行動に合わせて考えを変える。

もちろん理想は1のほうでしょう。

「身体に悪い」→「飲み過ぎなく」なれば、すっきりするわけです。


 ところが多くの場合、人は2の方法で認知的不協和を解消します。つまり

「お酒は少しくらいなら飲んでも身体に悪影響はない」と思い込み、

「逆に、飲んだほうが健康にもいい」とまで思い込む


ことで、すでに行ってしまった行動を‘正当化’するというわけですね。

 これは悪い効果ばかりでもありません。

「やってしまったことはしかたない」という言葉があるように、


すでにしてしまった行動は変えられないので、無理にでも「OK」「しかたない」とあきらめをつけるのは健康的なことです。

 ともかく、人は自分を正当化するかたちで、行動してしまうことは、心理学的に説明がつく

というワケ。そのことを知っているだけでも、自分の行動を振り返る時の

キッカケになるのではないでしょうか。

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